ちょっと出来が今ひとつでしたが、機関誌の定期コラムが公表されました。
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「厄明け」
数ヶ月前に、私の知人の厄明けパーティがありました。
『最近、ちまたでは男の25歳、42歳、61歳、女の19歳、33歳、37歳を厄年といい、男の42歳と女の33歳は大厄という。男性41歳を前厄、43を後厄といい、41~43歳の前後3年は注意して過ごさなければならない』と江戸時代の文献にありますが、これはどうも平安時代からの風習のようです。「男は厄の期間よりむしろ厄明けしてからいろんなことが起きるんですよ。カラダの代謝が急に変わって大病を患うし、事故やら身内の災難やら社会的にもいろんなことが起きるのはこれからですよ」・・・酒を注ぎながら知人にそんな脅し文句を言っていたら、彼が重い口を開きました。「やっぱりそうですか。今までそんな話は聞いても全然興味がなかった。ところが最近、周りにがんになったり突然死したりする人が妙に多くて、あんなに強気だった人が『早く死にたい』なんて言うんです。それを見てたら、自分のこれからや健康のことや死ぬことの意味や、そんなことを急に考えるようになりました」・・・それは、いつも見せる怖いもの知らずの表情とは全く違う神妙な顔つきでした。
陰陽道で『男の42歳、女の33歳が厄年である』というのは、<42歳は4も2も陰数であり、読んで「死」、男性は最もこれを恐れる。33は陽数が重なり、事の敗続するのを「散々」といい、いずれも「サンザン」と同訓であるから最も恐れるとしている>という、何ともいい加減な語呂合わせ的な理由だそうです。厄年辺りの歳が公私共に一番疲れの出る大変な時期で、それを昔の人は経験で分かっていたのだろうなどと思っていましたが、統計上もそんな事実はないみたいです。当時に比べたら寿命そのものが全く違っていますから、「そもそも現代社会に当てはめること自体がナンセンス」と一笑に付す人も多いでしょう。それでも、長い間この仕事をしていると、特に男性の場合はこの『厄明け』は大きな境目のような気がしてなりません。高血圧や糖尿病の家系の人は、たしかに厄明け辺りから急に発症の兆候を出し始める印象があります。43歳の時に父が急逝し、翌年に車が大破するような大事故に遭ったのは単なる偶然でしょうが、ほとんど大病のなかった私が突然高血圧になったのがその頃ですし、その後に続けざまに小脳梗塞になったりうつ病になったり・・・だから『厄明け』を偶然の重なりと言い切るにはちょっと抵抗がある次第です。
それが単なる迷信であれ単なる風習であれ、『厄明け』をはるか前に経験した身として自分の人生を考えると、少なくとも人生の節目として、あるいは自分自身をみつめるきっかけとして、厄という風習はとても意味のある大事な儀式だなと思います。もちろんそれは、それまで以上に健診を受けることの重要性が増すという意味でもあることを強調しておきます。ちなみに、女性の場合、その節目は33歳というよりもやはり閉経後・・・こちらはホルモンの変化が出てくる明らかな節目です。
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