カオス理論
<カオス=chaos=混沌>
混沌(こんとん)ということばを初めて目にしたのは中学生のときでした。むかしまだ宇宙に何の秩序もなかった状態、それをカオス=混沌という・・・何かの小説にでもでてきたのかもしれません。何かものすごく大人の世界のことばのような、そんな感動に浸り、何度もこの漢字を書いてみたことを思い出します。何もかもをきちんと秩序正しく並べることが正義だと信じていた自分にとって、「混沌」は実は一方で最大の憧れだったのかもしれません。それが潜在意識にずっとひっかかっていたから、いつの間にか既成概念を疑うことばかりする今の自分ができあがったと考えると、妙に納得できます。
先日、まったく違うことを検索していて、映画「ジュラシック・パーク」の中に出てくる「カオス理論」とやらのくだりに何となく目を留めてしまいました。「カオス」と「カオス理論」はちょっと違うもののようです。
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マルカムとジェナーロ(弁護士)の、カオスに関する会話:上・147ページ
「物理学は、ある種のふるまいを説明するにあたって大きな成功をとげた。軌道をめぐる惑星、月へいく宇宙船、振り子、バネ、回転するボール、そういう方程式なら数学者はやすやすと解ける。何百年も前から、われわれはそうやってきた」
「わかる」とジェナーロ。
「ところがここに、物理学が苦手とする、まったく別種のふるまいがある。たとえば、乱流に関することはみなそうだ。蛇口や噴水から出る水。飛行機の翼面から流れる空気。気象。心臓から押し出される血液。このような乱流現象は非線形方程式で記述される。これを解くのはむずかしい。というより、解けないことが多い。したがって物理学には、この種のできごとをすこしも理解できない。ところが10年ほど前に、これらを説明するまったく新しい理論が登場した。それがカオス理論と呼ばれるものだ。
このカオス理論は、もとをただせば1960年代に、コンピュータによる気象モデルを造ろうとする試みのなかからうまれたものだった。気象は一つの巨大で複雑なシステムであり、これは陸地や太陽と相互作用する地球の大気の働きにほかならない。この巨大で複雑なシステムの働きはつねに理解を拒否してきた。したがって、われわれには気象を予測できない。初期の研究者たちがコンピュータ・モデルから学んだものはそういうことだった。理解はできても、予測することはできない。天候の予測は絶対に不可能なんだ。その理由は、このシステムの働きが初期条件に極度に依存し、敏感に反応するからだ」
「もうわからない」とジェナーロ。
「大砲である重さの砲弾を、ある速度、ある角度で発射したとしよう。つぎに、まったく同じ重さの砲弾を、またっく同じ速度、同じ角度で発射する。どうなると思う?」
「その2発はだいたい同じところにおちるだろうな」
「そのとおり」とマルカム。「それが線形力学だ」
「わかる」
「ところがここに、ある気温、ある風速、ある湿度でスタートする気象系がある。これとほぼ同じ気温、同じ風速、同じ湿度でスタートした気象系は---第1の気象系と同じようにはふるまわない。急速に変化していって、第1の気象系とはまたっく異なるものになってしまう。快晴のかわりに雷雨になることもある。それが非線形力学だよ。初期状態に敏感で、微妙なずれがどんどん増幅されてしまうんだ」
「わかると思う」とジェナーロ。
「これを一名、バタフライ効果という。北京で蝶々がはばたけば、ニューヨークの天気が変わるというやつだ」
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