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衝立の乙女

今年は小泉八雲の生誕160年(来日120年)めだそうです。そんな小泉八雲の短編小説に「衝立の乙女」があります。先日、ラジオでこの「衝立の乙女」の話が出てきて妙に興味が湧きました。最近は本屋に行かなくてもこの程度の長さであればネット上で確認できます。いや電子本ではなくて、朗読で(「小金洋子の読み語り作品集」)。

ある書生が衝立に描かれた乙女の姿に恋をして、この乙女を衝立からひっぱり出すはなし。小泉八雲といえば「怪談」です。この作品は「影」という作品集に収められています。このはなしの何が怖いのかと申しますと、「名前をつけて毎日呼び続けていたら衝立から絵が現実のものになった」ということではありません。衝立から出てきてからのその乙女との会話が怖いのです。
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 「でも、じきにお飽きになるのではございませんの?」と彼女は尋ねた。
 「生きているあいだは、けっして」と、彼はきっぱりと言った。
 「それからあとは-?」と彼女は、かさねて尋ねた。
 「おたがいに誓いましょう」と彼は懇願した。「七生(しちしょう)のあいだ変らぬと」
 「あなたが、つれなくなさるようなことがありますれば」と彼女は言った。「わたしはまた
衝立へもどって行きますから」
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「今生の愛情」だけでは薄情だと云い、「何度生まれ変っても愛し続けると誓いなさい!」と迫られたら、わたしはそんな自信のないことなんか宣言できない!と尻込みしてしてしまいます。それでも、愛してやまない女性が目の前にいるのだから、欲情を抑えることはできるはずもなく、「ほいほい。いつまでも愛しますとも」と、口から出任せを云ってしまうかもしれません。・・・結局、衝立の絵は消えたままだったということなので、彼と彼女は七生の愛を貫いたのか・・・このオチが、一番怖いお話なのかも。

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