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健康への誤解

「でも先生、内臓脂肪がもっと減らないとわたしは心筋梗塞や脳梗塞になるのでしょ?」

うちの施設で生活習慣病改善のための取り組みを半年間行った60歳過ぎの男性が、最後の結果説明の場で不安そうにそう云いました。彼はとても熱心に生活改善に取り組み、半年前に異常だった血糖、脂質、血圧(内服治療中)の値をほぼ正常域にもどすことに成功しました。体重が8kg減り、CT検査での内臓脂肪量も開始時200cm2を超えていたものが150cm2まで減りました。見事な成果です。一応満足してはいるようなのですが、内臓脂肪量が自分で考えていたよりも減らなかったのが不本意のようでした。

10年以上前に日本肥満学会が「内臓脂肪蓄積型肥満」の基準値を100cm2以上と定め、それが現在のメタボ健診の根拠になりました。そのためか、世の中ではこの「100cm2」が踏み絵のように幅を利かせています。特保の担当保健師の皆さん、「半年頑張りましたがまだまだ内臓脂肪が多いですね。もっと改善できる余地はありますから、これからさらに頑張って100cm2を切れるように続けましょうね。」などと、サディスティックな助言をしていませんか?内臓脂肪量は減るに越したことはありませんが、個人差、体質の差というものがあります。この内臓脂肪面積150cm2を半分になるまで生活を締め上げ、さらに身体を絞るだけの意味が本当にあるのでしょうか。わたしは「これ以上減らすことなど考えなくて良いですから、むしろ今の状態を維持できるように頑張ってください。来年のドックを楽しみにしてます。」と説明して、面談を終わりました。

彼は納得したような、していないような顔をして部屋を出ていきましたが、今の生活を続けるうちに身体が必要と認めれば勝手にもっと絞られるでしょう。そうなったときに初めて「自分のもの」になるのです。来年そんな姿で受診されることを願っています。

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