心雑音
「軽い心雑音が聞こえます。」・・・健診の診察の際に、軽く首を傾げながら聴診器をはずしてそう云いましたら、その女性はすかさず、「ああ、時々云われます。たしか学生のころから云われてきました。」と慣れっこな口調で答えました。
もちろん、わたしが循環器内科医であることや聴診器が循環器科用なために、細かく聴き取りすぎた感は否めませんが、その気になって聴けば診察の際の心雑音聴取はそう珍しいことではありません。心雑音は血液の流れが心臓の壁か弁膜に当たるときに聞こえる反射音です。ですから、心雑音が聴こえることがイコール弁膜症や心臓に穴が開いているなどの心臓病の存在を示すわけではありません。高血圧や貧血が強い方にもよく聴こえますし、それがなくても若い女性などには聴こえることがあります。これを「機能性心雑音」と呼んでいます。その心雑音が病的なものか気にしなくていいものかは、循環器専門の医療機関で心エコー検査を受ければ簡単に区別できます。むかしは聴診器ひとつで病気があるかないか、重症か軽症かを識別できる医者を「名医」と云っていましたが、正直なところその中には間違い診断も少なくなかったようです。ですから、気になるときはあまり意地を張らずにさっさと心エコー検査を受けることを勧めています。
さて、冒頭の女性です。50歳前後のその女性の雑音はきっと高血圧に伴うものだと推測されました。でも若いときから「心雑音」ということばに慣れっこになりすぎている感じを受けたので、あえて忠告しておきました。「心雑音にもいろいろ種類があります。もしかしたら学生のころの心雑音とは違うものかもしれません。もし主治医の先生が検査を勧めたときには必ず受けてみてください。」・・・むしろ昔からその所見名だったために新たに出てきた病気の発見を遅れさせる場合がある、それはちょうど「機能性血尿」の方々と似ています。
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