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心電図への期待

先日、地域の保健師さんたちの勉強会に招かれて「健診の心電図」のレクチャーをしました。頑張ったけれど、あまり分かってもられなかったかもしれません。うちの職場のナースたちも、いや、健診の医者たちも「心電図はわからないから」と、信じられないくらいの拒絶反応を示します。

思うに、みなさん心電図に異常な期待をいだいてはいますまいか?心電図を見たら、心臓の状態がわかる、と錯覚してはいますまいか?健診で取ってもらう安静時心電図には心臓についての情報はほとんどありません。何の症状もないヒトの心電図異常はほとんどの場合問題になるモノではありませんし、逆に「心電図に異常がない=心臓は大丈夫」というものでもありません。そこのところをしっかりと認識しましょう。健診の結果票に書かれている所見が何であれ、その判定が軽いのであれば、あまり問題はありません。というか、そこに書かれている所見と今の心臓の状態とは何の関係もないのです。狭心症は発作中でない限り正常所見ですし、弁膜症や心筋症でも進行していない限り大した異常を示しません。毎日動悸がある場合も心電図が正常だからと云ってその原因が不整脈や心不全ではない理由にはなりません。

「ST低下とか陰性T波とか書かれていると狭心症が心配だから運動制限をさせないといけないのではないか、と心配していましたが、その心配はないのですね?」・・・わたしのレクチャーの後、ある保健師さんが質問されました。そうです、その所見を心配する必要はありません。ただ、ちょっと厄介なのですが、「その所見は心配ない」ということを免罪符にされては困ります。「その所見は心配ない」のではなく、「その所見には意味がない(情報がない)」のです。みなさんが日ごろ相手にしているひとたちは死の四重奏です。今晩心筋梗塞になるかもしれない危険因子をもっているひとたちです。運動負荷心電図検査をしない限り、運動をさせてもいい心臓の持ち主かどうかなど何も言及できないのだということ、忘れないでください。

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