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NASH

この連載コラムはあと3回で終わります。今回はNASHについてまとめました。

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脂肪肝は単なる貯えにあらず~NASHへの恐怖

今回は、意外に多くの人が持っている『脂肪肝』について書いてみます。30~40歳代のお兄さん方の中には、中性脂肪や血糖の異常を指摘されても聞き流すくせに『脂肪肝』という言葉には異常に反応する人がいます。まあ、切り口が何であれ、生活を見直すきっかけになるのならそれでも良いか、と思っています。

●脂肪肝はフォアグラ

食事で取った脂肪は小腸で脂肪酸に分解されて肝臓に送られます。糖質やたんぱく質もグルコースを経て脂肪酸になります。つまり、消費されずに余ったエネルギーは最終的に“脂肪”の形に落ち着きます。“脂肪”にするのが一番効率が良い(小さい容積にたくさんのエネルギーを詰め込める)からです。そしてそれが筋肉や肝細胞の中に貯蔵されます。『脂肪肝』は“霜降り”ではありません。“脂肪が肝臓の周りに巻いている状態”とも違います。一言でいえば“フォアグラ”。肝細胞の各々の中に脂肪滴が押し込められている状態です。脂肪肝に対峙するにあたって、この“フォアグラ”のイメージをしっかり持つことは大切なことです。なお、脂肪肝になっただけでは採血データに大きな変化はないので、腹部エコー検査を行わない簡単な健診(労安法健診などで脂肪肝の有無は語れません。

●お酒に関連しない脂肪肝の行く末

酒の飲み過ぎによる肝障害と違い、非アルコール性の脂肪肝は心配ないと考えられていました。ところが、そんな脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患=NAFLD)でも酸化ストレスなどにより肝細胞に炎症が起きて傷害を受けると、肝炎から肝硬変や肝がんになる人がいることがわかってきました。これを『非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と呼びます。メタボリックシンドロームの要因(肥満、糖代謝異常、脂質異常、高血圧)によりNAFLDは増えています(約1000万人)が、その1~2;割がNASHになり、NASHの20~30%が10年後には肝硬変や肝がんに進行します。「ヤバいっすねー!」とか言いながらも生活習慣を変えられない方にとって、これはショッキングなデータです。日本人のアルコール性肝障害は多くありません。必須条件である『常習飲酒者』とは、日本酒換算で毎日3合以上(女性ではその2/3)とか平均5合×5年以上とかであり、もともと酒の強くない日本人には大変な量なのです(日本酒1合に相当するのはビールなら中ビン1本、25%焼酎ならストレートで0.6合、ウイスキーでダブル1杯)。つまり日本人の肝障害の多くがNAFLDです。また、その成り立ちを考えても容易に想像できるように、NAFLDは生活習慣病の合併頻度が高く(高中性脂肪血症が約60%、低HDLコレステロール血症や高血圧症、高血糖が約30;%に合併)、脂肪肝の比率は肥満度に正比例します。つまり、NAFLDはメタボリックシンドロームの肝臓における表現型だと言えます。

●せっかく倉庫に貯蔵したのだから・・・

脂肪肝』は、すぐにエネルギーを使えるように一時保存しているだけだから、動けば簡単に出ていきますし食べれば簡単に入ってきます。いざという時(何も食えなくなった時)のためにエネルギーをマジメに貯蔵しているのに“いざ”に出会うことなく倉庫の隅から腐り始めている状態がNAFLDです。「毎日ジョギングを始めて体重も2~3kg減ったのに、脂肪肝はちっとも良くならない」という人が居ます。「せっかく地道に貯えたお宝を奪われてはたまらない!」とばかりに、貯める力をさらにパワーアップさせた結果です。だからやせた人でも、ダイエットの仕方が悪いと脂肪肝になります。

食後に血糖が上がったとき、とりあえず糖質を肝臓に仕舞い込もうとするものの、肝細胞が脂肪で一杯になっていると本来の仕事ができずに再び血中に吐き出し、それで血糖値が上がるとインスリン抵抗性が増してさらに脂肪肝になる・・・この悪循環をどこかで断ち切らねば埒があきません。でも、することは決まっています。これまで毎回書いてきたこと、“無駄に動く、無駄に食わない”に勝る方法はありません。特に肝細胞内の脂肪を減らすには食事療法は必須で、それによって25~40%低下させることができるそうです。「運動するから好きなお肉とお酒 は許してください!」と懇願されても、それはちょっとできない相談のようです。

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