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なぜ今、「食後高血糖」か?

依頼されていたシリーズの7月号(vol.2)が公開されました。今回は軽症糖尿病についてです。
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なぜ今、「食後高血糖」か? ~糖尿病は他人事だと思っているあなたへ

血糖を下げるホルモンであるインスリンが十分機能できずに起こる病気が糖尿病です。今、日本人の糖尿病患者が爆発的に増えており、久山町研究の2002年の報告によれば、成人男性の2人に1人以上、女性でも3人に1人以上が糖代謝異常です。にもかかわらず、世の多くの人たちは糖尿病は自分には関係ないと思っています。健診で「血糖が高い」と言われても、それは糖尿病とは別次元の話だと思っています。「糖尿病ですね」「えっ、糖尿病?かかりつけの先生は予備群って言ってましたよ!」・・・突然血相を変えて反論する方々の姿をみていると、これだけ健康情報が溢れている中で、世間の皆さんは糖尿病に対してあまりにも無防備だと感じます。

●日本人は糖尿病になりやすい(インスリン初期分泌不全)

II型糖尿病になる原因は2つあります。ものを食べて血糖が上がったときに直ちに分泌されるはずのインスリンが出遅れる<インスリン初期分泌不全>と、乱れた生活のためにインスリンの働きが鈍くなってしまう<インスリン抵抗性>です。農耕民族である日本人は、血糖値が低すぎることはあっても高くて困るような歴史がなかったために、インスリン機能が発達していません。だから<インスリン初期分泌不全>体質の人が意外に多い民族です。

<インスリン初期分泌不全>があるとどうなるのか。昔の食材のように血糖値がゆっくり上がるものは問題ありませんが、急激に血糖値が上がると出遅れたインスリンが後追いする形になって血糖上昇に追いつけず、食後だけ本来より高い血糖値になります。この<食後高血糖>状態が境界型糖尿病(予備群)の始まりですが、食後だけ高血糖になるので最初は空腹時血糖やHbA1cには異常がみられません。インスリンが余分に出続けると徐々に血糖の下がりが悪くなり、そこで初めて軽い異常が指摘されます。つまり、健診で軽い異常が指摘されたときには、すでに糖代謝異常はかなり進んでいることになります。<インスリン初期分泌不全>は生活が乱れていなくても高血糖を誘発しますので、欧米人と違って日本人は大して太らなくても糖尿病になりやすく、単にやせればいいというわけにはいきません。

●動脈硬化は糖尿病になるはるか前から始まっている(食後高血糖)

そんな体質を持っていても皆が糖尿病になるわけではなく、HbA1cが正常の間はまだ心配は要らない、と言われてきました。ところが、どうもこの<食後高血糖>のときに動脈硬化が進むのだということが最近分かってきました。動脈硬化は、変性したコレステロールが動脈の壁の隙間を通って壁の中に入り込むことで始まります。動物実験では、ずっと高い血糖値に曝されている血管より血糖の上がり下がりを繰り返した血管の方が傷みやすいことが分かっていますし、血糖の急激な上昇を繰り返すと動脈硬化を進める白血球が壁にくっつきやすくなることも報告されています。つまり、食後高血糖の度に動脈壁を傷めながら動脈硬化は進むわけですから、動脈硬化は糖尿病になってから始まるのではなく境界型糖尿病(予備群)のときに加速度を増して進行する、ということになります。”糖尿病は予備群のときが一番危ない”・・・それが結論です。

●ワンポイントアドバイス

<インスリン抵抗性>の改善のために運動をし、食事量を減らし、何とか減量に励む努力を強いることは重要なことだとは思いますが、動脈硬化予防の第一歩は結局<食後高血糖>を起こさせないことになります。一言で言えば「血糖をゆっくり上げる」意識を持つこと・・・ごはん(炭水化物)は噛まずに早食いすると血糖値を跳ね上げるのでとにかく良く噛むこと(“山盛りのごはんはどうせ噛むはずがない。初めから少ししかなければイヤでも噛む”)。また、血糖値がゆっくり上がる野菜・繊維質をメインディッシュより前に食べること(“スキヤキは肉を確保しながらまず糸こんにゃくから食う”)。・・・単に健康的な食べ方を求めているだけなので、自分の体質が何であれ、日頃の習慣としてこの程度の留意に何の損もなく、やったもん勝ちだと思います。少なくとも家系に少しでも糖代謝異常のにおいがする人にはお勧めします。

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