人間ドックの使い方
「70歳にもなったし、人間ドックはもういいかな、と思うんです。」
診察をしようとしたら、毎年受診されているある男性がそう云いました。「病気で通院しているから、もうそっちで診てもらうだけでいいんじゃないかな、と思うんです」と。その考え方は正解だとわたしも思います。ホームドクターが定期的にチェックを入れてくれて、あるいはちょっとした異変に気づいてくれるなら、それでいいのかもしれません。「どこか調子が悪い」「かかりつけの町医者じゃ信用できないから大きな病院の人間ドックで徹底的に調べてもらいたい」・・・そういった人間ドックの利用の仕方をする人が少なくありませんが、それはやはり明らかに間違っていると思います。
ただし、病院にかかっていて定期的に採血しているから大丈夫!と思っている方、それは勘違いです。血を取ったらそれで何でもかんでも調べてもらえるわけではありません。必要のないものを保険診療で調べようとしたら支払基金の査定にひっかかりますから、検査項目は最低限なのです。外来では、罹っている病気に関連する項目の検査しかしません。だから、外来では行わない検査、たとえば胃カメラや甲状腺超音波などは定期的に受けておくことをお勧めします。昔、外来で何年も診ていた患者さんが、他の病院の消化器内科に入院したことがあります。進行胃がんでした。これはとても屈辱的・・・心筋梗塞の予防には神経を注いでいたけれど、胃がんに罹るなど全く考えてもいなかったのです。
そういうことを踏まえながら、検査はうまく棲み分けてください。ちなみに、くだんの男性は、お腹の中で多数のリンパ節が腫れているのが発見されて、近く精密検査を受けることになりました。
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コメント
おはようございます。
私、考えるに
採血は「蚊や蚋、ドラキュラ」で充分で、
余裕の有る人は「献血」も良いと思われますが、
それ以上の採血は、分析屋への売上貢献以外の
何物も無いと思われます。
だって・・・分析結果を眺めても如何ともし難いと思います。
未だ「蚊や蚋」以外に献血をしたことが無い asuka3h 拝
投稿: asuka3h | 2013年2月27日 (水) 09時54分
先日八十一回目の献血をしてきました。毎回の血液検査・バイタル測定も兼ねての人助けです(笑)。それ以外の健康状態の把握は…「自分の身体の声を聞く」です。真面目に医者や看護師(加えるに看護狂員)の言うことを聞いていて殺されそうになったことが何度かありますので(笑)。
しかし検査機械や技術が発達したのはいいのですが、人間はバカになったと思うのは私だけでしょうか?
病院や施設勤務を希望し、やたらと西洋医学に擦り寄ろうとする鍼灸師・柔整師が多い中、あえて古典の脈診・舌診を極めてみるへそまがりな生き方も面白いかも(笑)。
投稿: コン | 2013年2月27日 (水) 15時20分
asuka3hさん&コンさん
想像以上でも以下でもないコメント、ありがとうございます(笑)
どうしてみんな検査が好きなんでしょうね。してほしい人はせず(お二人のことではありません)、せんでいい人はしたがる。そして、どっちも誤差範囲の変化に顔色を変える。やっぱり、医療従事者が信用されていないのが悪の根源なのかもしれませんね。
投稿: ジャイ | 2013年2月27日 (水) 19時00分