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重度

その珈琲店は狭い間口の小路を10メートルほど入ったところにありました。田舎町だとはいえそれなりの地方都市の繁華街の一角に、こんな空間が残っていることに驚かされます。昭和43年に建てられたという和風民家は、意外にも窓ガラスが頑丈な鉄の枠に包まれ太い柱に支えられた鉄筋の二階建てでした。梨木香歩の「家守綺譚」を読んだときに感じた空気がこの空間には溢れている感じがしました。

夏に作品展を案内してくれた知人から、別の小さな作品展の企画をご案内いただいていたので行ってきました。知的障害や自閉症の方々が表現した作品がこのふしぎな珈琲店に展示されているのです。

玄関で靴を脱いで座敷にあがると不思議なアシンメトリーの渦巻きの絵にまず目が止まりました。寄っていくとそれは圧倒的な数の小さな花の絵の集まりだということがわかります。その圧倒的な数の小さな花は、各々に色が違い、太さが違い、時々花以外の何か(たとえば自分の名前もだまし絵のように入り込んで居たり)だったりします。
「彼女が一番初めに書き始めたのはこれだったみたいです」
珈琲店のマスターが手渡してくれたのは『あかずきんちゃん』の塗り絵ノートでした。本来の塗り絵をすべき人物輪郭の外、下半分にその花の絵は敷き詰められていました。
「きっと土の部分という意味で書きはじめた花だと思います」
ところが、それが徐々に紙全体に広がっています。空いた空間を完全に埋め尽くしたくなる衝動に駆られたのだろうことが想像できます。この圧倒的な数の花柄の絵を描いたのは、40歳をちょっと過ぎた女性の方です。

「彼女は、『重度知的障がい者』の判定をもらっているんですが・・・『重度』って何なんでしょうね?」・・・この緻密な癒しの絵を眺めながら、マスターが呟いたことばにわたしも相槌を打ちました。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

ご紹介ありがとうございます。
僕も彼女の作品に初めて触れたのは作品搬入の時。目にした時、思わずのけぞりました。驚いて、じっくり鑑賞して、想いを馳せました。
ご本人とオープニングパーティーで会った時、少しだけ仲良くなりました。彼女がこれからも、彼女の思いのままに、彼女が描きたいと思った時に、自由に絵が描けますようにと願いながら別れました。

彼女にとってはじめての展示会です。
どうぞみなさま宜しくお願い致します。

投稿: キノシタ | 2010年10月23日 (土) 11時36分

キノシタさん

いろいろな準備ご苦労様でした。
多くの方がこの三人の作品に触れることが出来るといいですね。

新しい世界へのご縁をお膳立ていただいて、感謝でいっぱいです。

投稿: ジャイ | 2010年10月24日 (日) 07時35分

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