安静時心電図
「『心電図の説明だけ聞いて帰りたい』という受診者がいるのですが、連れてきていいですか?」
先日、アテンダントさんからそんな相談を受けました。あわててその方の安静時心電図をディスプレイに出してみましたが、特に何の変哲もない正常波形の心電図でした。問診内容を確認しても特に心臓を気にしているようなことは書いていません。「聞きたいのは本当に心電図のことで良いの?」と怪訝な顔をしながら、その初老の男性受診者を待ちました。
「えーと、心臓について何かご心配なことがあるのですか?」・・・探りを入れるような質問をしたところ、「今度山登りをするので、山登りをしても大丈夫な心臓かどうかを知りたいと思いまして」と。やっと合点がいきました。
ただ・・・「きょうのあなたの安静時心電図はまったく正常です。でも、これを見ただけでは、あなたの心臓が山登りをして問題ないかどうかを判断することはできません。安静時心電図には心臓の機能の情報はほとんどない、と云っても過言ではないのです。山登りやマラソンなどをしても問題ないか判断するためには、運動負荷心電図検査や心エコー検査をしてみないことにはわかりません」・・・わたしは素直にそう説明しました。
ちょっと胸がおかしくても、健診で心臓に異常がなかったから大丈夫だろうと病院を受診せずに様子を見る人が居ますが、大きな間違いです。狭心症発作を起こす人も、不整脈発作を起こす人も、安静時心電図には異常がないのが当たり前です。聴診や胸写も含めて、普通の健診では心機能はほとんどわからないと思ってください。
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