骨髄異形成症候群
先日ここで紹介した慶應義塾大学の宮川義隆先生の「血液疾患」のレクチャーの中で、<骨髄異形成症候群>という病名が出てきました。
この病名を聞くと、もう15年以上前、ある地方の病院に出向していたころのことを思い出します。循環器内科医として外来をしていたわたしは2人の<骨髄異形成症候群>の患者さんを受け持っていました。どちらも女性で、一方は60歳代でもう一方は30歳代のまだまだ若い方でした。循環器内科医が受け持っていた理由は、先天性心疾患や高血圧症などを合併していたからでしたが、当時のわたしは<骨髄異形成症候群>の名前すら初めて聞くようなもので、今のようにインターネット検索ができるわけでもなく、古い内科学の教科書に書かれているわずかな知識しか知らないままに、恐る恐るに見よう見まねの治療をしていた記憶があります。定期的な輸血を余儀なくされていた60歳代の女性が、「先生、わたしはこれからどうなるのですか?」と遠慮がちに質問したときのあの寂しそうな顔が忘れられません。30歳代の女性からは合併していた先天性心疾患のせいで何度か心不全を繰り返したあと、「こんな生殺しのような人生はイヤだから一か八か心臓手術を受けさせてください。」と懇願されました。
宮川先生のレクチャーで、この予後不良だと思われてきた疾患に画期的な治療法が出てきたことを知りました。<骨髄異形成症候群>だけでなく、以前は診断されただけで死の病と思われてきた、再生不良性貧血や急性前骨髄性白血病(格闘家のアンディフグが罹患して有名になった)や慢性骨髄性白血病などなどの疾患もウソのような生存率に改善していて、隔世の感があります。若いころの知識がここまで通用しなくなるほどに医学は進歩しているのだなと実感しながら、たとえあんな片田舎であっても、今ならあの2人の女性の人生はまったく違うものになっただろう、としみじみ思いました。
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コメント
ジャイ先生おはようございます。九州地方の雨の被害が伝えられていますが、先生がいらっしゃる所は大丈夫ですか?何事もありませんように。
投稿: 向日葵 | 2011年6月21日 (火) 06時50分
向日葵さん
ご心配ありがとうございます。
1週間前(やっとこさの思いで神戸から飛んで帰ってきました)が一番凄かったですね。うちのワンたちの散歩コースの公園の周辺はぜ~んぶ海に変わっていました。我が家のビルトインの車庫も前輪付近まで雨で浸かりました。こんなことは初めてでしたよ~。
「バケツをひっくり返した」ではなく「滝のような」雨。早く、明けてほしいです。
投稿: ジャイ0425 | 2011年6月21日 (火) 19時17分