CKDの立ち位置
CareNet.comには、
という記事もありました。Lancetオンライン版(2012.6.18)に報告されたものです。慢性腎臓病(CKD)が、糖尿病よりも心筋梗塞発症に与える影響が大きい、という結果を得たというのです。
CKDの基準になる糸球体濾過量(GFR)は本来24時間の尿を溜めて調べますが、それを簡単な計算式に数値を入れて算出する推算式(eGFR)については、臨床現場の先生を中心に強い批判が発せられてきました。「特に病気でもない値が独り歩きして、患者さんが意味もなく悩む」というものです。「このままでは透析になりますよ」と云われてうつ状態になったと嘆いた健診受診者もいます。「計算式は本当の値よりかなり低く(悪く)なる傾向があるから、濡れ衣のニセ病人を作り出す。だからこの値は存在価値がない!」と云い張る医療者はたくさんいますが、わたしはそうは思いません。この値は単なる脅しです。腎臓には治療薬がない。今の生活を続けたら悪化するぞ!そうなりたくなかったら、カロリーを取りすぎず、塩分を取りすぎず、酒を飲みすぎず、たばこを吸わずに、タンパク質とお水はほどほどに・・・、という概念です。”紳士淑女たれ”と云う、ただそれだけのことです。でも、そこで生活を見直すかどうかが人生を変える可能性が高い、ということを今回の報告は示しているのです。
問題は、他の病気の指標と同じです。警鐘を鳴らし脅しをかけている対象になる連中(一番生活を変えてほしい人たち)は「そんなもの意味がない」と嘯(うそぶ)いて聞く耳を持たず、一方で、もう十分管理できていてこれ以上する必要はないと思われる人たちだけが恐々とするわけです。このディレンマを解決できるのは、わたしたち医療者だけです。きちんとした事実を分かりやすく説明してあげられるかどうか、それによって相手の人生が変わってしまうのだという責任感をもたねばなりません。
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