オブラート
「先生はこんな受診者に対して、どんな云い方で行動変容を勧めますか?あんまり上から目線で『こうしなさい!』って云ってもいけないし、かといってさりげなく伝えようとしても分かってもらえないような気がするし・・・。」
先日、スタッフのドクターからそんな質問を受けました。
「わたしはオブラートに物を包んだような云い方はしません。素直にストレートに『あなたの場合はまず○○をするのが一番重要だと思います』と伝えます」と答えました。
ここにも何度か書いてきた(「以心伝心」)ように、”行間を読む”という”粋”の世界は、俳人か文化人の道楽です。オブラートに包めば包むほど中身は食ってみないと分からなくなります。いや、食ってもなんだか分からないこともあります。オブラートに包めば、その時点で自分の伝えたいことは半分も伝わらない、と心得ています。だから、腕のいい和菓子職人でないわたしは、できるだけオブラートには包まないように心掛けています。
「オブラート」は苦かったり辛かったりしてそのままでは食べづらいものを食べやすくするために存在します。ということは、工夫して中味をもっと食べやすいものに変えてあげればオブラートなど必要なくなりはしませんか? 「あなたは今すぐこうすべきです。死んでもしりませんよ!」と云わなければいけないと思っているからオブラートが必要になるわけで、「今の状態はかなり厳しいですが、これやあれを今から始めると何とかなると思います。今が勝負だから今日から頑張ってみませんか?」と云えば、(実行するかしないかは別として)むしろ邪魔なものがない分素材をかみしめることができます。
ただし、ストレートな伝え方は、お節介ではない情熱に加えてちょっとしたスキルが必要です。そこはやっぱりマニュアルにはなり得ない”経験値”なのでしょうか。
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コメント
おはようございます。
お釈迦様曰く「人を見て法を説け」だ、そうです。
(解説:その人に合った(理解できる)方法、手段で説明しなさい!)ナンチャッテ。
先生の場合は「人を診て法を説け」ですね。
お釈迦様の代理 asuka3h 拝
投稿: asuka3h | 2012年5月16日 (水) 08時49分
asuka3hさん
「云うは易し、行うは難し」ですね。学びの日々です。
投稿: ジャイ | 2012年5月16日 (水) 19時46分