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説明は戦場?

「それじゃまず胃カメラの写真をお見せしましょうかね」・・・部屋に入ってきた受診者の方を椅子に促して、わたしはできるだけ静かな口調でこう切り出すことにしています。完璧なる理論武装して来た人も、医者の説教なんか聞き流そうと思ってた人も、一瞬「へ?」という顔で驚きます。「どうしてそんなところから?まずはこの高血圧やら肝障害やらからやないんかい?」と、顔に書いてあります。

健診結果の説明が始まる前というのは、合格発表のときの不安感とか人事考課面接の緊張感とかに似たいろいろが入れ混じっていて、説明をする側とされる側の一種独特な緊迫した空気が流れます。「また同じことを云われたらこう言い訳しよう」と構えて部屋に入ってくる受診者の方と、「今日こそガツンと云って聞かせなければ!」と息巻いて待ち構えている医者や保健師と、そこにはあたかも戦場のような一触即発の張り詰めた空気が流れがちです。

でも、健診は戦いの場ではありません。ましてや高い金払って叱られに行く場でもありません。わたしがまず問題のない胃カメラの写真の説明から入るのは、一緒に眺めながら早く打ち解けた関係になりたいからです。わたしの口調が心を緩め、ちょっとした冗談や云いまわしで笑顔が出るなら、きっとわたしが敵ではないことを感じてくれるでしょう。健診に限らず、こういう初対面の場では、まず早々に対等の”ゆるい”人間関係を作り上げなければなりません。頑なな防御を攻略するには想定を裏切る意外さも必要です。そんな人間関係さえできれば、「一番気になっているのはこれでしょうけど、これ、やっぱそろそろ治療始めたほうが無難なんじゃないですか?」と云うだけで、「そうですねぇ」と意外に簡単に陥落してくれます(相手もつわものですから、実際はどうするかわかりませんけど)。わたしたちもいろいろ工夫しているのです。

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心と体」カテゴリの記事

コメント

拍手喝采!!!

さすがジャイ先生

イョッ 心理学者様

弊社の営業マネージャーに欲しいですね。

多々、失礼の段、ご容赦くださいませ。

          無骨物のasuka3h 拝

投稿: asuka3h | 2012年2月14日 (火) 08時41分

ジャイさま

昨夕、『ちづる』
行って来ました。場違いですが、此処にご報告。

感想は…
観てよかったです。
笑って泣いて考えました。
途中何度か、スクリーンの中に飛び込んで行きたい衝動にかられましたが、そりゃあ関わりたいという勝手な、お前のエゴじゃろと戒めました(ちょっと大袈裟ですか)。

暮らしの、ほんの一部分を切り取ったに過ぎないから、これだけで家族を解釈してはいけない映画だとも感じました。
見終わったあとに、カメラが回っていない時間のほうが気になりました。そこには本当の大変さ、困り、苦しみ、楽しみ、喜びなどがあって、いわゆる生活が、あの家族の中にはずっと流れているわけで。口出しできない世界。でも出したい。やっぱりエゴがひょっこり顔を出して、もどかしい気持ちが今もあります。

いつか会える時が来るかなと、こっそり期待しつつ

ここでしっかり頑張らねばと
気合いをもらいました。


一緒に観た嫁と、
今回のお題よろしく
いろんな工夫をして関わる人が、彼女のまわりに沢山いることを願いました。

投稿: キノシタです | 2012年2月14日 (火) 16時31分

キノシタさん

残念ながら内容を共有できませんが、多くの人が見て感動してくれることを願います。

投稿: ジャイ | 2012年2月14日 (火) 20時25分

asuka3hさん

まだまだ寒いですね。

asuka3hさんにそんなにおだてらてると怖いですね(笑)

「そういう方法も有りですね」と、うちの保健師チーフが言ってましたが、その聞き流し方から考えて、「そんなの邪道よ」という心が感じ取れてちょっとさびしかったです。

投稿: ジャイ | 2012年2月14日 (火) 20時38分

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