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受診ボード

「どうぞここにおかけになってお待ちください。ボードはボックスに入れておりますのでね。呼ばれるまでそのままお待ちください。」・・・フロアアテンダントの女性が受診者の方に説明している声が診察室に居るわたしの耳にも入ってきました。

わたしたちにとってはごく普通に聞こえるフレーズですが、冷静に客観的に聞いてみると、ちょっと理解しにくい場所がありました。「ボードはボックスに・・・」の行(くだり)です。『受診ボード』のことをわたしたちはいつの間にか当たり前のように『ボード』と呼ぶ習慣になっていますが、そもそも『受診ボード』ということば自体がおそらく業界用語のはずです。『ボード』=板という発想そのものがなければ、あるいは自分たちが持たされている受診票を挟んでいる小さなプラスチックの板のことを『(受診)ボード』というのだと認識していなければ、おそらく彼女の云っていることばは聴き取れないままに流れてしまっただろうな、と思って聞いていました。よく分からなかったけど、とにかくここに座って名前を呼ばれるのを待っておけばいいんだな・・・きっとわたしが受診者なら、そんな感じで少しだけ不安に感じながら座って待っていることになるでしょう。

他の病院を受診したり、役場とか企業とかを訪問したときに一番アタフタするのが、その職場でのみ使われている用語です。おそらく使っているスタッフの皆さんはそれが世間一般の共通用語だと思って、<知ってて当然>みたいな顔をして使っているようですが、自分の目の前にあるものを自分が思っているのと全く違う名前で呼ばれたら、きっと何も気づかないことでしょう。

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