« 2013年1月 | トップページ | 2013年3月 »

2013年2月

忘れていく

先週土曜日の研修会の最後に、Youtubeの画像が流されました。2011.3.11、東日本大震災の動画です。似たような動画はいくつもあり、何度も見ながら、見る度に涙が流れ落ちます。

でも、明らかに過去のものになっていることを感じて、ハッとしました。あのとき、もう日本は無くなる!と思いました。日本中が一致団結して節約し助け合いました。薄暗い日本列島になりました。自然の驚異と電力の有難さを思い知りました。あれから2年・・・現地の復興はまだほとんど進んでいないのかもしれませんが、遠く離れた九州の地で、私たちのココロの中では過去のものになっているのを否めません。原発問題は尾を引いていますが、それでもあの年の夏のような、日本中のコンビニの電灯が半分以下になったり、空調を我慢したり、単一電池や水が店からなくなったり、必死に募金活動したこと・・・。

去年は九州でも豪雨による大災害が起きました。熊本の街中が濁流にまみれ、阿蘇の山が崩れ街も道も崩壊しました。大分に帰るのに倍近くかかる迂回路を通りました。これは当分元に戻らないと思いましたし、いまだに滝室坂は仮橋です。でも今、現地の住民でないわたしたちは、まるで何事もなかったかのように生活しています。あの出来事ですら遠い過去の出来事のような錯覚に襲われます。阪神淡路大震災はもはや歴史の本の中の出来事になり、復興のシンボルだった神戸ルミナリエは単なる年末の風物詩になりました。

風化させてはならない!忘れてはならない!と呼びかけ、継続的なチャリティ活動が続けられています。でも逆に、忘れていくことによって前に進むことができる、というのも事実なのかもしれないなと、こっそり涙を拭ったその動画を見ながら思いました。

| | コメント (3)

人間ドックの使い方

「70歳にもなったし、人間ドックはもういいかな、と思うんです。」

診察をしようとしたら、毎年受診されているある男性がそう云いました。「病気で通院しているから、もうそっちで診てもらうだけでいいんじゃないかな、と思うんです」と。その考え方は正解だとわたしも思います。ホームドクターが定期的にチェックを入れてくれて、あるいはちょっとした異変に気づいてくれるなら、それでいいのかもしれません。「どこか調子が悪い」「かかりつけの町医者じゃ信用できないから大きな病院の人間ドックで徹底的に調べてもらいたい」・・・そういった人間ドックの利用の仕方をする人が少なくありませんが、それはやはり明らかに間違っていると思います。

ただし、病院にかかっていて定期的に採血しているから大丈夫!と思っている方、それは勘違いです。血を取ったらそれで何でもかんでも調べてもらえるわけではありません。必要のないものを保険診療で調べようとしたら支払基金の査定にひっかかりますから、検査項目は最低限なのです。外来では、罹っている病気に関連する項目の検査しかしません。だから、外来では行わない検査、たとえば胃カメラや甲状腺超音波などは定期的に受けておくことをお勧めします。昔、外来で何年も診ていた患者さんが、他の病院の消化器内科に入院したことがあります。進行胃がんでした。これはとても屈辱的・・・心筋梗塞の予防には神経を注いでいたけれど、胃がんに罹るなど全く考えてもいなかったのです。

そういうことを踏まえながら、検査はうまく棲み分けてください。ちなみに、くだんの男性は、お腹の中で多数のリンパ節が腫れているのが発見されて、近く精密検査を受けることになりました。

| | コメント (3)

冬季うつ

「冬季うつ」・・・聞きなれない病名ですが、わりと以前からある病気で、正式には「季節性情動障害」というくくりの中のひとつのようです。

「炭水化物や甘いものが無性に食べたくなり、いくら寝ても眠った感じがせず、倦怠感と憂うつ感でなかなか寝床を出られなくなる。集中力ややる気が失せていつも眠い…。これが冬季うつの特徴です。」と、ある雑誌記事に出ていたのをみて気になって調べてみました。

冬になるとうら寂しくなって悲観的になるし日が短くて暗い夜長に考えることが明るくなるわけないね、などと諦めてじっと春を待つ・・・昔からイメージで冬を乗り切ってきたのが多くの人なのではないかと思います。でも、どうもこれは情動的な思い込みではなく、カラダのホルモンがそうさせるようなのです。基本的には”日が短い”が大きな誘因となり、ここでも何度か書いてきたメラトニンやセロトニンといった物質のトラブルが元凶です。体内時計を司るメラトニンは朝日がリセットのスイッチですから、日の出が遅くなればタイミングがずれます。徐々に体内リズムが狂ってくることが容易に想像できます。光刺激が減るとセロトニンが減って脳の神経活動が低下します。セロトニンは直接うつ病に関連する物質です。

なるほど、なるほど。と手を打ちそうになりながら、「でもねー」って思うわけです。昨日書いたばかり・・・夜中でも煌々と照りつける都会の灯り、朝だからといって早起きするでもない現代人・・・「冬」→「日照時間の低下」→「うつ」を成立させるには、何かが足りないような気がしてなりません。唐突ですが、冬眠って何か関連があるのかしら?

| | コメント (0)

夜行性

仕事を終えて帰宅したあとでワンたちの散歩に出かけるのが日課です。彼らには申し訳ないのだけれど、どうしても暗くなってからの行動になります。

散歩コースの江津湖公園はこの時間になると人通りも少なく、外灯が徐々に消されて行ってうら寂しくなります。そんな公園を歩いていたら水辺で活発に動く水鳥を発見しました。黄色の長い脚を駆使して水の中を走り回りながら獲物を取っているようです。「あれ?なんで夜に?鳥目じゃないの?」などと夫婦で不思議がりながら通り過ぎました。フクロウなどの夜行性の鳥を除けば、基本的に鳥は夜は静かにしているものではないのか?薄暗い街灯の下で活発に活動する白い鳥のシルエットがちょっと異様だったので、しばらくそんな話題になりました。たしかに夜行性の鳥は少なくないようで、高い空を飛ぶ鳥以外は意外に夜にエサの確保をするモノがいるらしい。

ただ、人間もそうですが、おそらく鳥たちの方が現代社会の影響は甚大だと思います。本来、地球は日が沈めば真っ暗になり日が昇れば明るくなる。それに合わせて夜行性と昼行性が棲み分けをして、日内リズムが出来上がっていったはずです。ところが電気という発明は便利と引き換えに生き物の秩序を根底から壊しました。都会のカラスが凶暴なのは、24時間うるさく明るい不夜城にした人間の責任でしょう。いくら「鳥に寝不足はない」と云われても、「うるせえんだよ、てめえら!」って切れて当たり前のような気がします。明かりは白熱灯から蛍光灯を経て今やどこでもLED・・・いつまでも昼のような明るさの外灯が煌々と灯されているようでは、人間ですらおかしくなります。そのうち夜でも悠然と空を飛びかうスズメなんかも珍しくなくなるかもしれません。これを”進化”と云うのでしょうか?ちょっとゾッとします。

| | コメント (0)

リスモダン

ある看護師さんがわたしに相談に来られました。

「心房細動の患者さんがいて、『最近下を向くと二重に見えるようになった』と云います。これは内服しているリスモダンの影響でしょうか?」
「まずは眼科に行くことじゃないですか?」
「眼科には行かれました。特に問題はなかったそうで、『もっと大きな病院で精密検査をしてもらったら?』と云われて大きな病院でMRIとかも撮ってもらったけれど特に問題はなかったそうなんです。」

こういう会話は、医療者同士だけではなく、一般の皆さんもよくされるのではないでしょうか?わたしは看護師さんの話を聞きながら物凄い違和感を感じました。「検査結果に異常がなかった」ということ以外の情報がまったく伝わってこないのです。眼科医は自らの検査結果から「複視は実際に存在する」と判断したのか、するならそれは何からくると推測したのか? MRI検査を指示した医師はMRIの検査結果から、複視の原因は何だろうと診断して本人に何と説明したのか?重要なのは検査結果ではありません。検査結果を元に、医者がどう診断を下し、どうするべきと判断したか・・・絶対に何らかの説明があったはずだしカルテに何か書かれているはずなのです。患者さんに検査結果だけを説明し、あとは自分で考えなさい、なんていう医者がいたらそれはもぐりです。「検査結果に問題がなかったから眼筋や神経系の直接の異常ではないようだ。ということは、もしかしたらリスモダンの副作用かもしれないから一度中止してみようか」・・・最終的にそれを判断するのは、リスモダンを投与している外来主治医であって、本人でもなければわたしたち第三者の医療者でもありません。

| | コメント (0)

感謝の心

朝、診察室に入って最初にする仕事はデスクのパソコンを起動させることですが、最近はわたしたちが診察室に向かう前にフロアアテンダントのお嬢さん方が気を利かせてスイッチを入れてくれていることが多くなりました。部屋に入ったら最初からログイン作業ができるのでとても助かっています。

ただし、スイッチの入れ方は人それぞれのようです。実はわたしの部屋だけパソコン配列が特殊で、2つのパソコンが独立して並べられています。諸般の理由から、普通の健診業務用ソフトの入ったパソコンと心電図判読用のパソコンが別々に存在するのです。そこの事情の周知徹底が今一つなされていないのか、片方だけスイッチを入れてくれたり、その日には使わないパソコンにもスイッチを入れてあったり、まちまちなのです。

不届き者のわたしはときどきそれにグチをこぼしたり、舌打ちをしたりしてしまいます。「あ~あ、また間違えてる」とか「わざわざスイッチを切らなきゃいけないじゃない!」とか、まるで有難迷惑でもあるかのようなことをほざいたりするわけです。先日も、ついそんなことを独り言のようにつぶやいてしまった自分に気づいてハッとしました。自分の義務でもないのに、わたしたちの業務をスムーズに進めるためにわざわざ自発的にやってくれている作業なのに、わたしとしたことが・・・。感謝の気持ちをいつも心に抱くことを忘れないようにしなければ。

| | コメント (0)

おなら

最近、夕方近くになるとお腹が張ってしょうがありません。トイレに駆け込んでみても出るのはおならばかり。夜の公園でワンの散歩をしている最中なんかは、人気のないのを確認しながらブッブブッブとやっています。においがないので、本当にただの空気という感じがします。

これは間違いなく空気の飲み込み過ぎです。きっと一日中しゃべくり倒しているからだろうと思います。唾を呑み込むだけで空気は一緒に入ってきます。しゃべる量が多ければそれだけたくさんの空気が入ってきます。と、思いはしますが、それでも最近のわたしの状態は病気。いわゆる”空気嚥下症”だと自己診断を下しました。

でも冷静に考えて、わたしはいつもそんなに唾を呑み込んでいるだろうか?試しに今、意図的に呑み込んでみたけれど、これって意外にエネルギーが要ります。どうだろう? 本当にこのおなかの空気の原因は・・・一日の仕事量は前と何も変わっていないのに最近だけおならが溜まっているのだから・・・やっぱりタメ息が多いのかもしれません。はぁ。

| | コメント (2)

眼力

会話をするときは相手と目線を合わせるのがエチケット。相手の目を見て話すことは自信の表れだから大事な商談では目線をそらしてはならない。

だからなのでしょうか。診察や結果説明をしているときに妙にじっとわたしの目を見つめ続ける人がいます。すごい眼力に圧倒されます。若手のオーナーやヤリ手の営業マンに眼力の強い人をよく見ます。彼らは会話の最初から最後まで1回も相手から目を逸らしません。自信に満ち溢れているだけでなく、おそらく相手の云うことをひとつたりとも漏らさずに聞き取ろう、理解しようとする表れなのだろうことは察しがつきます。それが仕事を成功させるコツなのかもしれません。

でも・・・わたしは苦手です。そんなにグイグイ 向かってきたら、いくらニコニコして相槌を打ってくれたとしても、気後れしてココロを割ることなど絶対できません。そういう人の云うことは半分以上聞き流すことにしています。

たまには、そっと目線を逸らして、わたしに息抜きをさせてください。

 

| | コメント (0)

運気

「わたしはこれから大殺界だから最悪なの。でも、あなたの運気は今年から最高なんだってよ。」

わたしの実家は主が居なくなって10年以上、親戚の若い夫婦に住んでもらっていましたが、昨年の大雨で瓦が数枚飛んだのをきっかけに引っ越してしまい、今はモヌケの殻です。築37年の古い家なのでいっそこの機会に取り壊そうかとも思ったのですが、両親が贅沢普請した家は思いの外に頑丈で、しかも若夫婦がとてもきれいに使ってくれたので、少し手を入れて借家として生まれ変わらせることに決めました。

とはいえ、何百万もかかるリフォーム資金の工面、火災保険会社への交渉、家の中や倉庫の整理と処分、大きな仏壇の処理、不動産屋への依頼・・・遠く三重県に住む姉にも所有権のある土地建物なので諸般のことを相談しながらも、結局わたし一人の仕事。生まれて初めての慣れないことばかりで途方に暮れています。それでも何とか同級生やその知人の手助けを借りて、前進を始めました。

とても大きな金が動くので、実際とても不安です。借り手がなければ全くムダになるのに我が家に余裕なんかない。他人に家を貸す=大家になるなんて、一体何をしたらいいのか?何かトラブルでもあったら?いろいろな手続きは? ・・・不安なことだらけでここ数か月ずっと憂鬱でした。でも、多分、何とかなる!と信じることにしました。だって、「今年の運気は最高!」なのだから、と自分に云い聞かせながら。

「あなたの運気はドンドンよくなるのだから、あなたの決めることには間違いがないよ」と妻は云います。あの、超能力者の妻が云うのだから間違いなかろう、と自己暗示をかけています。いつも力になってくれる友人と知人にココロから感謝!です。

| | コメント (2)

業績好調のJT?

たばこ喫煙人口減少するも、業績好調のJT ロシアやトルコ、海外での売上増加が貢献

こんなタイトルが目に入りました(2013年2月17日(日)16時0分配信 MONEYzine)。「全国たばこ喫煙者率調査」によると喫煙者数が63万人も減少したというのに、「国内たばこ市場の販売動向」では国内紙巻総販売数量が9億本減ったのに対してJTだけの国内紙巻総販売数量は85億本増加したという。しかも、「海外たばこ事業実績速報」によると海外たばこ事業実績としての販売量が前年同期比2.5%増、JTのそれが前年同期比5.4%増だと。

つまり日本では、健康志向で喫煙者が減ったはずなのに、販売が減ったのは外国たばこだけで国産たばこは増えている。さらにJTは外国シェアを増やすことで経営を安定化させているということになります。JTの元気が良いわけだ!

この記事を読みながら何かとても悲しい気持ちになりました。それは、たばこの存在がなくなることがまだまだ夢物語だと思い知らされたこともありますが、それ以上に、記事全体の文章表現がJTに対してとても好意的だということです。「JTは国内外で売上を伸ばし健闘している」とか「好調に推移した」とか・・・少なくとも、この記事を書いた人は間違いなくスモーカーなんだろうな、と思いました。

| | コメント (3)

「ブレゼンが下手な人ほど練習を怠る」

Facebookで定期購読している精神科医 樺沢紫苑先生の昨日配信された記事です。

若手ドクターの学会発表で上手い人と下手な人の違い=ブレゼンが下手な人ほど練習を怠る、なのだそうです。<発表が下手な人に原稿を何回読んだかと聞くと、「1回しか読んでない」というのです。あるいは、「声に出して一度も読んでいない」という人もいた>という。なぜそうなるかというと、直前まで原稿を書き直したり、スライドを直したりしているから・・・つまり、<ファイナルの原稿が完成しないので、それを読む練習もできない>のだそうです。

話が下手な人は話す練習をせず、話が上手い人は練習を怠らない・・・意外でもあり当然でもある真実。<「話し方」が上手とか、下手とかそういう技術的なものは、「練習」によって簡単に補うことができるのですが、下手な人ほど基本的な「練習」を怠ってしまうのは、残念な話です>と総括された樺沢先生の今回の記事はわたしにもちょっと気になる内容でした。最近、わたしもギリギリまでスライドの作り直しばかりして練習を怠っている気がするからです。今日の夜にある健康講座のスライドを昨夜作り直しましたが練習はまだやっていません。昔と違って、ギリギリまで修正できる(昔はスライドは現像しないといけないので頑張っても仕上げは本番の2日前くらいが限界でした)のがいけないんだ!とも思いますが、きっと云いたいことがきちんと定まっていないのが悪の根源なのだ、と分かっています。

| | コメント (2)

首の診察

「じゃあ次に首の診察をします。ちょっと触らせてください。」

診察のときにそう云って手を出すと、受診者の方のリアクションは大きく2通り・・・のどを突き出して上を向くパターンと、逆にアタマを下げてうなじを見せようとするパターンです。まったく正反対の構え方にはおそらく各々にそのヒトのお医者さん経験の歴史があるのでしょう。「息を吸って」というだけで勝手にやってくれる深呼吸の仕方と同じです。

首の診察の目的は、甲状腺を触ることとリンパ節が腫れていないかを確認することです。首の周辺にはたくさんのリンパ節やリンパ腺があります。アタマを下げさせるのは後ろ側のリンパ節を確認するためでしょう。アタマを上げさせるのは顎の下のリンパ節と甲状腺を確認するためでしょう。わたしはまず甲状腺を確認したいので前者のパターンを要求します。

でも、むかしは頑なにそうさせていましたが最近は自信がないので、相手が構える格好に任せて触らせてもらうことにしています。学生時代に診察実習をまじめにやっていなかったわたしは、何が正解なのか良くわかりません。本当はどっちが王道なのかしら?

| | コメント (0)

気持ち

昨日は、諸般の会議を欠席させていただいて、早々に退勤いたしました。

朝から妙にだるく、まるで二日酔いの朝のような気持ち悪さ・・・どうしたんだろう?若いスタッフが気を遣って若干仕事量を減らしてくれましたが、それでもあまり回復しませんでした。

たぶん睡眠不足で眠かっただけだと思うのです。でも、熱が出る前でだるいのか単に眠いだけなのか区別がつきません。診察室が妙に寒い。これが本当に寒いのか寒気なのか区別がつかない。さらに何か関節がゾクゾクする感じがするけど、これが単なる筋肉疲労なのか熱発の前兆なのか分からない・・・皆さんが心配して「大丈夫ですか」と声をかけてくれます。ウワサがみんなに広まったようです。「微熱でも出たら帰る!」と宣言したのに昼休みに測った体温は36.1度! 即、残留決定でした(笑) 

結局、今朝になっても何も問題がなかったので取り越し苦労だったのでしょうが、今日も夕方まで代わりをしてくれるメンバーがいない仕事を控えているので、大事を取ってよかったのだと思っています。

不思議なものです。まだまだ真冬の2月です。ちょっと寒いとか、ゾクゾクするとか、眠くなるとか、半袖の白衣を着て仕事をしている以上、そんなもの冬なら当たり前だ!と、先週までだったら一笑に付しただろうに、周りがインフル患者だらけでそのためにギリギリのスタッフ数で頑張った今週は、同じ症状の全部が大病の前触れのような気がして不安でたまらなくなったのです。”病は気から”・・・こんなときこそ、ココロに余裕と自信を持っていたいものだと痛感しました。

| | コメント (8)

「お薬手帳」

『お薬手帳』の耐えられない軽さ」というコラムが2013.1.25付の日経メディカルオンラインに載っていました(内山郁子)。

患者さんが携帯している「お薬手帳」はさぞや医療現場で有効活用されているのだろうと思っていたのに、いざ自らが患者になってみると、診察室で担当医にそれをみせてもせいぜいチラッと見る程度でその扱いの軽さに愕然としてしまう。あるいは薬局でお薬手帳を渡しているにもかかわらず「他に飲んでいる薬はありませんか?」と聞かれるのはおかしくないか?という内容です。

記者である内山さんが勧めるのは、「医療者も自分のお薬手帳を持ってみること」だそうです。たしかに医療者のほとんどがお薬手帳なる存在を他人のモノ(自分は他人に施してあげる立場である)として把握しています。薬のことは重々承知の上で使っているのだから、自分はそんなもの要らない、と思っているのは事実かもしれません。急性疾患で病院にかかったり薬局で薬を買った時に記録しているとたしかにその病気に罹ったのがいつか思い出せるよな、とは思いますが、そんなことだけで自分用のお薬手帳を作る気にはなれません。

でも少なくとも、忙しい日常診療の中で、患者さんの手渡してくれる「お薬手帳」をきちんと吟味する(吟味していると患者さんが感じてくれる)余裕だけは持ちたいものです。実は、チラッとであっても開けてみたらきちんと中味は把握しています・・・そこはプロですから。

| | コメント (0)

減量目標

「一年間にどれくらい減らすのが理想でしょうか?」

先日、人間ドックの結果説明をしているときに、ある男性に聞かれました。マジメに取り組んでいるんだなと思います。もしかしたら特定健診・特定保健指導ではこういう目安の考え方を推奨しているのかもしれません。でも、わたしはその考え方はあまりお勧めできないなと個人的に思っています。

理想体重と云うものは、各人まったく別々に存在し、計算式で成立するような類のものではないと思うのです。●●ヶ月に○キロ減量するぞ!とガンバルがそのまま続けられずにリバウンドする。再び一念発起してガンバルが長続きせずにまたリバウンドする。こういうダイエットを”ヨーヨーダイエット”と云いますが、減量目標を設定する方法がまさしくこれを生み出す根源になるように思います。

体重と云うものは、ガンガンがんばって理想体重まで落ちたとしても、その生活を続けていない限り維持できません。ずっと続けて初めて成立する管理方法なのですから、「一年に何キロ減らす」という考え方では上手くいくとは思えないのです。プラトーに達するラインは人それぞれです。運動や食事を自分なりに頑張っていたら減りも増えもしない値が見えてきます。それがその人の理想体重であり、標準体重とかけ離れていても気にする必要はありません。その生活を維持するのが苦にならないようであれば、それを続けておけばいいことです。「体重と云うものは自然と落ち着くところに落ち着くものだ」というのがわたしの信じるセオリーです。

| | コメント (0)

旅先のウンチ

ずっと気になってることがあります。

旅先のホテルで朝にウンチをすると、必ずと云っていいほどいつもと違うモノが出ます。色が真っ黒だったり、便器にへばりつくようなべとべとのウンチだったり・・・どうしてでしょう?前の晩に酒を飲みすぎるからか?いや、出張などで泊まるときにはほとんどが部屋飲みとコンビニ弁当だから、酒の量は知れています。サッカーの応援の前泊ではたしかに友人としっかり飲むし、その翌朝は決まって黒い便です。が、もっとたくさん飲み食いする職場の宴会の翌朝にはそんな便はあまりお目にかかりません。旅先のホテルでは枕が違うから熟睡していないのか?いや、どう考えてもそんなことではないような気がする。旅先では大なり小なり日常とは違うものを食うから? ん~。黒い便は血便の可能性もあってちょっと心配なのですが、(きたない話ですが)こっそり臭ってみたけれどいわゆるタール便特有の臭いはしてきませんでした。

まあ、便秘なわけではないし、健診でも問題はないし、特別な便通異常の症状もないので、たぶん何の心配もないのでしょうが・・・でも、気になるのであります。

| | コメント (5)

肥満ドライバー

自動車事故の死亡リスク高い肥満ドライバー

先日配信されたCareNetに出ていた記事です。肥満ドライバーは正常体重ドライバーよりも自動車事故で死亡するリスクが高いという研究です(Emergency Medicine Journal オンライン版)。

この見出しを見て最初に思い出すのは、「自分の前に停まったタクシーに乗り込もうとしたとき、もしその運転手がとても太っていたら、あなたはこの運転手に自分の命を預ける勇気がありますか?」という、ある大学の先生がわたしたち聴衆に向かって云った問いかけです。それは睡眠時無呼吸の講演のときでした。太っている人は大なり小なり間違いなく睡眠時無呼吸が存在する、という話の具体的な例を挙げられたのです。その運転手は、いつ居眠り運転をするか分かりませんし、心筋梗塞や脳梗塞を運転中に起こすリスクも高いからです。すごくインパクトのあるお話でした。

そんな内容の検証論文かと思ったら全然違っていました。肥満者は糖尿病や高血圧などが合併していてケガの回復が遅れやすいことと、カラダが大き過ぎてシートベルトがきちんと用をなさない可能性があること、それがリスクを上げる理由なのだというわけです。なんかあまりに予想外の内容で、ちょっと笑ってしまいましたが、確かにそれも一理あるなと感心もしました。「米国では肥満に対する偏見をなくすため、体の大きさなどは関係ないと思い込ませる動きがあるが、事実、関係する」というコメントにもちょっと驚きました。太っている人間は自己管理能力がない!・・・成功の最低条件は健康管理と体重コントロールができていることだ!と云いはじめたのは、確か米国からではなかったのかしら?

| | コメント (0)

通訳

「先生、それなかなかうまく伝えられません」・・・ある自治体から講演を依頼されて、その内容についてあれこれ要望を云ったら、中に入っているうちの事務スタッフがそんなことを云うわけです。「あんたが中に入って通訳してくれなくていいよ。ボクが自分で直接相談するから」と答えると、「いやいやそんなお手数はかけられません。わたしがいつも担当していて面識があるので、わたしが話した方が・・・」「だって、あんた伝えられないんでしょうが?」「いや、頑張ってみます。」

バカみたい。当事者同士が直接話すのは失礼(お下品)だから必ず仲介役を務めなさい、とでも入社時に教育されているのでしょうか。うちの施設は病院の事務も含めてそんな感じです。「●●先生からこんな質問がきています」と伝えに来て、それに答えると「わかりました。わたしから伝えておきます」と云って帰っていきます。

いや、ちゃんと通訳してくれるのならいいのですが、「こんなひどい仕打ちを受けるなら、やめるぞ!」とひどい剣幕で怒ったとしても、仲介役が相手に伝えるときにやんわりとした口調に置き換えるわけです。「相手様に角が立たないように言葉を選んでお伝えしてきました」と胸を張って報告されると、殴り倒してやりたくなります。彼らが自分なりの解釈で伝えるので、まったく本意ではない内容が伝わることもしばしば。

もしかして、スポーツの場の通訳とか、全然ニュアンスの違う内容に訳していること、ものすごく多いんじゃないかしら? 「通訳の問題で監督が辞めた」とかいうのは、絶対この類のトラブルなんだろうな・・・かなりイライラしていましたが、そんなことを考えていたら、なんとなく冷静になれました。彼を無視して勝手に電話してしまおうかな♪

| | コメント (2)

体感

「明日はこの冬一番の寒波が到来しますので、暖かい服装で出かけてください」というから覚悟していたのに、意外に大したことはなかった。気温は確かに低いのに、思ったほど寒いと感じなかった。逆に、「異常に暑くなりますので熱中症に注意」と云われて準備していたら、そうでもなかったことも真夏にはある。

心頭滅却しなくても、少しだけ自分の思ったより強めに想像しておくと、その通りでも想像より軽く感じる。この錯覚があるから生きていくのが楽になる。”体感”って生きていく上でとても大切なものなのだなと思う。

| | コメント (0)

心臓医者?

わたしは元・心臓医者(自称)ですが、実は心臓のことはよく分かりません。心電図読影の質問を柳腰で上手くかわしながらごまかしていることを以前ここで書きましたが、とにかく循環器学そのものをまともに勉強していませんので、時々大きな恥をかいてきました。「先生、QT延長とは何ミリ以上のことですか?」「肥大型心筋症の定義と分類を説明してください」・・・ふざねんじゃねえぞ。何ミリか?って、心電図の解析結果みりゃ異常か異常じゃないか書いてあるじゃろ! 分類覚えてなくたって死にゃあしないよ!と、神妙な顔をしながらココロでこっそり反論してきました。

なにしろわたし、循環器学を学生時代に教わった記憶がないのです。いや、ちゃんと授業には出ました。でもそれがいつも一限目で、なにしろ毎晩遅くまで演劇の練習に明け暮れていた時期だったから、階段教室の真ん中辺の定位置でいつもヨダレを垂らしながら爆睡していたのでしょう。試験対策委員が配ってくれるコピーや友人のノートの写しで付け刃の乗り切り方をしてきました。もちろん国家試験では循環器学の部分は捨ててました・・・。

だからわたしの循環器の知識は、10年間の循環器内科勤務時代に必要に迫られて自己流に勉強したものだけです。こんなわたしに心電図のレクチャー依頼をしてきた某自治体の保健師さん方・・・断っても断っても諦めないようですが、無謀じゃないですか?本当にわたしで良いんですか?

| | コメント (0)

率先する(後)

<(前)からのつづき>

ところが以前、あるナースの友人からこっそり教えてもらったことがあります。

とても優しくて細かいところまでよく気配りのできる先輩ナースがおりました。一般病室の夜勤は最低限の人数で切り盛りします。「その先輩ナースと組むときはとても頼りになるから気が楽だろう?」と聞いたら、「とんでもない。その逆です!」と即答されたのです。

その先輩ナースは夜勤中でも自分から仕事を見つけ出してとても小まめに働く人でした。今でなくてもいい仕事を見つけて、「今はヒマだから今のうちにやっておいたら昼間に楽だろう」とやってくれるわけです。そして、「いいよ、いいよ、あとはわたしがやっておくから、休んでて!」と優しく云われるわけですが、先輩が起きて夜中に黙々と仕事をしてくれているのですから、「そうですか、それではお言葉に甘えて」なんて云えるはずがありません。結局一緒に手伝うことになるのが常で、「大きな声では云えないけれど、いい迷惑でした」と。だから彼女と組む夜勤が一番疲れるのだそうです。「よっぽど、自分は何もしないで『ああせぇ、こうせぇ』と指示ばかりしている先輩の方が気が楽!」と、その友人ナースは話を締め括りました。

| | コメント (6)

率先する(前)

「デスクのパソコンくらい起動させておけよ」「メールや書類はすぐに目を通せるように整理してデスクに並べておきなさい」「オレはそんな雑用をする暇はないのだ」

どうなのでしょう。今でも、大きな組織の幹部というものは秘書さんにこういうことをさせるのがステイタスなのでしょうか?ドクターの場合は、当人の意志とは無関係に「先生さま」と崇め奉られて病院スタッフが何から何までやってくれる、というのが地方の病院やバイト先などでよく経験した昔の定番でしたが、今でもそうなのでしょうか?

「今は、偉い人でもみんな自分のことは自分でする時代ですよ!」・・・最近は普通にそう云われます。パソコンでも書類整理でも自分で管理できるようでなければ取り残されます。それができないと管理能力そのものを疑われたりします。むしろ、上の立場の人間ほど自ら率先して行うのがスマートでできる上司の条件、それによって部下もついてくるものだ、とそういう時代だと思うております。おかげさまで研修医時代や若手医師時代に事務方の方が力が上の世界で働かせていただいたわたしは、他人(部下)に自分がすべき雑用仕事を依頼することができません。、”率先する”というよりそんな立場に慣れていないというべきか・・・。 (つづく)

| | コメント (0)

糖質制限食アンチテーゼ

糖質制限食の効果はもはや否定できるものではない、ということを先日書いたばかりですが、日本糖尿病学会は「糖質制限を推奨しない」と明言しています。さらにこんなアンチテーゼが発表されました。

糖質制限食により死亡リスク上昇の可能性 国立国際医療研究センター

国立国際医療研究センター病院糖尿病研究連携部の能登洋氏らが、海外の医学論文から5年以上追跡調査をした9論文をメタ解析し、総死亡リスクが低糖質群で31%有意に高値であったこと、心血管疾患による死亡リスクが低糖質群で10%上昇していたことなどから、少なくとも糖質制限食による長期的な効用は認めないと結論付けた、というものです(PLoS ONE, January 2013, Volume 8 Issue 1, e55030)。

短期的な華々しい効果に対して長期的な人体への影響はまだわからないのだという警告を述べているのでしょう。まあこの点はレイシック手術に二の足を踏む理由と似たようなものなので、いずれにせよ10年近くたってみないとどうせ結論は出ません。そのころには、すでに過去の論争として結論が出ているのか、あるいはさらにもっと混沌としているのかは想像すらできません。ただ、極端なことは良くないだろうということと、糖質も脂質もたんぱく質も全部減らしてやったらそれで良いのではないか、ということ・・・くどいようですが、わたしにはそれ以上の良策は無いように思えてなりません。ただのマイブームではなくいつまでも続けていく”食習慣”、治療としての食事療法ではなく、楽しみと人生の活力を生み出す”食事”でなければ意味がないわけですから、あまり理屈に振り回されず、自分でやりやすい流儀をやっていったら良いのではないでしょうか。

| | コメント (0)

うつ病

終わらない仕事を残業でこなしていると、同僚がさっさと帰って行きました。「彼氏とデートの約束がある」とか。その同僚はどれだけ繁忙期でも、自分の都合で有給休暇を取ります。その分だけ、自分の抱える仕事が多くなってさらに帰りが遅くなります。

「どうして私だけ?」「あの人は、なんて無神経で自分勝手なの!」・・・煮えくりかえるような思いを抱きながらマジメに仕事をこなしている自分。疲れがどんどんたまってきているだけでなく、イライラして夜も眠れない。わたし一人が貧乏くじ引いてこんな辛い思いをして、遊んでばかりいるあの人は悪いとも思っていないだろう。それで同じ給料、同じ仕事評価って、どうよ・・・どんどん怒りのボルテージが上がります。

もし自分がそんな毎日であったら、どうぞ会社やお客様のことなど考えずに、仕事放棄して定刻で帰ってください。有給休暇は意地でも消化してください。「そんなことできないわよ。わたしがしないと仕事は終わらないのだから」と思うかもしれませんが、それを断ち切って休んでください。なぜなら、あなたはうつ病だから。あなたが仕事を放棄してもきっと何とかなります。まずは自分の治療が最優先です。

そんなお話を、先日夜中のテレビ番組でやっていました。それを見ながら遠い昔を思い出しました。だからわたしは、無理せず帰るようにしました。有給休暇も誰に非難されようとも月1回は必ず取ることにしました。うつ病が治った(自己診断ですけど)今でもそのままです。別に仕事は減りも増えもしません。ですが、イライラはほとんどなくなりました。

| | コメント (0)

わたし、死ぬかもしれない

年末から我が家の断捨離を敢行。その最終章が終わりつつあります。

20年以上前から15年近くずっと購読した犬の雑誌を年末に全て捨てました。「もったいない」と云って離さなかった妻が急に許可を出したのです。書棚に大きな空きスペースができました。

1月末に10年以上生きていたクマノミが死んだのを契機に、家中の熱帯魚関連グッズをすべて解体して整理しました。大中小合わせて6個の水槽に加えてヒーターやら冷却器やら濾過器やらいろんな付属物を全て捨てました。「もう、二度と熱帯魚はやらない!」と妻が云いました。彼女のこだわりの道楽でした。

そして、昨日の節分の日・・・最終章は彼女の部屋と寝室のクローゼットに溢れた洋服類の整理。何しろわたしのと違って、彼女の服は高価なものが多いから新婚の頃のものからずっと捨てられずに溜まってきていました。そこにやっと重い腰を上げたのです。大量の処分服が生まれました。

モノの整理が苦手で掃除がキライな彼女が、一念発起して突然こんな大きな断捨離をやらかしました。「わたし、もうすぐ死ぬかもしれん」・・・今年になって彼女がまことしやかにそう何度も口にするのです。今年は大殺界の絡みで最悪の運気だと義母が心配していましたし、デジャブが茶飯事の彼女が自ら交通事故の光景をフラッシュバックで見たというし、とても弱気になっています。

「そうね。注意しないとね」と云ったら、「なんで、『そんなことないよ!』って否定しないのよ!」と叱られました。重症です。というか、何かちょっと不気味。

| | コメント (4)

信号待ち

信号が青になるのを待っている交差点。交叉する車線の信号が赤色になり右折車線用の矢印信号も消えて目の前の信号が青に変わる。さあ出よう!としているのに侵入してくる右折車数台!

「ふざけんじゃねえぞ、ばっかやろー! そこまで信号無視するなら通報してやろうか、こんにゃろ、バカヤロー!おまえに運転免許持つ資格なんかねえぞ!おまえみたいなやつがいるから事故が無くならねえんじゃ!」と悪態をつくわたし(声には出しませんよ、紳士ですから)。

そんなわたしの仕事帰り、幹線道路の右折車線で信号が変わるのをじっと待つ。やっと信号が赤になり矢印信号が点灯する。出ようとしたらそれから交差点に進入してくる対向車線の直進車が2、3台! おかげで、わたしの2台前あたりで矢印信号があやしい!えーい前の車に付いて行っちゃえ!と交差点内に侵入したときには完全に赤・・・「だって、信号無視した直進車が悪いんだモ~ン!」と一人言い訳しながら舌を出すわたし。

そりゃ交差点の事故は起きるよ、やっぱり。みなさん、安全運転にココロ掛けましょう。

| | コメント (0)

バリアフリー

古民家を壊して見違えるような新しい家にリフォームする番組を見ておりました。匠の思い入れが満載で、それに感動するご家族を見ながらいつももらい泣きしています。

最近はとにかくバリアフリー! 無駄に高い階段や小さな段差がお年寄りを悩ませ、転倒の元になったり生活領域の制限を余儀なくさせるので、それらを可能な限り取っ払って家の中の段差をなくすように設計するのが今どきの家の常識です。20年近く前に建てた我が家も基本的にバリアフリーです(生活の場が中二階で、階段昇降なしでは生活できない我が家をバリアフリーと呼んでいいのか、ちょっと悩みますけれど)。

でも、バリアフリーは本当にからだにやさしいのだろうか?番組は、段差だらけで苦労していた90歳のおばあちゃんが「夢のようだ」と喜んでいる姿でエンディングを迎えましたが、それを見ながら妻がつぶやきました。「でも、それがリハビリだったんじゃないの?」・・・痛い膝を抱えながらも生活するために段差をこなして動き回ることが適度な負荷になっていたのに、便利になったら一気に足腰が弱るかも?と気にしているのです。たしかに高い階段や小上がりを一日に何度も使うから逆に筋肉が維持できていたのかもしれない。今どきの若者は階段があってもエスカレーターを使うから本当に筋肉が落ちているし、ロコモティブシンドロームの懸念もあるわけだから、義務的に筋肉を使わなければならない環境は老化を遅らせるのも事実。

あの90歳にして矍鑠(かくしゃく)としたおばあちゃんが、足元を気にすることなく生活できるようになった途端に、返って筋力を落として寝たきりになるかもしれない・・・そんな天邪鬼な考え方もできます。そんな理由でうちのもうすぐ15歳になる老犬ベルは毎日何度も階段の上り下りを義務付けられています。小便の度にヒーヒー云いながら必死で階段を下りています。

 

| | コメント (6)

自己採取

「今度新しい健診施設と契約をしようと思うのですが、子宮がん検診に『自己採取』と『医師採取』を選ぶようになっているのです。この『自己採取』って信憑性があるのでしょうか?」

わたしが産業医をしている企業の保健師さんから問い合わせがありました。こんな仕事をしているのに不謹慎なはなしですが、実は「自己採取」なんて方法が存在することをこの時初めて知りました。早速、婦人科医に聞いてみたら、一笑に付されました。

「まあ、大量のがん細胞が溢れていて零れ落ちている状態なら自己採取でも陽性になるでしょうけど、早期がんを見つけようとするならよほど偶然にそこに当たらないとダメ。しかも変性している古い細胞を採取する可能性も高くて、それを顕微鏡で見ても本当の姿はわからない」

恥ずかしい場所だから、自分で取って出してがんの有無が分かるなら一番!と思う気持ちはわかりますが、やはり熟練した専門医の手で気になる場所をきちんとピンポイントで取ってもらわないとお金と労力のムダだと云えましょう(婦人科医と云っても実はピンきりです。生まれて初めて検査する日はどの医者にもありますから)。でも、そんな不確実な方法が、今でも普通に堂々と行われているのはどうしてなのでしょう?医師不足であり、健診施設としても医者が居なくてもできる検査だから数多くできるし、安くできるし・・・なのだと思うのですが、相手は”がん”です。その不確実な方法で、早期がんを進行がんにしてしまう可能性がとても高く、むしろ検査を受けていないヒトより厄介です(検診を受けて「異常なし」だったと自信をもってしまいますから)。今は、数をこなす(受診率を上げる)ことを主目的にする時代ではなくなっていると思うので、とても危機感を感じました。

| | コメント (0)

« 2013年1月 | トップページ | 2013年3月 »