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迷惑(後)

『技術の研鑽は大事だけれど、それ以上にここでは医者として人間としての研鑽を積みなさい!』・・・わたしが今の病院の研修医として勤務したとき、わたしのボスはいつもそう云っていました。

うちの科だけが<断らない救急>の先駆的なことをしていたあの頃、「胸が痛い」ということばだけでいろいろな人が紹介されて来ました。転んで肋骨を痛めた人、腎臓結石の人、あるいは心電図の器械判定が「心筋梗塞」と読んだだけの正常心電図の人・・・。でも、それを普通に診るのが救急外来では当たり前のことだと教わりました。

「どんなことがあっても必ずきちんと診察をし、絶対に紹介していただいた医療機関の悪口を云ってはならない。なぜならば、紹介していただいた先生は診断に困ったときにわたしたちを選んでくれたのだから。わたしたちはその信頼に答える義務がある。そうすることによって初めて信頼関係が生まれ次にもわたしたちを信じて紹介していただける」・・・まだ医者になったばかりの駆け出しのわたしは、そのときに医療連携における信頼関係の何たるかを叩き込まれました。

「○○先生は重大な病気ではないかと心配してあなたをここに紹介してくれました。今いろいろ調べてみましたが幸い大きな病気ではなさそうで良かったです。応急の処置だけはしておきますが、あとは○○先生にお任せします。何かあったときはまた何時でも診させていただきますが、たぶん大丈夫だと思います。親身になって心配してくれるかかりつけの先生がおられて幸せですね。」・・・そう云ってその場で紹介状の返信を書いて渡すところまでが救急外来でのわたしたちの仕事でした。それがごく当たり前にできるように指導をいただいたことに、今、心から感謝しています。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

時々寄らせてもらってます。息子が高校生だった数年前のことです。当時の息子は食べては吐く食べては吐くを繰り返す摂取障害でした。ある夜、激しい腹痛で病院に連れて行くことになりました。診察の結果は便が詰まったことによる腹痛だったのですが、医師に摂取障害であることを告げると、なんと馬鹿にした笑いと「拒食症~」と言う返事が返ってきました。当時は瘦せ細った息子を見る度「この子を失うんではないのか」と辛い毎日でした。そこにこの医師の言葉です。込みあげる怒りを抑えるのがやっとで、悔しくて悔しくて本当に傷つきました。なんて最低な医師、人間なのでしょう。現在息子は一社会人として仕事に頑張っています。長文すみませんでした。

投稿: ヤマトの母 | 2011年1月 7日 (金) 13時04分

ヤマトの母さん

書き込みをありがとうございました。

とても悲しい過去を思い出させてしまったこと、大変申し訳なく残念に思います。

悲しいことに、バカヤロウな似非医者は少なくないみたいです。でも、世の中にはその数以上の素晴らしい医者もたくさん居ます。次にはそんな医者に出会えてもらいたいと心から思います(いや、医者そのものに関わらないで済むのが一番ですが)。

そして、何よりも息子さんがしっかりとした社会人として頑張ってくれていることに感謝いたします。

投稿: ジャイ | 2011年1月 8日 (土) 00時50分

ジャイ先生、ありがとうございました。当事者でなければ解らない事だと誰にも話さずに来ましたが、今はとても晴々しい気分です。昨日、スペースがなく書けなかった事があります。あの時別の『お医者さま』がいたのですが、帰ろうとしている私共夫婦の傍に走って来られて「息子さんは専門の医師についていますか?○先生を訪ねてみないですか?」と言って下さいました。先ほど味わった屈辱感が少し薄れた気がしました。既に別の先生のカウンセリングに通っていましたが、ありがたかったです。涙が出ました。その時はお名前も聞かずにいましたが去年、偶然にも仕事上で産業医としてのその『お医者さま』のお話を聞く機会があり、お名前を知ることができました。

投稿: ヤマトの母 | 2011年1月 8日 (土) 14時00分

ヤマトの母さん

ありがとうございました。
ほっとしました。
嬉しくて、読みながら涙がボロボロこぼれ落ちてしまいました。本当によかった。

投稿: ジャイ | 2011年1月 8日 (土) 20時16分

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