運動は健康にいいのか?
いつも忙しく走り回っていた会社社長のIさん。運動なんかしている時間がもったいない。食事に時間をかけているヒマはない。健診なんて受けなくてもわたしはこんなに元気だ!と云っていた彼が、あるとき人間ドックを受けたのをきっかけに『健康』に目覚めました。運動は「時間がないからできない」のではなく「自分で時間を作ればいつでもできる」と言い、「まずは野菜から」などと口走り始めました。おかげで1年後の健診結果は見違える変化を示しました。相変わらずの忙しさの中で「健康を維持するために自分を変えるのは楽しい」と云っていたのに、彼はある日突然亡くなりました。原因はわかりませんでしたが、彼に関わったすべての人がショックを受けました
健診で高血圧と脂質異常症がみつかってうちのフィットネス施設に通うようになった更年期前のKさん。口数少なく、スタッフともあまり会話を交わすことのない彼女でしたが、運動など縁もなかった生活から一変して黙々とまじめにがんばった甲斐あって、3ヶ月後の検査でデータの改善がみられました。ところが、そんな彼女が、ある日の夕方に脳卒中を起こして緊急入院しました。運動から帰ってきてから「今日は少しきつい」と言って横になったまま動けなくなったのだそうです。わたしたちは病室に見舞いに行きました。付き添いの娘さんが、「最近は運動に行くのをいつも楽しみにしていたのに」と残念そうに語ってくれました。
わたしの心の中に小さな疑問と葛藤があります。「運動は本当にからだに良いのだろうか?」・・・もともと運動すると酸化ストレスである活性酸素が産生されることはわかっています。だから運動のやりすぎは逆効果であるといわれています。もしかしたら、彼らが健康に目覚めなかったら、運動もせずにぐうたらしていたら、データの改善はなかったかもしれないけれど倒れることはなかったのではないか、という葛藤です。3~6ヶ月ごとにメディカルチェックを受け、運動前後の血圧チェックや準備運動を欠かさず、運動処方自体の内容も強いものではありませんでしたから、もちろんこの結末と運動の是非をつなげて考えるのは本末転倒です。でも、少なくとも「健康のために運動をする」という行為が危険性もはらんでいることをいつも意識しておかねばならないと思います。
・・・〆切が迫られている原稿、こんな書き出しでどうかしら。
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