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「中腰力」

”「治らない」時代の医療者心得帳(春日武彦著 医学書院)”には「中腰で待つ援助論」の題名で内田樹先生(神戸女学院大学教授)と春日武彦先生の対談が載っています。

”中途半端さに耐える能力”が大切だと強調されていました。”医療界では「何もしない」「保留する」は敗北に値するとされてきた”と書かれていますが、外来では「様子をみましょう!」という云い方をよくします。「これは医者の逃げ口上で実際には何をするかよく分からないので、必ず具体的な対処法を直接質問してくださいね」・・・わたしは紹介状を渡すときに受診者にそんな助言をしてきましたが、本当は医者が困った顔をするだろうことを想定した上で意地悪な入れ知恵をしていることを自覚しています。

”僕は、「中途半端なところで時間が経過するのを我慢できるかどうか」ていうのが、援助者の実力のひとつだと思っています。”(P170)・・・時間が解決することはよくあります。「原因がわからないと不安だ!」「そんなことも分からないのはヤブだ!」と考えるのが当事者の当然の心理だと思いますが、「でも、今回はたまたま条件が重なったけど、こんなことは二度と起きないかもしれない。そんなことに神経を使いすぎてもしょうがないんじゃない?」と内心思っているわたし(医療者)が居るわけです。それを「さしより、様子をみましょう」と表現するのはリーゾナブルなのかもしれません。

「その現象が起こるメカニズムについて教えてください。」「その機序はどういうことだとお考えですか?」・・・医学学会で新しい知見を発表すると必ずこの質問が飛び出します。 ”数の確率論は偶然の産物であり、そこに納得のいく理論展開ができないものは科学ではない!”・・・学会場がそんな空気で重苦しくなると、わたしは迷わずその場を離れることにしています。

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