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「腎臓が悪い」と突然言われたあなたへ

定期コラムの連載もこれを入れて残り2回になりました。新年号が発行されましたので転載します。

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「腎臓が悪い」と突然言われたあなたへ~CKDからのメッセージ~

このシリーズをずっと読んでいただいた方にはわかると思いますが、メタボリックシンドロームとか正常高値血糖とか正常高値血圧とか、今まで“予備群”どころかほぼ“正常”のくくりにあった概念が突然“病気”扱いになってしまいました。CKDもまたそんな流れで生まれてきた概念ですが、まだまだ巷の混乱が落ち着いていない感があるのでちょっとだけ触れてみます。

●腎臓のしごと

左右二つ、腰の少し上に位置する腎臓の主な働きは、血液をきれいにろ過することです。それによって水分や電解質・ビタミンなどの調節をしながらからだ全体のバランスを保ちます。腎臓は小さな『ネフロン』という単位が約10万個集まったもので、ネフロンは血液をろ過する組織である『糸球体』と、ろ過によって濾し出されすぎた必要物を体内に再吸収する『尿細管』で構成されています。腎臓の働きを表す指標にGFR(糸球体ろ過量)があります。これは糸球体で1分間に何mlの原液のおしっこ(原尿)をろ過する力があるかを示すもので、ふつうは1分間に100mlくらいです。

●CKDの正体

CKDはChronic Kidney Diseaseの略で、日本語名は『慢性腎臓病』です。腎機能を示す値としてクレアチニン値がありますが、毎年の健診で「腎機能(血中クレアチニン値)が正常だ」といっているのに人工透析に向かっていくタイプの人がいます。腎機能低下は進行性で有効な薬もないのが現状なので、そんな人たちを早く見つけて早めに対処するためにCKDの考え方が健診に導入されました。糸球体のふるいの網目は年齢や生活習慣によって少しずつ目詰まりしてGFRを低下させますが、1分間に60ml未満になると低下に加速がかかり、10~15mlになると人工透析が必要になります。ですから、GFR 60ml/分前後の人に今のうちから生活の見直しを始めるよう働きかけるわけです。ちなみに、熊本市は全国1~2位を争う透析都市ですので、市を挙げてCKD対策に強力に取り組んでいます。

GFRは腎機能の現在を把握して未来を予想するのにとても優れた指標ですが、正式に求めるには蓄尿が必要です。そこで、健診で簡単に得られる値(年齢、性別、クレアチニン値)を計算式に入れるだけで得られるGFRの概算値=eGFR(糸球体ろ過量推算値)が使われます。最初は欧米人用の式でしたが、すぐに日本人用の推算式に訂正されました。単なる計算式ですので、現在はほとんどの健診結果に表示されていると思います。

●幽霊に怯えすぎないように

ところが、健診でこの値を出すようになって、インターネットなどで調べた挙句に、「自分は人工透析になるかもしれない」と悩み始める人が出てきました。あるいは保健相談や医師の結果説明で腎機能低下だと言われ、腎臓は治らない、透析になる・・・という思考の負のスパイラルから逃れられなくなってしまう人。説明する側も、基準からちょっと外れただけで重篤な病気に落ち込むかのような“脅し”の空気。eGFRはクレアチニン値の影響が大きいのでちょっと脱水になると低下し、単に1つ歳をとるだけでも下がります。あくまでもアバウトな目安ですので、血中クレアチニン値が正常範囲内なら、「腎臓の働きはまずまずだけれど、予備力が若い時より落ちてきたから今のうちから食事に注意しましょう」という呼びかけでしかありません。この値が60を切るなら腎臓を守る生活管理に気合いを入れ、50~40を切るなら専門医の元で正式な機能評価を受けたり、隠れた腎臓の病気がないか調べてもらう流れです。

健診現場で見かける大部分のCKDの治療は食事療法が主体です。ところが、この値を必要以上に気にする方は、日ごろから血糖や血圧管理のための厳密な食事療法をきちんと行っている人が多く、今さらそれ以上修行僧になる必要のない人。一方、このまま乱れた人生を送っていると人工透析になるぞ!と喝を入れたい人に限って、意図的に(?)目を背けて聞き流す素振り。健診におけるCKDは、甘く見ると危険なので事実は事実として把握すべきですが、逆に深刻になりすぎると本末転倒です。今の自分の腎機能の程度を知る目安としてうまく利用してもらいたいと思います。

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