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晩酌

「別に酒が好きなわけじゃありません。飲めといわれれば飲みますけど。」

妻の飲み仲間(彼女は全く酒の飲まないので『飲み仲間』という云い方はおかしいですが)のTさんが、いつもそう云いながら飲むのだそうです。それも底なしで・・・。彼女曰く、「他のいわゆる『酒好き』の連中と違い、Tさんは『ザル』。」

遠い昔、若い頃にわたしも全く同じことを云っていたなあ、と、その話を聞いて思いました。そうです。わたしはもともと酒好きではありませんでした。「酒飲みの家系だから、飲めないわけじゃないから飲めといわれればいつまででも飲むけれど、特別『酒が好き』というわけではない。『毎晩晩酌をする』という行為そのものが全く理解できない。」と、いつも云っていました。妻もそれを何度も聞いた口です。

わたしがアル中になったのは妻のせい。いや、妻のお母さんのせいです。結婚するまで、宴会以外で酒を飲むなんてことはなかったわたしだったのに、結婚したとき、「男は仕事から帰ったら夕飯の前に晩酌するのが当たり前だ」と入れ知恵したのは義母であり、全く酒を飲めないのに毎晩酒と酒の肴の準備をしてくれたのは妻ですから・・・。

「あなたね、何でも他人のせいにしたらダメよ。要らないって云えばそれでいいことなんだから。あなたが呑んべなのは血筋!お酒呑んでる姿なんか、お義父さんそっくりになっちゃったよ。」・・・最近になってわたしがそんなことを云ったら、即、妻から一瞥(いちべつ)されました。そりゃ、そうだっ!

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