新しい生活の空気
ある知人の娘さんがこの春から大学生になります。入学試験の発表と同時に新しい生活を始める自分のお城(アパート)を探しに親子で大学のある街に出向くのだそうです。この季節になると漂ってくる甘酸っぱい空気は、新しい生活への期待と不安を当時のままに包み込みながら、この歳になっても、わたしの遠い昔を思い出させてくれます。
思い出されるのは新婚時代の東京だけではありません。初めての一人暮らしは姪浜。予備校の下宿屋さんでした。「こんなニワトリ小屋みたいな部屋で良いの?」と心配する母を後目に、誰からも干渉されない新しい生活にちょっとワクワクしていました。部屋の裏には筑肥線の線路が走っており、その向こう側の田園の先には女子高、そして九州場所の季節にはその界隈に若いお相撲さんがたくさん闊歩しました。私服なんて自分で買ったこともなく、時々ダイエーで買ってきたそのころ”流行り”の服は、いつもチンチクリンでした。あの町並みもあのお相撲さん風景ももう無くなっているのでしょうね。
大学は熊本でした。ここも下宿屋さんでした。先輩に安く分けていただいた自転車はブレーキパッドがほとんど擦り切れていましたが、これによって行動範囲は格段に広がりました。アパート住まいの自炊生活をする同僚の自由気ままな生活に憧れながらも、風呂も飯もきちんと出してもらえる「下宿屋さん」というのはとてもありがたい存在だったなと思いますが、今ではほとんどなくなったらしいのが残念です。
研修医になってからはずっとアパートか官舎住まいでしたし、新たに自家用車が行動の中心になりました。初月給で最初にミニコンポとLPレコードを買ったとき、コーヒーメーカーを買ったとき・・・何しろ箱入り息子だったわたしにとっては、新しい生活のオンパレードでした。
なんて、意味もなく思い出と一緒に人生の総括をしたくなるような、そんな季節なんでしょうか、今どきは。
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