自治医大コホート研究
数日前に配信されたMedicalTribuneの中に、コレステロール治療に関する話題がありました。自治医大コホート研究の報告として、しっかりと調整してもなお低コレステロール値が高死亡率と関連していた、という発表(J. Epidermiol 2011;21:67-74)に対して北里研究所病院糖尿病センターの山田悟先生がコメントしたものです。
この研究は、日本の12地域12334人の健常者を1992年から約12年間観察したもので、コレステロール値で4群に分けて追跡調査した結果、男性では一番死亡率が高いのが<160の低コレステロール群であり、女性に至ってはコレステロール値が高い方が正常群より死亡率が低く、コレステロール値が低くなるほど死亡率が高くなった、というのです。日本の疫学のバイブル的に扱われてきたNIPPON DATA80でもコレステロール最低値群(<160)と最高値群(>260)で死亡率が上昇したが、最低値群は肝疾患を除けると有意でなくなったので、「コレステロールは高いほど悪い」と結論付けたのに対して、今回の自治医大コホート研究では肝疾患の補正をしてもこの傾向に変化はなく、特に女性の場合は「コレステロールは低いほど悪い」という結果になった、というのです。
でも、わたしも山田先生の書かれているように、NIPPON DATA 80の結果と自治医大コホート研究の結果にはあまり大きな差がないという印象を受けます。もともと「低すぎる総コレステロール値の人は危ない」というのは大多数の医療者が認める事実であり、悪性疾患や甲状腺異常がないか精査すべきとされてきています。またNIPPON DATA 80でも女性の場合はコレステロール値が260以上になって初めて死亡率があがりはじめています。自治医大コホート研究が240以上を全部一緒にしているので超高値の行く末を評価していないだけかもしれません。
云えることは、コレステロールが極端に低すぎる人と極端に高すぎる人は要注意!ということ・・・でしょうか。あとは、この結果をマスコミがどう扱うか、に掛かっています。自治医大コホート研究結果がこれまでと全く逆の結論を出した!と煽って論争を始めると、またまた当事者の患者さんだけが右往左往するのではないかと心配になります。
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