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2012年12月

総括

2012年が終わります。

いつもさほど感慨深くなることもなく、夕方まで大掃除を続けて、単なる夜明けを日本中のイベントの中で通り越すのですが、今年は何となく違います。

いろんな意味で、今年が「良い年であった」とココロから思える幸せを感じています。

今年は良くやった。でも来年はもっときびしいぞ!・・・そう云われ続けてもうンー十年。良いんです。あまり向上はしていませんが、ただただたくましくなりました。忘年会のときに「できる男は、できるがためにギリギリまでとりかからない」というはなしをスタッフとしながら、たしかにいつもズボラな突貫工事で、しかもフットワークが重くなったなあと自己解析しながらも、これはつまり、わたしが「できる男」であることの証なのかな、などとほくそ笑む。

こんな呑気なことを思いながら大晦日を迎えられることに、感謝。

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トリニータに学ぶ

職場の忘年会で、〆のあいさつを急に頼まれました。

我らが大分トリニータが、おかげさまでJ1に昇格しました。ありがとうございます。あのバカやろうでへたくそなチームがベタなドラマ以上の劇的逆転昇格できたのは、最後まで夢をあきらめなかったことです。諦めずに頑張れば必ず夢は達成できることを学びました。でも、実は、大分トリニータはただ頑張っただけでは昇格できませんでした。秋までに完済しなければならない3億円の借金があったからです。それを返すために、サポーターだけではなく多くの大分県民が募金をしました、そこで集まった金がなんと1億2000万円! さらに多くの地元企業が残りを肩代わりし、見事にノルマをクリアしました。もの凄いことだと思いませんか。あんな弱小チームを縁もゆかりもない人たちが身銭を切って守ってくれたのです。わたしはこの話をすると必ず泣いてしまいます。わたしたちの施設も、大きな夢があります。大変な問題ばかり山積みですが、諦めずに頑張れば乗り越えられると信じて頑張りましょう。そしてそれだけではなく、ココロからサポートしてくれる、毎年選んでもらえる魅力的な施設になりましょう。

ということを話そうとしていたんですが・・・なんせもの凄く酔っ払ってましたからねぇ。ほとんど何も話せませんでした。それでは、一本締めを・・・よーーー、はいっ!

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判定

「それ、判定はどうしても変えらないのですか?」

胃カメラの結果、同じ萎縮性胃炎の診断名なのに、昨年までは「軽度異常」判定だったのが今年は「経過観察」に変わっていました。うちの施設では、年齢相応の萎縮を「軽度異常」、ガンや潰瘍が起こりそうな進行性萎縮(ピロリ菌が関連していそうな)は「経過観察」にする決め事がありますが、最終的には検査施行医の主観がモノを云うところがあります。この方の場合も、画像的には今までとあまり変わっていないように思えましたので、「あまり心配しなくても大丈夫だと思いますよ。結局『胃が少し歳を取ったから、胃をいたわってあげてください』という意味では大差ありませんから・・・」と説明しました。それを聞いた彼は、「だったら変えてほしいですね」・・・たかが判定をひとつ強くするかしないかでそんなにこだわらなくても、と思うのだけれど、彼の口調は思った以上に強いものでした。

実は、健診や人間ドックでの「経過観察」の判定以上は、病名として表に出ます。たとえばこれから生命保険に入ろうと思ったとき、その病名が場合によっては大きな障害になる可能性があります。その病名のために保険に入れなかったり条件付きになったり・・・。検査をした人間の主観でつけた気まぐれな判定がそんな重大な境目になることを、医者側はわかっているだろうか?

彼のことばを聞きながら、そんなことを思いました。

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5周年

ことしも、開設記念日がきました。

 丸5年が過ぎて、今日から6年目に突入です。

  続けてていいのかな、意味があるのかな、と思いながら。

とりあえず、今日は開設記念日。

だから、おやすみにしま~す。

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オトコの乳首

「診察をするので前を開けてください。」

先日、二十代の若い男性にそう云って聴診器を構えたら、躊躇してなかなかアンダーシャツを上げてくれませんでした。下を向きながらとても恥ずかしそうに上げたシャツの下から、ピンクの乳首が見えました。

たしかに、男は人前で乳首を見せても平気なのが当たり前、と思い込んでいますが、一体どこで男の乳首と女の乳首の価値観の差が生じてきたのだろうか、と考えると、よく分からなくなってきました。女性にとっての乳房や乳首は女性の象徴であり「大事なところ」だから子どものころから隠すように躾けられますし、膨らみが出始めたころから「はずかしい」感情が生じるのは性の遺伝子だと思います。では、なぜ男はハダカでいてもはずかしくないのか?女性と違って、コスメチックにもファンクショナルにも存在の意義がないと思い込まれているからか?「はずかしくないよ、そんなもの!」と教育されているからしょうがないけど、ホントはやはりはずかしいのが当たり前なのではないのかしら?

よく考えてみると、最近の男の子は、子どものころの水泳の授業を除くと、部活少年でもない限り人前でハダカになる機会はあまりありません。男の子なんだからヒトに乳首を見せるのをはずかしがるのは変だぞ!と思っているのは、もしやわたしたちのようなオジサン・オバサンだけ?

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一言多い。

「よし、化粧済んだよ! どう、これ?」
  と、妻が意見を求めるので、
「頬っぺたの化粧のノリがちょっと悪いかな」
  と素直に答えたら、
  まあ、しこたま叱られた。

いつもより20分早く診察室に行っていたら、毎朝こっそり各部屋のパソコンのスイッチを入れて回っていた某氏と出くわしてしまった。
「あら、珍しく早いんですね」
  と云われた。何となく、カチンと来た。

他意のない、どうということもない(と云う方は思っている)コトバ。
場の空気を瞬時に違うものにしてしまうから、とても重要。

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もったいない

昨夜は、スーパーで『青ナマコ』を買いました。『赤ナマコ』もありましたが、『青ナマコ』の方が高かったから、ちょっと贅沢をしよう、ということで。これで「ナマコ酢」を作ってもらいました。コシがあって噛みごたえがあって、とても美味しい料理になりました。おいしい、おいしい、と云って食べていたら、あろうことか1個がそのままスルスルっと喉を通り抜けてしまいました。

「うわあ、もったいない!」

思わず叫んでしまいました。歯ごたえとそのときの触感や味が醍醐味でナマコ酢を食っているのだから、噛まずに飲み込んでしまったら食べている意味がないと思ったのです。不思議なもので、じゃあ日頃の食事でそんなに噛んでいるのか?というとまったく自信がありません。なのにそのことを「もったいない」と感じたことはほとんどなかったように思います。

モノを食べるとき、噛まないで飲みこんだらもったいない! そう思いながらありがたく食べていけると良いと思いました。

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「やせりゃいいんですよ」

「わかってるんです。やせりゃ治るんです。7、8年前にも高血圧になったことがあるけど頑張って減量したら血圧が正常になったんです。」・・・自信に満ちた声で、わたしと同い歳の男性がそう云いました。「高血圧を指摘されているが現在未治療」と問診を取ったナースがメモしていたのはこのことなんだな、と分かりました。

「あ、それ、違いますよ。おそらくもう、その理論は通用しないと思います。」・・・ことを荒立てる気もないですが、わたしは静かに否定してあげました。決して太っているわけではないしメタボのお腹でもないこの方にとって”やせる”は免罪符になっていません。若いころは運動や食事の減量がそのまま運動療法と食事療法になってくれたから、体重が減るのと血圧が下がるのとが同時に起きたのかもしれませんが、やせたから血圧が下がったのではありません。もちろんこれからも減塩は大きな成果をもたらすでしょうし、有酸素運動はNO生成を通して血管の弾力性を復活させてくれるかもしれませんから頑張っていただきたい。ですが、おそらくそれだけでは下がらないと思います。

とか云ってないで、「やせりゃ治る」って思うなら早くやせなさいよ!やせて証明してみなさいよ!なんて野暮なこと、わたしはよう云いません。「今は仕事が忙しいからできない」と彼は自分から切りだしたのです。どこか「高血圧」自体が脇に追いやられてしまってますが、”今”が問題なのだから、忙しくなくなったらやせる?わたしはかまいませんけど、ご自分のカラダはどうかしら? 何よりもその前に、今の血圧は値そのものが『運動禁忌』ですから、このままじゃ運動できませんけどね。

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文章力

毎年、施設の業績を示す『年報』を発行します。今年もその作成作業が始まり、これまでの”がん”の解析だけではなく”生活習慣病”のデータ分析も加わることになりました。スタッフの皆さんが仕事の合間を縫って日夜がんばっています。そのチェックと推敲・校正をするのがわたしの仕事なのですが、この1ヶ月、毎日毎晩その仕事だけでヘトヘトになりました。

最近の若い方々は、表現力が、ない。データ分析力はすばらしいけれどそれを文章にして他人に伝える力が弱い、と痛感します。何も知らない人が読んでわかってもらえる、その前に最後まで読んでもらえる文章を書くには、当然技術が要ります。例えば、「男の方が女より多い」と書くのと「女の方が男より少ない」と書くのがどっちでも同じでしょ!と思っているようでは、どうしようもありません。何を伝えたいのか、何を強調したいのか、まずはデータからストーリーを組み立てないと。

そして、なぜだか知りませんが、みんな選ぶことばが難しい。公文書にありがちな、できるだけ硬い漢字でがっちり固めて、なんとなくわかるけど曖昧で実はよくわからない、だからあまり突っ込まれない、みたいな表現・・・彼らの報告書や学会発表スライドでよくこの表現を見ますから、これが業界の習慣なのでしょうか? 字数制限があるわけじゃなし、読むのは一般のヒトなんだから、もっと平易に表現し直したら?とアドバイスすると・・・どうしていいかわからなくなるみたいです。

今回は、三度、四度以上に書き直させたものばかりでしたが、何とか出来上がりそうです。是非今回の文章書きがいい経験になってもらえるといいなと思います。

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空気感の食い違い

私が大分で贔屓のサッカーチームの応援をして帰ってきたとき、先日の国立競技場での劇的な勝利に酔いしれて東京から帰ったとき、あるいは気の置けない仲間との楽しい宴会から帰ってきたとき、妻はわたしが期待しているのとはちょっと違う空気感を漂わせています。「試合どうだった?」「宴会、楽しかった?」・・・興味がなくてもひと言そう聞いてくれたらいいのにと思いながら、いつの頃からか自分の世界の感動の空気感を家の中には持ち込まないように心掛けるようになりました。

でも、逆のシチュエーションを考えてみたら、自分も彼女に同じようなことをしていることに気づきました。彼女が韓流のコンサートから帰ってきたり、ひとりゴルフに興じて帰ってきたとき、彼女が興奮さめやらない空気感をプンプン漂わせて、「楽しかったよ~。ちょっと聞いてよ~!」ビームをまき散らしてくるので、「意地でもあんたの期待している話題振りはしてやらないぞ!」と思ってしまうわたしがいるのです。

そのギャップが大きいほど、互いの空気感の違いが希釈されてしまうまでに時間がかかります。「別にいいんだけどね」と云いながら、結局、互いに嫉妬しているのでしょうね。あー大人げない。

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心電図判読中に

毎日、ドック受診者の安静時心電図の判読をします。午前中のうちにだいたい150~160枚程度です。大量で大変に見えますが、専門医であれば、そして慣れてしまえばそう大した仕事ではありません。

ただ、ひとり黙々と読んでいるとアタマが疲れてきます。眠気も襲ってきます。以前は紙ベース(実際に専用の用紙に印字された心電図を判読する)の作業でしたが、最近はオンラインで結ばれたパソコンの画面上での判読作業です。紙のときには「眠くなる」なんてことはほとんどありませんし、作業自体が流れ作業のようにサクサクと進められましたが、静かな診察室でひとり、1枚の心電図に対して何度もクリックを繰り返す作業は殊の外時間がかかります。また、画面を見ながらの単調なクリック音が心地よい眠気を誘って、幾度となく意識を失います。

毎日がそんな戦いの日々です。ところが、毎日同じように同じ数だけの心電図を判読しているにも関わらず、作業がはかどる日と遅々として進まない日があります。黙々と読んでいる途中にふと残り枚数の表示を見て、「え、もうこんなに進んだの?」と思うときと「かなり読んだつもりなのにまだこれだけしか終わってないの?」と思うとき。実際にかかっている時間はほとんど変わりません。体調もおそらくほとんど同じだし、眠たさ加減も大差ないのに、です。誰にも云いませんが、それは素直な感想で、後者の場合は何度もため息をついてみたり、席を外してお茶でも飲みに行ってみたりして何とかココロを奮い立たせるわけです。

何が、ちがうのかなあ。 昨日も、判読作業の最中にそんなことを考えていました。不謹慎きわまりない懺悔です。

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制服

秋から職場のバックヤードで働く事務員の制服が廃止になりました。受診者の方々の目に触れることなく事務仕事をする(予約電話の対応や書類・郵送物の整備などをする)人にまで一律に制服を義務付けるのは非効率で経費がもったいないからです。

看護師さんのナースキャップが廃止になってもう久しいです。ナースキャップと云えば、看護学校生が一人前の看護師さんになるべく実習に出るときの戴帽式・・・崇高な使命を担ってこれから一生を奉仕にささげるナイチンゲール精神の象徴です。でも、確かに実務には何のメリットもなく、むしろ作業のジャマ。男性ナースには無縁のものでもあり、機能性を重視するなら「不必要」の烙印は簡単に押されそう。

ナースの制服と云えば、最初にズボンタイプの制服を見たのは出向先の山の中の病院でした。防寒のためだとはいえ、さすがに野暮ったいなと密かに笑っていたら、瞬く間に日本中に広がりまして、特にうちのような救急病院では「スカートなんか穿いてて救急医療ができるか!」という感じです。今やスカートタイプの制服の方がかえって野暮ったく見えたりします。

制服の在り方はどんどん変わってきました。機能性を重視し、無駄を省く考え方はきっとアメリカから来た合理主義の影響でしょう。秩序と礼を重んじた日本古来の思想、あるいはヨーロッパの古くからの思想にはなかったものです。無駄なく機能的なので、これらの規則の改正は賛成ではありますが、機能と無駄省きを最優先にしすぎて、礼節までシェイプアップのし過ぎにならないように注意したいものです。

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心の張り

友人のお父様が亡くなりました。

長い間、闘病を続けていました。何度も心臓発作を起こして生死の境目をさまよいながら、徐々に心機能と腎機能が低下していきました。何度も危篤状態を乗り切っては、病院嫌いなので自宅に帰ってきました。「生に対する執着が異常に強いのよ。だからなかなかくたばらないわ!」・・・彼女は、そう云って笑っていました。なのに、海外赴任していた長男が帰国して3日目にあっけなく他界しました。

「会えて良かったね」と云ったら「いや、会ったのがいけなかったのかも」と、彼女は答えました。顔色が悪いので酸素をさせようとしたら、お父さんが初めて拒否したのです。「してもどうせ良くならないから、したくない」と云って・・・。

長男が海外赴任の任を解かれて帰ってきた。息子に会うまでは、と強い生への執着で何度も訪れた危篤状態を乗り切ったと云うのに、あまりにもあっけなく逝ってしまった。娘はそんな印象を抱いています。「兄が帰ってきてから、急に父の執着が消えて行ったのがわかってとても心配だった」と。

兄が帰ってきたことが、父にとって良かったのだろうかと悩む彼女に云ってあげたい。良かったさ。もはやとっくに途絶えてしまっていたはずの寿命を生きながらえさせたのは、家長として家を守ってきたお父さんがその仕事を長男にバトンタッチしたかったのだろうから。苦しかっただろうお父さんがやっと楽になれた瞬間なのだから、と。

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日の出

日曜日に久しぶりに朝風呂に入りました。前夜の忘年会で痛飲して酔っ払い過ぎたので風呂に入れなかったのです。

朝の6時半頃。冬至目前の九州ではまだ夜明け前です。風呂の窓越しに真っ暗な空をぼーっと眺めながら湯船に浸かっていました。まだ少しだけ酒が残った感じ。静かに目を閉じ、前夜の楽しかった宴のことや師走の日曜に行う予定のあれやこれやを思索したあと、ふと目を開けたら辺りはすっかり明るくなっていて、ギョッとしました。目をつぶる前と目を開けた後と、目の前の風景が一変していたからです。

日の出、日の入りは、理論的にはフェイドイン、フェイドアウトですが、実際には、ヌルッと明るくなって、ヌルッと暗くなります。その変化は決して直線的ではないことを、このときに再認識しました。人生の転機も同じように、フェイドイン、フェイドアウトではなくて、いつでもヌルッと暗転、ヌルッと明転・・・呑気に構えていては付いていけなくなることは、人生には少なくありません。

油断禁物です。

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おのろけ

2月に急逝した大学の先輩Kさんの奥さんにお会いしました。お二人とも、大学時代のクラブの先輩です。

「へへへ、おとうさんはね」「うちのおとうさんときたらね」・・・お会いして1時間ちょっとの間に何回そう云ったでしょうか。へへへ、と笑いながらもKさんの思い出をたくさん語ってくれました。何しろ初めて会ったのが中学1年生で、最初からお互いが好きだったけどきちんと付き合い始めたのは中学3年のときで・・・って、どっかの青春マンガのようなお二人は、途中に青春マンガでも出てこないような運命的なエピソードをいくつも織り交ぜながら、もうすぐ半世紀の歴史になろうとしていたのです。

娘さんが生まれたときから「おれはみんなを守らなければならないから」と酒を絶っていたのに、あの日、信頼する後輩と「今夜は酒を飲もう」と云い出したこと。「病院に行くと病人にされるから絶対行かない」と云っていたのにこっそり人間ドックのパンフレットをもらってきていたこと・・・知れば知るほど、覚悟の上の寿命だったのに間違いないと思いました。

だからその後ずっと奥さんや娘さんの後ろで守っているだろうことが、奥さんの表情や柔かい言葉から容易に想像できます。どうでしょう。三回忌が終わるころ、Kさんは「もう安心だからそろそろ行くわ」と昇天することができるでしょうか?「おい、もうそろそろこっちにこんか」って、甘ったれて奥さんを引っ張ったりはせんでくださいよ。あんなに強くてしっかり者の奥さんなのに、Kさんにだけは逆らわないんだから・・・。

もうすぐ、そんな2012年も終わろうとしています。 改めて、合掌。

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判定区分

約1年前に人間ドック学会の会告として『判定区分の改定について』というお達しが届いていました。全国の人間ドック実施機関で、判定の統一を図りましょうということで、「各施設におかれましては、遅滞なく改変されるようお願いいたします」と、間接的な圧力もかけられていました。その中で私が気になったのは、「心拍数101以上と39以下は精密検査指示」というやつです。

人間ドックの診察で、「脈拍数101以上と39以下」はあまり珍しくない所見だと感じています。「病院や健診に来るといつもドキドキしてしまうんです」という人は老若男女を問わずたくさんいますし、胃透視検査の後で診察すれば検査薬の影響で心拍数は著しく増加します。方や、マラソンをする方では脈拍数40以下は珍しいことではありません。「脈拍数」ではなく「心拍数」と書いてあるのだからこれは心電図の判定なのだと思いますが、何の症状もなく元気いっぱいの方の心電図が洞性徐脈や洞性頻脈だったとして、私はそれに精密検査指示を出す気はありません。云いたいことはわかります。洞性頻脈の方の中には高度の貧血や甲状腺機能亢進症の方も隠れているでしょうし、高度の洞性徐脈の中には無症候性の高度冠動脈病変や洞機能不全症候群が隠れていることがあるから、念のために外来でチェックをすべきだと云うのでしょう。それで問題なかったらそれで良いじゃないか、と。わたしが臨床現場から健診の世界に移ってきたときもそう思っていました。でも、相手は何らかの症状があって病院受診した患者さんではありません。「念のため」だけで仕事を休み、安くない医療費を払って一日を潰させるわけです。毎年同じ所見のそんな心電図の方に、杓子定規に「これはとにかく精査」をさせるとしたら、わたしはずっと良心の呵責にさいなまれることになるでしょう。

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バナナ

「バナナ買ってきたから、あしたから毎朝1本食べて行ってね!」

突然、妻がバナナを買ってきました。「バナナの臭いを嗅ぐだけで吐き気がする」と云って、スーパーでバナナ売り場を避けて通るヒトなのに、何でまた?

「人生で成功する人は皆、朝早くに朝日を浴びて必ず朝ごはんを食べている。それはセロトニンが大量に分泌されているからだ、ってTVでやっていたからよ。バナナでも効果があるっていうから、大嫌いなのに、あなたのために買ってきたのよ。ちゃんと食べてよ!」って、おいおい、ありがたい話だけど、それはちょっと有難迷惑なんじゃないか?

「バナナ食べるくらいなら朝ごはん食べるよ」「ダメよ、ご飯食べられると余分に炊かないといけないんだから」「意図的に食べないんだから放っといてくれんか」「せっかく買ってきたんだからちゃんと食べてよ!」・・・どうも埒が明かないので話をやめました。

「朝日をきちんと浴びる」「ごはんをよく噛んで食べる」がセロトニンを多く出す条件だということくらい知っています。でもわたしは意図的に食べないのです。「朝日を浴びて朝食を取る」の対局は「朝遅く起きて朝ごはんを食べる時間がない」だと皆が思っています。それが悪いことは分かっていますが、「早起きして、あえて食べずに出勤」でどの程度変わるのか?の検証はあるのかしら? もともと「絶食」=「朝寝坊」が世間の概念であって、だから早寝早起きしてちゃんと朝食を食べましょう!が理想だと思っているんだろうけれど、わたしみたいな天邪鬼は世にたくさん居るのだということも忘れないで欲しいものです。

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続・メガネ

ここ数日、朝から結果説明の仕事をしているとだんだん目が疲れてきて、充血はしていないけれど芯から痛くて辛くなりました。だから、昨日は昼休みにコンタクトレンズを外して、夏に新調したウルトラマン風の遠近両用メガネを職場で初めて掛けました。

すれ違う人、すれ違う人、例外なく通り過ぎようとしてわたしの顔を二度見。そしてアタマをひねりながら離れて行きます。離れ際に、何人かが、「どこかがいつもの先生と違うんだけど・・・」とつぶやきました。そして、また誰かが声を上げました。「そうか、メガネだ! メガネがいつものと違うんだ!」って・・・。

わしゃ、日頃メガネなんか掛けてないわ! 顔のど真ん中に鎮座して表情の大部分を構成しているのがメガネ。そんなメガネを日頃掛けたこともないわたしが掛けている、ということ自体に気付かないものなんだなあ。ヒトの顔の印象なんてこんなにいい加減なものなのだということを痛感したエピソードでした。

それにしてもこれ、いつ見ても存在感のあるメガネだこと。

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メガネ

最近のメガネはとってもオシャレで存在感がありますよね。老若男女を問わずカッコよく楽しんでいる感じで、かく云うわたしも今年になってウルトラマンみたいな銀色フレームの遠近両用メガネを作りました。

むかしはどちらかというと存在感を消す細いメガネフレームが主流でしたが、最近は太いフレームがメインのようで、人間ドック受診者の皆さんも、そんなメガネのひとがたくさん来られます。それを見ながら痛感するのは、「メガネはひとの表情をまったく違うものに変える」ということ。大きく太いメガネの奥にすごく厳しい表情や無表情の目が見えると、「何か悪いことでもしたかな」と診察しながらついオドオドしてしまうわたし。でも最後に、「それではメガネを外してください」と云って、その仮面をはぎ取ったとき、ホッとするのです。なぜなら、メガネの向こう側に現れる本当の目は、みんながみんなとても優しくて、すごく温和な表情に変わるからです。

これがオシャレなのかもしれないけれど、本当の顔の方がとても魅力的だなと感じることが多い、というのがわたしの印象です。とてもやり手のオフィスレディやアタマのキレるインテリを装うのもわかりますが・・・でも、わたしは生のままの顔の方が全然素敵だと思います。

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空腹

間食に手を出さないダイエットを開始して1週間、やっと昨日あたりから当たり前にお腹が空くようになってきました。わたしのカラダの中の門番たちは、「ご主人のご乱心はいつものこと。口先だけだから放っておけばすぐに元に戻るよ」と、よほど高をくくっていたようです。今回のわたしの決意は、まちっと強いんだよ。

朝から空腹で出勤し、朝の9~10時ころに空腹のピークがきて、そしてお昼前には大したことなくなるから小さなお弁当で乗り切る。食抜き後の次の食事はエネルギー吸収の率が上がる(”何たら”効果というらしいが名前を忘れた)から、食後高血糖を起こさない食べ方を遵守。その後、帰宅するまで何かを口にするチャンスを与えない(売店や自販機の前を通らない)ようにして、帰ったら小一時間のワンの散歩をしてから夕食の準備を待つ。待つ間に手を出していたお菓子は無視し、酒はコップ1杯か徳利1本かビール350mlだけ飲んだらお茶に替える。夕食後は良い頃合いにコーヒーを入れ、次の手持ち無沙汰時刻になったら風呂に入る。完璧! ちゃ~んとやれてますよ~。ま、10年前ほどのダイエット効果はないでしょう。基礎代謝自体が落ちているから。フィットネスジムの筋トレができないのは痛い。でも、いいんだ。アンパンマンを脱皮して去年まで穿いていたゴルフズボンのボタンさえ留まれば満足なのさ。

おい、門番たちよ。そろそろ目覚めてくれ! 通勤中、信号停車している最中にふっとめまいがすることがあるんだよ。何しろ小脳梗塞持ちのアタマだから早く対処しないと危ないと思うよ。ご主人、かなりマジみたいだから、エネルギー蓄積の定期預金を早々に切り崩さないとヤバいと思うよ。 

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大脳側性化/専門化

ケアネットからの話題をもうひとつ。

脱毛症治療薬による男性機能への影響と利き手の関係

内容は、抗男性ホルモン剤である脱毛治療薬が性機能に与える影響が利き手によって違う、というもの(BJU International誌オンライン版 2012.11.16号)で、性機能も大脳の仕事の左右分担に従っているということを示した報告のようです。大脳半球には大脳側性化/専門化という機能があり(わたしたちは「大脳半球優位性」と習った記憶があるのですがあれとは違うのでしょうか)、右半球と左半球では脳の司っている仕事が違うというのは多くの人が知っていることでしょう。だから脳梗塞を起こすとそのやられた部位に対応する場所だけがやられて代償が効かない機能がある(ことばがしゃべれなくなるとか目が見えなくなるとか)のですが、どうも男性の性機能も優位性に差があるようだということを云っています。

結果として、「右利きの男性は、影響なしあるいは性機能低下を報告し、一方で、左利きの男性は主として影響なしか性機能改善を報告した」と書かれています。でも、その後の考察文が何とも曖昧で概念的過ぎてよくわかりません。つまり、「男性ホルモン抑制の影響が出たのは右利きの男性だから、男性の性機能の中枢は左半球にありそうだ」ということかしら?よくわからないけれど、性機能の中枢が半球優位性に支配されているということと、右利きの男性は発毛剤を使うとインポテンツになりやすいから注意しろ(左利きの男性は大丈夫)という結論でいいのでしょうか。

だからなに?って云われると、なんとも・・・?ですが。

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まだ変わらないのか

先日のケアネットの記事、<肉食増加、野菜は減少=半数に「健康の不安」−厚労省調査>を読みながら、ちょっと意外だなと思いました。

12月6日に厚生労働省が公表した2011年の「国民健康・栄養調査」によると、日本人は10年前に比べ、魚や野菜の摂取量が減り、肉食が増えている、というのです。手軽で安くて外食で、の風潮が続いていることは分かりますが、その前の10~20年のバブル期に比べたら日本人の健康意識は格段に増していると思いますから、当然肉の摂取が減って魚や野菜の摂取がわずかでも増えてきているものと思い込んでいたからです。確かに、最近の若い子たちは最初から「野菜は食べたことがない」と言い切る子が多い印象はあります。きっとその子たちの親が「野菜は草」という感覚でキライなものを食べなかったり、あるいは給食を食べ切るのが義務でなくなったことなどが影響しているのかもしれません。

少なくとも日本人は、日本古来の食習慣に戻すことがベスト。そう信じているわたしですが、この子たちが大人になったころ、少しでも舌の感覚が変わり、次の5年、10年後に少しでも食傾向が変わっていることを祈るのみです。ただ、食習慣は最初が肝心・・・三つ子の魂、百まで・・・なので、食育のシステムを根本から見直さなければ何も変わらないだろうという気もします。

子どものころから”草”を食べるのが当たり前、と教育していただいたわたしの両親と祖母に心から感謝します。

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コーヒー

最近、夕食の後にドリップパックのコーヒーを入れて飲むのがわたしの習慣になっています。特別にコーヒーが好きというのではなく、口さびしくてつい要らないものを食べてしまうのを避けるためですけれど・・・。

そんなコーヒーについて、先日配信されたCareNetに日本人労働者の研究として、<コーヒー摂取量が多い人はアディポネクチンも多い>という報告が出ていました。コーヒー摂取量がアディポネクチンと正の相関、レプチンと負の相関があったという名古屋大学の報告(Nutrition & diabetes,2012.4)ですが、この内容は2年前に<愛知職域コホート研究成果>として発表されていたのと同じ内容のような気がします。いずれにせよ、コーヒーの成分が生活習慣病の予防効果を高めていることは事実のようです。

そういえば、高尿酸血症治療ガイドライン2010に、「コーヒー摂取量が多い,ランニング距離が長い,適度な運動を日常的に行う集団は痛風になりにくい」というエビデンスが載っています。先日の職場の勉強会で、「なぜ、コーヒーを飲むと痛風になりにくいのですか?」という質問がありましたが、それにちゃんと答えられる人がいませんでした。カフェイン抜きのコーヒーでも痛風発症リスクを下げるらしいのですが、あれも、このアディポサイトカインの作用が関係しているのでしょうか?

ま、だからといって、コーヒーをガバガバ飲むことを薦めるのもどうかと思うので、一応、雑学として覚えておきましょうか。

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ICLS

一週間前にICLSコースの講習会を受講して、無事に資格認定をいただきました。

ICLSとは、<Immediate Cardiac Life Support>の略で、突然の心停止に対する最初の10分間の対応と適切なチーム蘇生を習得することを目標とした、実技実習中心の講習会です。わたしは、日本救急医学会が認定しているICLSコースを受講しました。

心臓マッサージなんてもう10年以上ぶりでした。救急蘇生法は科学的なデータに基づいて年々変わってきています。蘇生の手順や蘇生後の処置法まで、少しずつ変わってきていますので、昔取った杵柄だとはいえ、ほとんど初心者として講習に参加させてもらいました。ひとつひとつの実習が緊張しましたし、ドキドキしました。最後の実地試験ではほとんどアタマが真っ白になりました。でも、正直な気持ちを云えばちょっと楽しかったです。救急医療をやりたくてこの病院に入職したあの若いころの活き活きとした気持ちがふっと甦ってきそうになりました。

くわばらくわばら。

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アンパンマン

昨日の今日で、こんな話題を振るのもどうかと思いますが・・・。わたしのカラダがギブアップ宣言をいたしました。

ここ数年、何度もやったダイエット宣言がほとんど空振りに終わる中、半年くらい前から気づいた白衣のズボンのウエストのきつさ加減には、「これは太ったんじゃない。ゆるんだんだ!」と主張し続けて参りました。”ゆるんだ”だけだから、その気になったら(思いっきりお腹を引っ込めたら)簡単にカッコよくなるんだ!と。歳取って、姿勢が悪いから、腹回りに皮下脂肪がくっついただけなんだ!と。

ところが、今週の初め、朝起きたら顔が突然アンパンマンになっていました。「どうしたんだろう、この頬っぺた・・・いつもの錯覚?」~これまでと同じように、気付かない振りをしてみましたが、職場の診察室の鏡に映る自分が、どうも先週までの自分とは違う。翌朝、歯を磨きながらマジマジと眺めたけど、やっぱりこの頬っぺたは現実だ。アジャスター付の白衣のズボンのボタンももはや限界ですって顔をしてわたしに訴えるから、最近はボタンと目を合わせないことにしています。韓国旅行から帰ってきた妻が、みやげにゴルフ用のインナーを買ってきてくれました。ピチピチでした。「Lじゃダメだったの?」と悲しそうにつぶやきました。

ご託を並べている場合ではございません。冬眠前の熊じゃないんだから。 な。

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階段から?

ある大きなカラダの男性が、云いました。

「このままではダメだと思うので、運動を始めようと思います。階段の上り下りが効果的だと聞いたのでそれをやってみようと思います。」

すばらしい思いつきですが、運動習慣のない方は、とかく最低限の努力で効果が出るモノを性急にやりたがるような気がします。続けることが第一だから、まずは歩いたらどうですか?と進言したら、「上りは大変だからまずは下りから始めようと思います」との答。・・・いや、みんなそう思っているようですが、実は階段に慣れていない人にとって、上りより下りの方がはるかに危険なのだということを、むかしうちの健康運動指導士さんから教わりました。下りのときに使う筋肉は日頃あまり使わない筋肉なので、つまずいてしまったり肉離れを起こしたりする危険性が高いのだそうです。上りでつまずいても大事に至りませんが、下りでつまずくと転げ落ちるかもしれません。そういえば以前わたしが肉離れを起こしたのも、職場の階段を下りていたときでした。

ちょっと不満げな顔をした彼。「実は歩くことも考えています。”後ろ歩き”が効果があるって聞いたんで、やってみようかと・・・。」 とりあえず、普通に歩いたらどうですか?ケガをしたら元も子もないですから・・・そう云いながら、実は全然違うことを思っていました。”たぶん、やらないな。あるいは、すぐに止めてしまうな”・・・彼には失礼ですけど、地道なことを避けたがる方は第一歩の敷居がかなり高いのです。「わたし、こんなに太ったからダイエットを始めましたよ」と世間に分かりやすくアピールするのは、性格もありますけど、かなり勇気が要りますしね。 健闘を祈ります。

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血圧測定の歴史

血圧計が発明されたことは、本当に人類に幸せをもたらしたのだろうか?

先日、診療をしながらふとそんなことを思い始めました。循環器内科を専門にしながら、そんなことを思ったのは初めてのことでした。血圧が分かるようになって、血圧が脳卒中や心不全の原因になることが分かって、治療方が発見され、薬が発明された。それによって健康寿命が延びた。それはわかっているのですが、「血圧」を知るすべがなく、治療できずに若くして急死したとして、それは不幸なのか?たとえば、黒人は遺伝子の関係で高血圧が多いが、彼らは測らなければどうもなかったはずで、”無知”のために長生きできなかったとして、それはいけないのか? もしかして、自分が「高血圧」という病気だと知ったこと自体が自分自身のココロを侵して苦しませる場合もあるのではないか?

この疑問のために、『血圧測定の歴史』で検索してみたら、いくつかホームページの記事がみつかりました。

医療の歴史 ~『血圧測定の歴史』」(木村医院 木村丹先生) 岡山県早島町
血圧測定の歴史」(藤倉病院 藤倉一郎先生) 埼玉県北本市宮内
血圧測定と高血圧治療の歴史」(新庄徳洲会病院 笹壁弘嗣先生)

どれを読んでみても、とてもまじめに粛々と歴史を語っています。こういう記事は、大病院や先進医療の病院の循環器内科のホームページには絶対書かれていないものです。若い先生方はきっと興味ないだろうな、と思いながら、さらっと読み流しました。

残念ながら、結局、わたしの疑問に対する答は見つかりませんでした。

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脳回路が断線中

どうも頭が働きません。

書こうとするけど、ことばが浮かんできません。

疲れています。

仕事の忙しさと、立場のストレスと、しなければならない仕事の山に埋もれ、

家庭の事情のもろもろで、あれこれ心配なことばかりあり、

体調も今一つ。

書こうとしている内容を書くためにパソコンに向かい、

一行目を書き始めるのですが、

次のことばが浮かびません。

あの向こうにある”ことば”を持ってきたいのに、

向こうにある”ことば”が良く見えなくて、

こっちに持ってこれないのです。

そのうちその”ことば”自体が存在を消してしまいまして・・・

真っ白になります。

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一日中ひとりでいると

たまに予定が何もない休日があります。あるいは、切羽詰まった原稿書きやスライド作りなどでずっとパソコンに向かっていなければならない週末。昨日もそんな日曜日でした。

わたしは、一日中ひとりで家にいるといつも何かを食っていたくなります。腹なんか減っていないのに、喉なんか乾いていないのに、周期的に冷蔵庫やパントリーを覗きに行っては何かをもってきてしまいます。基本的にじっとして居れないからですが、そんな休日の翌日は決まってひと回りカラダがデカくなります。だから、週末はとにかく用事を入れて、できるだけ家から離れるようにしているのです。

うちの妻は、ひとりで家にいるとまったく動きません。料理も作らないし食べないし、ワンの散歩でもしない限り一歩も家を出ません。わたしが出張に行ったりサッカーの応援のために宿泊したりすると、帰ってくるまで家を出た形跡もなければ何かを作った形跡もないことがしばしばです。ずっと携帯ゲームをしているかDVDを観ているのだそうです。わたしやワンが居なくなったら、彼女は女仙人のようになっていくかもしれません。

家の中にひとりでいると、じっとしておれずに何かを食べて回るわたしと、動かずにいつまでもじっとしたままになる妻と・・・うちの夫婦は何でも対照的ですが、ひとりでの過ごし方もご多分に漏れません。ま、どっちも明らかに病気ですから、わたしはじっとする練習を、妻は動く練習をする必要がありましょう。

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なりすまし

先日の夜、うちの施設の事務当直の当直用携帯電話に、わたしの名を騙(かた)るふとどき者が電話をかけてきました。「急用ができたのだけれど、F先生(女医)の携帯電話の番号を教えてくれないか?」と。「F先生の電話番号は今すぐにはわかりません」と当直担当者が答えると、「それじゃあ、M先生(女医)かI先生(女医)に聞いてみるから、そっちの電話番号をちょっと教えてくれ」と云われて、結局教えてしまったようです。きっと、うちの施設のホームページを見ながらかけたのだろうことは容易に想像がつきます。その先生に税金対策のマンション購入か何かのセールスの電話がかかったのは、その直後だったそうです。

「あら、あなたも、なりすましに使われるくらい有名人になったんだ。すごいね」と妻は相変わらず能天気なことを申しますが、まだ職場に残っていた先生方も少なくなかった時間、わたしがすでに家に帰っている(ゴルフの練習中でした)ことまでお見通しでなりすましされたのは、ちょっと複雑な心境でした。

よく、「○○病院の××です」と病院の電話交換の方にウソをついて取り次いでもらうセールスマンがいます。電話に出てみると「あ、△△先生? 良いマンション投資の話があるんですけど・・・」と切り出す人。会ったこともないヤツで、しかもウソついて電話かけてきておきながら、タメ語かい?と思いながら、聞き流して受話器を置くわけですが、そんな大ウソつきで社会常識のない人間のことばを信用して、はなしに乗るヤツなんているのかしら?といつも不思議に思います。そんな悪質なウソをついてでもコンタクトを取ろうとするということは、それなりに釣られるヒトが多いということなのでしょうか。わたしにはどうしても理解できませんが。

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ゴキゲン

この一週間は毎朝遅刻気味(朝起きはいいのだけれど、パソコンに向かっている時間が長くなって)で、昨日も大慌てで家を出ましたが、案の定それなりの渋滞に巻き込まれました。

信号停車もいつもより回数が多く、若干焦りながらふとバックミラーを見上げたら、後ろの車の運転席で大きく口を開けている若い女性が見えました。良く見ると、少しカラダを左右に揺らせながら歌を歌っているようです。ものすごく大きく口を開けていましたから、かなり大きな声で歌っているのでしょう。ゴキゲンでノリノリな曲の様です。ずっとわたしの後ろを付いてくるので信号停車の度にミラーで確認することになりました。若いかわいらしいお嬢さんが、とても楽しそうに笑いながら歌っています。全然知らないひとなのに、なにか見ているだけでわたしもうれしくなってきました。まだまだ眺めておきたかったのだけれど、わたしが職場の手前の道を曲がったところで、彼女は走り去っていってしまいました。

朝からあんなテンションで職場に行って、彼女はきっと昨日一日元気いっぱいに働いたことでしょう。遠距離運転の眠気覚ましのためくらいしか密室で歌を歌うことのないわたしにはちょっとまねできない芸当ですけれど、朝からとてもいいものを見させていただきました。

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