eGFR(後)
CKDやeGFRの意味をくわしく説明し、現時点で新たな精密検査は必要ないし、これまで通り主治医の先生に時々採血してもらってアドバイスをもらうだけで大丈夫だと思うと伝えましたが、結局最後まで彼の表情は明るくなりませんでした。あの様子では、その足で腎臓内科の専門医を受診するかもしれません。
糖尿病の診断のための75g経口ブドウ糖負荷検査もそうですが、わたしたち健診に関わる人間はこれらの値に対してやや強すぎる予防意識を持っています。だから、受診者の皆さんにかなり厳しい説明をしがちです。でもそれによってこの男性のように無用な不安感を持たせてしまうことが世に少なくないことも忘れてはなりません。健診で予備群の評価をして生活療法の必要性を説くのは、その段階から生活を見直せば将来病気を発現させずに済むかもしれないからです。生活が乱れているからこんな状態になったと云いたいのではなく、こんな状態の臓器だから大事に扱いましょうと伝えたいのです。この男性の場合はおそらく年齢相応の普通の腎機能であり、きちんとした生活管理ができていますから人生を全うするまでに人工透析になることはないと思います。なのにこんなに心配してさらなる戒律を自分に課そうとしているのはやはり本末転倒のような気がしてなりません。甘く考えると危ないことを話しながらも逆に心配しすぎても良くないことを、うまいさじ加減で説明するのがわたしたち健診に関わる医療スタッフの仕事であると自負して、日々がんばりたいと思います。
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コメント
ジャイ先生
おはようございます。
3ヶ月以上もご無沙汰となりました事、お詫び申し上げます。
前記も致しましたが、先生のコラムが面白くないとか、私が死んだフリをしていたとか・・・ではありません。
毎朝、先生のコラムを楽しみに拝読させて頂いておりましたし、私も至極元気(?)です。
学会発表が3つも重なり、それなりの論文らしき怪しげな物書きをさせられたり・・・当然ですが、復興ボランティアに駆立てられて、寝る暇も無いくらい?・・・実は熟睡・・・多忙でコメントを書く余裕がありませんでした・・・要領が悪いだけかも知れません!
私は医者ではありませんが、医療工学所属(講師)と言う立場で、被災者などの医療の現場にボランティアとしてぶち込まれていました。
勿論、各地各方面より老若男女を問わず医療関係者が派遣され、一線で医療活動に従事しています。
ここで、ツクヅク考えさせられる事が多々ありました。
話しはそれますが、我国では30年程前の医師法改正により、
「医者=Dr.=学者」の公式が破壊され、「医者=国家資格合格者」の世界で稀な制度となっています。
それが如実に被災地現場で現れる結果となっていました。
特に40歳代以下の若手と言われる世代では、何につけても「マニアル」が無いと何も出来ない、動けない! のには呆れて物も言えません。
確かに分厚い「医療辞典」や、最近は医薬品メーカーが構築した「ネットマニアル」が医者の机上の必需品では有りますが・・・ネットも無い野戦現場では。。。
これでは何の為の「医者」なのか? ・・・オートマ以外は運転できません! と同様に思われました。
しかし、さすがDr.となりますと、違いますね~!!!
基本を捉えていますので、テキパキと治療をして行きます。
これには敬服致します。
先生昨今のブログテーマは、巷で言われている「医者が病気を作っている」、その物と私は考えています。
上記通り「マニュアル」医療が徹底してしまい、基準値より少し外れただけで、「ハイ、貴方は○×病です!」しかも「エライ先生が作ったデーターですから、間違いありません!」・・・治療方法は云々です。
物の例えに、「十人十色」と昔から言われています通り、体調や具合も「百人百様」なはず、なのに「人類1様」のスタンプ押しでは、健常人も皆病人となり、医療保険パンクは必然と考えられます。
いかがなものでしょうか?
久々のコメント、下手の長文で恐縮千万です。
釈迦に説法となりますが、時節柄、風邪なぞ召されませぬ様に。
仙台市 asuka3h 拝
投稿: asuka3h | 2011年12月15日 (木) 09時46分
asuka3hさん
本当にお久しぶりです。相変わらずお忙しそうで何よりです。人間、何と云っても忙しいのが一番です。
わたしたちの仕事の中で強調して置かなければならい事は、世のマスコミが騒いでいるような「大げさに意味なく病気を作り上げている」のではないのだということだと思います。食後高血糖も正常高値血圧もCKDもメタボリックシンドロームも、どれも「病気」ではないけれど、それに該当する人はそれを「予備群」ではなくて「病気」だと認識しなければそれになってしまうのだと云うこと、今の段階で生活を変えておけばそういうものと縁がなくなる可能性もあるし今のうちに病気の何たるかを知っておけば病気になってもうまくつきあえるのだと云うことを理解してもらうのが目的でこれらの概念が生じています。決して大げさな概念でもありません。ただ、それを受け止める方々の受け止め方が十人十色で千差万別なので、必要もないひとが異常に心配したり、もっと心配して欲しいひとがいい加減に聞き流したりしてしまう。それをうまく導いていくのが、わたしたちの仕事なのだと思っています。
投稿: ジャイ | 2011年12月15日 (木) 18時55分
ジャイ先生
おはようございます。
仙台、今朝はサンムク、飛ばされ雪がぱらぱらです。
熊本も寒い所ですね。
早速のご返事、ありがとうございました。
別に先生方をイビッテいる訳ではありません。
でも・・・日本人は草食人種で弱いものです。
平民、庶民から見ますと、お医者さんは特段にエライ別格人種と捉えている人々が大半です。
ですから、些細な事でも「チョッと高めですネ~」と先生方の何気ない言葉が、拝聴する側から見れば「余命宣告」も同様で、
「検査を受けた方が良いですよ」は、「末期症状で私の所では手に負えません」と、聞こえてしまうのではないでしょうか?
だから、自分の足で検査に行けば、帰りはBOXパッケージになってしまう! だから検査になんか絶対行くものか・・・。
今般の被災地医療支援ボランティアで、数多くの患者側下々のお話を数多く耳にする事が出来ました。
百もご承知の事とは存じ上げますが、あえて記させて頂きました。
テレビ送信塔よりも遥かに高い「白い巨塔」の展望台から見る下町風情と、長屋暮らしの八ッツアン、熊さんの目線の差かも知れません。
これは、先生方はじめ医療関係者をイビル話ではなく、私自身が目を覚まさせられた反省を含めた実話でございます。
なんか・・・後味が良くない内容でゴメンなさい。
仙台市 asuka3h 拝
投稿: asuka3h | 2011年12月16日 (金) 09時55分
asuka3hさん
九州も一気に冬将軍の餌食になってきました。
たびたび書き込みをありがとうございます。
すぐに「はいそうですね」と書かない頑固さはお互い様ですね(笑)
生活習慣病というのはきわめてシンプルな話で、草食ガソリンで動くように作られた車に肉食ガソリンは使えないというだけのことですから、肉食ガソリンばかりをつぎ込んでいったら車が錆びていくのは至極当然な話。まだ動くから大丈夫!と、設計者の忠告も聞かずに続けていたら突然火を吹いた!と云って救急車で駆け込んでくる連中の事後処理ばかりを私は続けてきました。壮絶な救急医療の現場で昼夜を問わずヘトヘトになりながらボロボロの血管の部分修理を10年以上手がけてきた私の得た結論は、ここまでなって修理しても何も解決しない!ということだけでした。
ですから、ここの部分は、譲れませんねえ(笑)。
投稿: ジャイ | 2011年12月16日 (金) 19時13分
こんにちは。eGFRの検索をしていて先生のブログを読ませて頂きまし。私も既往歴が無いというだけでそこに記されている患者さんとほぼ一緒の状態で、主治医に問題ないと言われても心配で腎臓内科に行こうか悩んでいたところです。クレアチニンは正常値内なのにeGFRでひっかかり不安でした。年々下がる値に不安を覚えて主治医に相談に行ったところ「あなたは筋肉質だし、尿もそのほかの数値も問題ないから心配ないよ」と言われました。昨年も健康診断で「要観察」になり精密検査を受けましたが特に所見はありませんでした。今年は昨年よりさらに数値が低く60→58に下がってしまいました。主治医の先生に「大丈夫」と言われてもこのまま腎臓が悪化していくような気さえして為す術は無いのかなと気になってしまいます。ネットで調べれば中程度の状態と黄色信号のマークがついていたりして。もっと説明を聞きたいと思いつつ、あっさり心配ないよと言われ不安です。
投稿: あんこ | 2013年12月15日 (日) 10時54分
あんこさん
お返事が遅くなりました。ちょっと風邪をこじらせてしまいまして(笑)
むしろ早めに腎臓内科を受診して正式にGFRを測定してもらったらいかがですか。
腎機能を評価できるのはeGFRではなくてGFRです。一日蓄尿などをするか特殊な放射線検査をするかしないと正式なGFRが算出できないために、概算として健診のスクリーニング用に作られた乱暴な計算式がeGFRです。ネットで調べてすでにご存じでしょうが、年齢が1歳上がるだけでeGFRは勝手に0.5~0.4ずつ下がります。一般的に本物のGFRはeGFRよりかなり高い値です。あくまでも日常生活の乱れている人に人生の見直しをするきっかけを与えるためにあるのがeGFRですから、そんな生活ではない人は早めに腎臓内科を受診して、正式な今の腎機能を教えてもらって不安を取り除くのが一番有効な方法だと思います。うちの健診受診者の方でも、自らの意志で専門医を受診された方は少なくありません。例外なく「問題なし」の結論を受けていますが、それでもそのプロセスを踏まれた方の方が自信が持てた感じを受けます。
腎機能の評価をGFRで行い、その代行をeGFRでするために、GFR値もeGFR値も同じ腎不全指標を用いて解説されていますが、実は別物です。日頃節制している人ほどココロを傷め(本当に悪いヒトは無視するし)る結果になっていることを懸念しています。
そんなことになるから、eGFRなんか最初から出すな!という開業医はまだたくさんいますが、糖代謝異常や血圧高めの人、あるいは喫煙者に生活習慣の見直しをしてもらうきっかけ作りにはとても有効な数字のような気がします。実は、本物のGFRは改善することはありえないのですが、eGFRは年々良くなる人がたくさんいます。上がったり下がったりする人もいます。
投稿: ジャイ | 2013年12月16日 (月) 08時54分
ジャイ先生、ご丁寧なお返事ありがとうございます。
昨日もTVでやっていましたが健康診断で過剰な不安を煽っていると仰っている先生がいました。私のような小心者は数値に一喜一憂しストレスを溜めているような気がします。普段の食生活の中でも何だか気になってしまったりして。もやもやとした気持ちを持ちながら生活するより先生の仰るようにGFRの値を調べた方が良さそうですね。今回のことでジャイ先生のブログに出会えて、こうして胸の内を話すことが出来嬉しく思います。楽しみがいひとつ増えました。ありがとうございます。風邪を引かれていたとのこと、どうぞお大事にして下さい。
投稿: あんこ | 2013年12月17日 (火) 10時52分
あんこさん
”楽しくなければ人生の無駄遣い!”
ひとつひとつ自信をつけて、折角の人生、もっと明るい前向きなものにいたしましょう。
投稿: ジャイ | 2013年12月18日 (水) 00時40分