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「特保の功罪 ~腹囲攻防戦の意義」

定期の依頼原稿が掲載されました。

『特保の功罪 ~腹囲攻防戦の意義』

ときどき温泉センターに行きます。湯船に浸かってボーっとしていると、目の前をいろいろなお腹が通り過ぎていきます。超メタボなお腹、引き締まって縦割れのお腹、貧相なお腹、若いお腹、年寄りのお腹、毛むくじゃらのお腹、真っ白なお腹、うつむき加減のお腹、上向きのお腹・・・。同じ日本人でありながら、お腹は千差万別なのだなあ、と感心しながら他人のお腹を眺めるのが常です。

先日も阿蘇にある温泉センターに行きました。ちょっとぬるめの湯に浸かりながらいつものように他人のハダカを眺めていましたが、気のせいか、数年前より大きなお腹の人が減った気がしました。この日がたまたまかも知れませんが、中肉中背のいわゆる『日本人的体格』(ただ痩せて貧相なそれではなく、それなりに「均整の取れたカラダ」)の人が増えている感じ。これはきっと、国を挙げてのメタボ対策が、何のかんの言われながらも、それなりに奏功している証拠ではないかと実感した次第です。流行りというのはそれなりに重要なことです。女性の胸が流行りによって豊満になったりこじんまりしたり変幻自在に変化するのは男性にとっては摩訶不思議な現象ですが、同様に男性もメタボ対策が流行りになってくれると健康的なお腹が自然と増えていくかもしれません。わたしも、どっかのCMのように、自分のお腹を隣りのお兄さんのお腹と比較して、そっと引っ込めて見栄を張ってしまいました。

新年度になりました。日本のメタボ基準に必須の腹囲測定。カーテンの陰で冷たいメジャーをお腹に巻き付けられる光景がまた繰り広げられます。外国にバカにされ、測る人や日によって数字が違うのに当てになるのか?・・・そんな疑念を抱く人は少なくなく、健診現場のスタッフですら無意味だと思いながら測っている人がいます。でも、これが意外に当てになります。日本の学者さんたちが頑なまでに腹囲を必須条件から外さないのは、あくまでも内臓脂肪の溜まるタイプの人を見つけたいからです。内臓脂肪が溜まっている人は自分の努力だけで何とかなるかもしれない人、そうでない人はクスリなどの病院の手助けが要る可能性が高い人、その区別をつけるために腹囲を測定しています。つまりメタボ腹の人の方がラッキーかもしれない、ということです。

最近、世の中が「メタボ対策」と「やせること」を混同しているのが気になりますが、それ以上に「生活習慣病」と「メタボ」を同じものと勘違いしている医療者を多くみかけます。やせる必要のない生活習慣病の方の治療は、特定保健指導で保健師さんに追い回される「メタボ」の方とは根本的に違うということを、この機会にしっかりご理解ください。

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