歩きながら見えること
「仕事帰りに自宅まで歩いて帰ることにしました。1時間ちょっとかかるのですが、その間にいろいろなことを考えながら頭を整理することができるんです。」
先日、わたしが産業医として担当したメンタル障害の方との面談中にそんな話が出てきました。仕事復帰に向けてのリハビリ期間なので時間に余裕があるのだそうです。順調な回復の様子で安心しながら、しばらくウォーキング談義が続きました。
わたしも街中から自宅まで1時間半かけて歩いて帰ることは良くあります。健康のために、というよりも、この1時間半が自分だけの世界に浸ることのできる充実した時間なので好きなのです。不思議なことに、どんなに悩み事があったり仕事で不快なことがあったとしても、歩きながら考え事をするときにはほとんど後ろ向きな発想が浮かんできません。夜に床に就いてから同じことを考えると必ず悪い方向に向いたり怒りで興奮したりしてしまってなかなか眠れなくなるのと見事に正反対です。ああすれば良くなるとか、今度これをやってみようとか、明るい未来のイメージに満たされているうちに目的地に到着します。「家まで1時間半かけて歩いて帰る」と云うと必ず驚かれますが、そんな思索の時間なので当事者は大した疲れもないのです。おそらく友人や妻と話しながら帰ったとしたらそうはいかないかもしれません。
「頭の中がスッキリ整理できますし、あちこち道すがらの風景を見ていると毎日新しい発見ができて楽しいです。」・・・そう語る彼女の発する言葉は、おそらく本心なのだろうなと思いました。
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コメント
ジャイ先生
こんにちは。
告知を受けた後。歩いてみたくなった事を思い出しました。。。
娘が幼かった頃抱っこして歩いた道。
小雨が降る中、私の帰りが遅い…と小学生だった息子が立っていた坂の下。
しばらく歩いているうちに、なんかスッキリしました。
主人じゃなくて、子供達じゃなくて…私でよかった。
覚悟ができました。
『彼女』も…
いつか歩いていた日の事を懐かしく思い出す日がくると思います。
幸せになりますように。
投稿: 向日葵 | 2012年1月23日 (月) 12時38分
向日葵さん
ありがとうございます。
その時の風景を想像していたらホロッときてしまいました。
ボクサーの彼もクリスマスソングの彼女もそしてだんなさんも、皆さんに幸せな今があって良かったです。
投稿: ジャイ | 2012年1月23日 (月) 22時43分