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専門家の責務

「この所見は突然死したり、急変したりする危険があります。生活に注意して、一度専門医を受診してください。場合によっては内服治療が必要になるかもしれません。」

できるだけ言葉を選んで説明します。頻発する不整脈だったり、コントロール不良の高血圧だったり。でも、本人はどうもないわけですからほとんど意に介していません。「はい、大丈夫です」・・・明らかに、「いつものことだから」「うっとうしい」「大げさな」というあからさまな顔をして聞き流されます。「仕事も忙しいですし」とも。・・・きっと自分の身体に自信があるんだろうなあと思いつつ、責任ある仕事で忙しい世代だからこそ受診してほしいんだよなと、真っ当なことを思ったりしながら、診察室を出るのを見送るのです。そして、「どうなっても知らないよ。わたしはちゃんと説明はしたんだからね」と云わんばかりにカルテに記録し、冷たい顔をしたわたしは次の仕事に戻るわけです。

こんな中のごく一部ではありますが、本当に突然死してご家族や警察からの健診結果の問い合わせを受けることがあります。「説明したことをきちんと書いておいてよかった」と胸を撫で降ろしながらもやはり釈然としない気持ちになります。説明したのに行動に移さないのは聞く耳を持たない相手の問題だけなのだろうか?まがりなりにも自分は”健診の専門医”である。”専門医”を名乗るのであれば、この不幸な結末を回避することができなければならなかったのではないか。それがわたしたちの責務なのではないのか、と。

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