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2013年6月

「痛風はビールを飲みながら・・・」

先日の学会出張中にやっと読むことができました。

『痛風はビールを飲みながらでも治る!』(小学館文庫)・・・鹿児島大学の納光弘教授が書き下ろした一冊です。痛風の専門医である著者が自ら痛風発作を起こしたことをきっかけに、自分のカラダを実験台にしていろいろ試してみた成果を本にまとめておられます。

たしかにわたしも、高尿酸血症の方には、「まあ、酒を飲まずに精進料理ばかり食え!ということですから、それはもう運命と思って諦めてください」と冷たく突き放すのが常でした。その都度苦笑いされます。そんな高尿酸血症の患者さんに目の敵にされているビールを止めなくて良い(ビール自体が本物の犯人ではない)というのは、とてもうれしいことです。もっとも、書いてあることはさほど突飛なことではありませんでした。簡単にエキスを羅列しますが、藁をもすがる思いの方々は、是非買われてお読みください。

※尿酸値上昇の3要素は、やはり1.アルコール、2.ストレス、3.体重増加です。ビールは他のアルコールよりプリン体を多く含んでいるとはいえ、大した量ではない。むしろ尿量が増える利点もある。
 ・少量(1.5合/日以下)のアルコールは、ストレス解消効果でむしろ尿酸値を下げる。
 ・日本酒換算3合/日以上のアルコールは腎から尿酸排泄を抑える(尿酸値上昇)。
 ・日本酒換算4合/日以上ではさらに体内産生も促すのでさらに尿酸値は増加する。
要するに、少量のビールは問題ないが飲み過ぎたらやっぱり悪化することに変わりはないわけです。

※ストレスはてきめんに尿酸値を上昇させる。
※食事はプリン体が多いか少ないかよりも全体の食事量の方が問題である。

ちなみに、「お酒1.5合/日」は大きなキーワードで、それ以下の飲酒量の人はまったく飲まない人より脳卒中になる率が低いのだそうです(血圧を下げ、善玉コレステロールを増加させるから)。ノンべは、こんなデータをいつも待っているのです(笑)

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学会場

学会には一人で行くことが多いわたしは、前夜のホテルか当日朝の出発前に初めて学会プログラムを開けて学会場までのアクセスと会場内の配置をアタマに中に叩き込みます。いくつになっても見栄張りなので、オロオロ、キョロキョロすることが苦手なのです。

会場までは大体迷うことなくたどり着けます。「青い鳥」のチルチルミチルのごとく、途中の建物やコンビニの場所も同時にインプットしていきますので、学会が終わるころには会場付近やホテル周辺の街の様子を何ヶ月も前から住んでいる人間並みに把握できるのがわたしの特技のひとつです。

ただ、会場内となるとなかなか一筋縄でいかなくなります。見取り図で前もって思い描く風景と実際が違うこともあるのですが、人ごみの中で舞い上がっていてもキョロキョロしたくないものだから、一気に視界が狭くなってしまうのです。そうするとプチパニックになって、とんでもない方向に歩いて行ったり、現在地が分からなくなったり・・・冷静を装っていますし、知った人はほとんど居ないので誰も気づかないし、第一、誰も気にもしてないと思いますが・・・。なので、先週末にあった日本脳ドック学会ではいつもより若干早めに受付を済ませた後、まずとりあえずトイレを探しました。まず、トイレ・・・気を落ち着かせるというよりも、一旦傍らに回って横から全体を俯瞰する感じにしてみたのです。これは意外に良い感じでした。目的の会場がどこにあるかをプログラムで探すより、実際に横から眺めた方がよくわかるもの。今まで「意図は理解できるけどわかりにくいでしょ?」と文句を垂れることが多かったけれど、客観的に眺めてみると「限られたスペースをうまく工夫して使っているな」と気付いて、妙に感動などするのであります。

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生涯健康脳

東北大学には東北メディカル・メガバンク機構というのが作られ、大規模データベースを元に健康的な脳のあり方が研究され始めました。今回の第22回日本脳ドック学会(仙台市)のシンポジウムでは同機構の瀧靖之先生が、脳萎縮の評価と予防について話されました。

アンチエイジングの考え方の中で、脳の老化そのものは避けられないものですが、そんな中から認知症になる可能性を画像形態の変化する部位や程度で早期に指摘できないか検討されています。この作業をする上で一番大事なことは、健常な脳の発達と老化がどういうものであるかをきちんとデータとして蓄積させることなわけです。

このお話を聞きながら、結局わたしの心に残ったのは・・・大脳灰白質の体積を測定することで分かってきたこと。
※酒は認知機能を低下させる。特に日本人は脳萎縮を促進させる。
※中年期の肥満は、高齢者になって脳が萎縮しやすい。
※慢性炎症は脳萎縮と明確な相関関係にある。

一方、体積の減少を抑制させる因子は、ここでも何度か書いてきたことです。
※知的好奇心を持つ。運動や趣味や社会とのつながりを持つこと、つまり高次記憶の機能が保たれることが大切。
※脳の可塑性、作業記憶。脳の機能はトレーニングを続けることで回復できる。
※有酸素運動や楽器演奏は認知症の最大の予防策。

今後、MRIなどで大脳灰白質体積を測定したり生活習慣や認知データを取ることによって脳萎縮や認知が予測できるようになるかもしれません。さらに遺伝子解析も含めて、より個別の予測ができるようになることが期待されます。

蛇足ですが、子どものころの脳の発達に影響を与えるのは、睡眠と朝食だそうです。これまた今のわたしの対極にあります。

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エスカレーター

1年前から自分の講演でよく使っている一枚の写真スライドがあります。

アメリカのあるフィットネスジムのエントランスが2階にあって、そこに上っていく場所付近の写真です。アメリカ人らしい太ったおじさんが2人、タオルを片手に上っているのですが、中央に大きく配置された階段に見向きもせず、二人とも脇にあるエスカレーターを使って上っています。わざわざダイエットの目的でフィットネスジムに着ておきながら、最初から階段を使わずにエスカレーターを使う・・・ここに人間の性があります。「人間には運動欲がないからしなくていいことはできるだけしたくない」の典型的な光景です。という説明をするために作られたスライド・・・これを話すと必ず場内がドッ沸き、その後にお互い顔を見合わせながらザワザワと苦笑いをする空気になる・・・場を和ませる鉄板アイテムです。

でも、実はこの写真の真実はちょっと違うのだと思います。彼らはエスカレーターを歩いています。ただボーっと立っているのではなく歩いています。できるだけ早くジムに行きたいからこっちを使っているのだと思います。こんなところに来ているのを外から発見されたくないのかもしれませんし、人気のマシンに予約が殺到するかもしれないから、あるいは予約時間に遅れそうだから、などいろいろ理由は考えらえます(それなら階段を走って上がればいいじゃないか!と他人事のあなたはそう云うかもしれませんが)。つまりこれは必ずしも運動嫌いの行動というわけではないと気付いてしまったので、とてもおいしいスライドですが、そっと除けることにしました。

ちなみに、都会の長いエスカレーターでは一列に立っているヒトたちの横を足早に歩いて抜いて行くヒトがたくさん居ます。「忙しがり屋さん」とか「多動症児」とわたしが陰でこっそり呼んでいる人種の方々ですが、彼らもこの移動で無駄な時間と労力を費やしたくない、と思っての行動なのだろうと推測されます。

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折り合い

一年に二回、わたしがドキドキする日があります。夏スーツを着始める日と冬スーツを着始める日です。それが昨日でした。日ごろスーツを着る生活を送ってないわたしがそれを着るのは年に何回かの講演のときと学会のときと公式のパーティなどのときだけなのですが、お腹の成長が日々著しくなった昨今、確実にウエストがキツキツになって、入るかどうか微妙なのです。

朝何も食べていなくてこのお腹のキツさ・・・昼飯食ったら絶対入らなくなるでしょ!と必死に腹を引っ込めながら自己嫌悪気味に出勤するのですが・・・不思議なもので、着ているうちに何となく”折り合い”がついてきます。なぜだかよくわかりません。確実に成長を遂げたわたしのお腹の脂肪と久しぶりの出番で張り切っているズボンの生地とが、最初は決まった位置関係を主張してギスギスしているのですが、擦れ合っているうちに微妙に位置調整をしたり、脂肪のシフトを試みたり、あるいは繊維を目いっぱい広げたりして、職場に着くころには何となくしっくりきて、何とかなります。

社会生活においても同じようなことはよくあります。この人とは絶対合わない!一緒に仕事をするなんて絶対無理!と思っていた人とも、やむを得ず付き合っていくうちに互いに少しずつ妥協し合って、なんとなく折り合いがついてなじんでいく。傍から見ても絶対無理だろうと思っていた二人が普通に仕事の成果をあげていくとか、一緒にサークルの意見をまとめていくとかいう光景・・・これは自己の主張だけでは絶対に解決しない問題です。お互いがお互いを尊重して妥協し合うプロセスが必須です。そこに一番重要なことは「社会とのつながり」なのだと思います。現代人はネットなどのバーチャル世界ではつながっているように見えて、現実世界では皆各々に孤立し、周りと関わり合うことを異常に面倒くさがります。最近の殺伐とした犯罪ニュースを聞くにつけ、もうちょっとお互いに直接関わりあっていたら、こんな悲惨な事件は起きなかっただろうにと思います。

もっとも、そんな折り合いとなじみの心地よい関係にも限界はあります。わたしの場合は、カラダをもう少し縮めるか新しいスーツを新調するか、どちらかが急務です。

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学会抄録

今週の金曜日から日本抗加齢医学会総会が横浜で開かれます。なかなか学会抄録集がこないなあと思っていたら抄録CDRが送られてきました。職場にきた電子メールによると、「第13回日本抗加齢医学会総会ではインターネット環境下でパソコン、iPad、スマートフォンからアクセスができるWeb抄録集を展開します」とのことで、「既に告知の通り、抄録集・プログラムの印刷物は作成しておりません」・・・覚悟はしていましたが、日本抗加齢医学会はとうとう完全ペーパーレスで行われます。

最近は学会場でも普通に小型パソコンを広げて、学会Webサイトから各演題の下にメモを打ち込んでいる先生方が何人もおられます。学会場内が無料Wi-Fi環境であるのも当たり前になろうとしていますし、時代にはついていかなければなりますまい。タブレットも小型パソコンも持たないわたしも、とりあえずはi-phoneで展開できるようにと会員登録やログインに悪戦苦闘。ああじゃこうじゃひとりで騒ぎながら何とか準備はしましたが、小さくてよう見えん! 現場で自らプリンターで両面印刷した抄録集を持ってうろうろするのもきっと見苦しいからできないだろうな、と思う次第・・・昭和のスタイルはだんだん肩身が狭くなっていきます。

もっとも、卒業論文は手書きでなければならないと云われていた時代、学会抄録は手書きでもワープロでも良いが必ず所定の紙に印刷して郵送でなければならない、と規定されていた時代・・・今の皆さんはそんな時代があったことすら信じられないのだろうなと思いますので、もうすべての学会にWeb抄録の時代が来るのは時間の問題でしょう。しかしそうなると、別に高い旅費を払って一同に会さなくても、Web学会(テレビ討論)で十分通用する時代になったんじゃないのかしらとも感じております。

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好きで好きでたまらない

「タバコがカラダに悪い」の風潮の中で、「実はタバコがカラダに悪いというしっかりしたデータは存在しないのだ」というある医師の文章を最近読みました。

それはそれでどこかで論じ合ってもらうとして、わたしも喫煙者の一人であった者として時々考えるのですが、「タバコが好きで好きでたまらない。吸えなくなるくらいなら死んだ方がましだ!」というひとはこの世にいるのでしょうか?『タバコをやめる気がない』というひとの中には、「止めた方が良いのだろうけど止められない」とか「タバコによってストレス解消ができているから止めない」とか、あるいは「タバコを止める必要性を感じないから吸う」とかいう理由付けはたくさん聞いてきましたが、「もう好きで好きでたまらないから」というのを聞いたことがないのです。もちろん中毒ですから、ニコチン切れして来たら吸わずにおれなくなりますけど、最初の一吸い以降に「気持ちいいなあ」と恍惚の表情を続けているひとなどいないのではありますまいか。「麻薬中毒と同じ」とは云うけれど、大麻を吸って恍惚の時間を費やしたり、あるいはセックス依存症の方々のそれと、タバコとは全然質が違うような気がします。狂牛病で吉野家の牛丼が食べられなくなったときに「牛肉がなくなったら僕はもう生きていけない!」と嘆いていた若いサラリーマンの方が、アイドルや韓流スターの追っかけに似た切実感を感じます。

大して好きではないけれど、止める理由がないから続けているんだ。あるいは、まるで罪人扱いされるのが癪に障るから止めてやらないんだ。それが何か? って、そんな感じですよね、きっと。

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先天性左室肥大

人間ドック受診者の中年男性。心電図で広範囲の大きな陰性T波所見がありました。これに関しては「以前、専門医で精査を受けて『おそらく先天的な心肥大だから心配いらない』と説明された」という問診コメントがあったので精査指示は出しませんでしたが、糖代謝が『要医療』の判定=つまり「糖尿病だから治療を受けてください」のために結果説明に回ってきました。糖尿病となると、やらなければならないのは運動と食事療法。できたら触れたくなかったのですが、そうなると、運動をしてもいい心臓なのか?ということになり、この心電図異常を「先天的な心肥大だから大丈夫」などといういい加減なことばで済ますわけにはいかなくなるのです。

「先天的な心肥大だから心配はない」ということばは明らかに間違いです。後天的な肥大であれば生活を改めたり薬を飲んだりしたら良くなる可能性はありますが、先天的なもの(代表的なものが”肥大型心筋症”)は生活態度の問題ではありませんから、治しようがありません。でも、突然死の原因としては比較的高い比率を占めますし、生徒の体育の授業中の突然死や運動選手の突然死などの中には多くの先天的心肥大が隠れています。

この方の場合はおそらく、どこかの健診の心電図検査で「虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)疑い」という判定が出たから精密検査が行われたのだと推測されます。「精査の結果、この心電図変化は心筋が肥大しているためで、狭心症や心筋梗塞の心配はない。心筋肥大の原因は高血圧や過度の運動などによる後天的な変化ではないだろう」というニュアンスの説明をされたのではないでしょうか。これから運動療法をしなければならないカラダにとって、この心臓は厄介です。定期的に運動負荷心電図検査や心エコー検査を受けながら、運動制限が必要ないのかどうかを毎回評価した上で、糖尿病の運動療法をしなければなりません。必ず、循環器専門の主治医を持ってもらいたい、と説明しました。

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霊感

この歳になっても、夜中のトイレが怖いと感じることがあります。暗いトイレのスイッチを点けても、洗面所の前にある鏡の中をみたくないなと思うときがあります。それはトイレに限りません。二階の部屋を出て階下の暗闇に向かうとき、昼下がりや夕方の薄暗い玄関フロアに一人で佇むときなど。

そこに何もないことはわかっていますし、同じ時間、同じシテュエーションでもどうもないときはどうもない(どうもない方がもちろん多い)のですが、怖いテレビ番組や読み物を読んだとか亡き知人のはなしをしたとかいうのではないのに、「いやだ」と感じるときがあります。

『幽霊の正体見たり、枯れ尾花』・・・わたしはいわゆる霊的なものに何の疑いもありません。時空を超えてうろうろする女性を妻にして25年、そういうことは何の抵抗もなく受け入れることができます。それでも、わたしが怖いと感じるアトモスフェアの大部分は枯れ尾花なのだと思います。ただ、相手だって嫌がることはしたくないのだから、わたしが「見たくない」と思っているときは出てこないのが礼儀(怨念で出てきている場合は別ですが)だから、「何かイヤ」と感じるときは、自ら会いたいと無意識に思っているかあるいは相手がちょっと用があって会いたがっているときなのではないかと思うのです。ところがわたしは凡人だから、目で見ることができずに空気感だけでしか感じられないのではないか、と。

ということは、「怖い」「何かイヤ」と思うときには、やっぱりそこには何かが何かを訴えようとしているのかもしれません。あーやだやだ、こんなこと書いたら、今夜も思い出してしまう。

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何のための健康

もうすぐ定年退職だから、今は忙しいけれど退職して時間が出来たら運動や食事に心がけて健康的な生活ができると思います。そうなったら、もっと節制して長生きできるように頑張ります。

そういう考えのひとがたくさんおられますが、退職して悠々自適な生活が始まってから「健康のために頑張る」人生とは、どんな意義があるのでしょう。この日が来たときに自分が好きなことを思い切りやれるように、そんな人生を送れるように「頑張る」日々ならもう少々若いころのはなしです。いよいよ本番を前にして今から準備を始めるのでは、苦行の継続でしかないような気もします。

学校教師をしていたうちの母は53歳で依願退職しました。当時の定年は55歳でしたが、同業の夫が管理職に昇格するときには妻が早めに退職するのが慣習でした。母は、ずっと働き尽くめでしたから、「やっと好きなことができる」と退職を前向きに受け入れ、たくさんの菊作りを始めました。菊作りに詳しいお年寄りがいると聞けば出向いていってノウハウを教わりました。三重県に嫁いでいった姉の家を訪れたり、大学生だったわたしの下宿にひょっこり顔を出したり・・・・まるで、犠牲にしてきた青春を大急ぎで取り戻しているかのようでした。母は結局その2年半後に他界しました。胃がんで入院していた期間を考えると、退職後の悠々自適な日々はとても短いモノになりました。志半ばでやりかけのままだったことはまだたくさんあったろうと思いますが、それでも短いながらに「良い老後だった」と云えたのではないか、と思っています。

定年退職後の残された人生が何年あるかは誰にもわかりません。好きなことをやれるだけの準備を退職後に始めるために、今までしたこともないジョギングを毎朝黙々と始めるのであれば、せめて1年後の市民マラソンに出場するために頑張る!くらいの近場の目標で頑張った方がいいと思います。

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ライフサイクルプラン

ある組織では、定年になる3年前の皆さんに、退職後のライフプランの準備をする研修会が行われています。ここ数年、わたしはこの研修会で健康管理についての講演を依頼されています。

1時間の制限時間で話せることと云えば、当然、生活習慣病の予防のはなしになります。動脈硬化のメカニズムや糖尿病の怖さを解説し、今のうちから運動と食事を意識して改善させる必要がある、自分を甘やかしすぎてはいけない、皆さんは急性心筋梗塞で今夜救急搬送されてもおかしくない状態なのだよ、と脅しながら・・・。

ところが最近、毎年講義の準備をするたびに少しずつ気持ちが変わってきている自分に気づき始めました。そんな病気のことなど大したことではない感じがして、あまり強調する気になれなくなってきているのです。それはおそらく、自分が対象の方々の年齢に近付いてきたからだろうと思います。今までは理屈で説教していました。人生を全うするにはこうあるべきだ、と。でも、この歳になってくると、病気になるかならないかということよりも、如何に良い人生を送って最後の締め括りをどういう形にすることができるかということの方が意味が大きいと思うようになってきています。

ですから、今年は病気の説明は簡単に済ませて、より楽しい人生を送ることのできる方法を、模索しながらわたしなりにいくつかお話ししようと思います。

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グリコヘモグロビン

「先生ちょっと教えてください。ヘモグロビンというのは赤血球の中でしか存在しないんでしょ?HbA1cはどこにグルコースがくっ付くのですか?」

糖尿病の指標としてグリコヘモグロビン(HbA1c)というものがあります。赤血球の中に含まれるヘモグロビン(酸素を運ぶ)というタンパクにブドウ糖がくっ付くわけです。長時間の高血糖状態が続くと血管内のブドウ糖が体内のタンパクと結合する性質があるのです。でも、ヘモグロビンはヘモグロビンだけで血管内を流れているわけではなくて赤血球内に含まれるわけで、どうやってブドウ糖がくっ付くのだろう?たしかに考えてみるとイメージが湧きませんが、そんなことをイメージしようとしたこと自体がないので、すぐに明快に答えることができませんでした。

ネットで検索してみたら、血管内にヘモグロビンとブドウ糖がハダカで結合している絵が出ていましたが、これは違うだろ!と分かります。どうしてもイメージが湧かないので職場の検査室のスタッフに聞いてみました。「グリコヘモグロビンの説明をするとき、わたしは梅酒を例えにして話します。長い時間が経てば経つほど味がしみ込んでいきますが、この状態と同じだ、と」・・・一瞬分かりそうでしたが、今それを書きながら、「よく分からねえな」と思ってしまいました。

こういう予想だにしない質問って、ときどき聞かれてドギマギします。「赤血球にブドウ糖がくっ付いているから重くて血液がドロドロになるんですかね?」「120日の赤血球の寿命が来て破壊されるとき、くっ付いていたブドウ糖はどこに行くんですか?また血管内を浮遊するんですか?」とか、次々やってくる質問・・・正しいか正しくないかすら想像できません。どなたか真実をご存じなら分かりやすく教えてください。

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腹が出たからサウナ?

「先生、サウナはいけないんでしょうか?」

わたしが産業医をしているある企業の従業員の男性にそう質問されました。高血圧症なのになかなか通院をしてくれないこの男性は今年になってさらに糖代謝や脂質代謝も異常になってきましたので、そろそろ観念してかかりつけ医を見つけた方が良いのではないか?と説得するためにお呼びしたのです。

「サウナは好きですか?」・・・私たち循環器科医は絶対サウナを薦めません。急速に脱水が進み、血液がドロドロに淀み始めるのが分かっているからです。でも、サウナ信者の方は少なくありません。自律神経を鍛えると血圧は安定するとか、減量するにはサウナが一番良いとか、彼らはそんなことをまことしやかに云うのですが、メタボや高血圧の人にはできたら避けてほしい世界だと思っています。

「サウナなんて全然入らなかったけれど、腹が出始めてからサウナを使うようになりました。『腹を引っ込めるにはサウナが一番いい』と友人が薦めたものだから」・・・わたしには初耳な情報でした。腹を引っ込めるのにサウナって良いんですか?腹の力を抜いて猫背で座っているのがサウナのイメージです。腹が一番引っ込まない格好だと思うのですが・・・。

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何でしょう?

「月に1、2回、急に右の下腹がキリキリっと痛むことがあるのですが、何でしょう?」

ある女性からそう相談されました。「婦人科かもしれないと思って検査してもらったけれど異常はなかった。胃カメラを受けたけれど異常はなかった。大腸の検査もしてみた方が良いでしょうか?」と。

こういうことは意外に良くあります。いつも同じような症状があって不安になるけれど、病院に行っても「異常はありません」と云われること。各臓器の専門家たちは検査結果に「異常がない」ことだけしか伝えません。検査結果に異常がないから、それは「これのせいではない」とも云いません。決め手が何もないからです。当の本人は不安なのでさらにいろいろ検査を受けようとしますが、受けたところできっと大した異常はみつからないでしょう。異常が見つからないことは良いことなのに、返って不安になります。でも、原因になりそうな臓器の検査をして「異常がありません」「症状の原因になるような所見はありません」と云われたら、とりあえず急を要する状態ではないことにココロを納得させるしかないかもしれません。この方の場合、一番可能性があるのは腸のガスが溜まって腸の壁を押し広げていることだと推測されます。

カラダからの警告はいつもそんなあやふやな態度です。もう一人、「疲労がたまると背中が痛くなる」という女性にも相談されましたが、やはり検査をしても異常が見られず、状況証拠として慢性膵炎ではないかということで治療を受けておられました。これもまた、本当の理由ははっきり分かっていません。結局どうしたらいいか・・・「疲労がたまらない生活に心掛けること」でしょう。カラダからの警告は、その原因を探すことよりも、それを起きないようにすることを求めているのではないでしょうか。

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一過性脳虚血

有名アーチストが罹って話題になった一過性脳虚血発作が朝のワイドショーで取り上げられていました。若くして急性心筋梗塞に罹った先日の女優さんも今回のミュージシャンも、この病気に罹るには若すぎる印象があります。翻って考えれば、現代社会の生活環境がこれらの病気を若年化させていると云えるのかもしれません。

「虚血」というのは各臓器の組織に十分な栄養(組織の場合の栄養は”酸素”)が行き届いていない状態のことです。普通は酸素を運ぶのが動脈ですから、動脈が何らかのトラブルで十分な酸素を運べなくなると各臓器が虚血発作を起こすことになります。脳の場合は「一過性脳虚血発作」、心臓の場合は「狭心症、または心筋虚血」です。ただ、「虚血」ということばが出ると必ず「動脈硬化」「生活習慣病(高血圧・脂質異常・糖尿病・メタボリックシンドローム)」が取りざたされ、乱れた生活のツケで動脈が詰まって起きると強調されます。でも、現代人はむかしほど乱れた生活は送っていません。10代、20代の若者は確かに信じられないほどの乱れた生活を送っていますが、40歳以上の方は意外なくらいにマジメに食生活に気を配り、適度な運動をするように心がけています。若年性の臓器虚血が起きるようになってきたのは、おそらくそんなWikipediaに載っていそうな教科書的理由ではなく、過労や脱水や体内リズムの乱れ、つまりは24時間不夜城のように活動することができる社会環境や温暖化~熱帯化の異常気象やそれらの影響を直接受ける自律神経系の不適応に誘因の主体があるような気がしてなりません。

ちなみに、狭心症と違って、一過性脳虚血発作はほとんどの場合、状況証拠しか残りません。脳梗塞の症状があったのにすぐに治って検査しても異常がないときに、「たぶん犯人は脳の虚血だろう」ということになります。だからその後ずっとアスピリンなどを飲む羽目になります。梗塞になったらスワ大変とばかりにマジメに飲み続けますが、意外に生活は改めないものです。経験のおありの方はくれぐれもご用心を。

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挨拶

昨日、職場でコミュニケーション術の講義を受けました。熊本で活躍するOffice View代表の藤原千晶先生の講義でした。

「感情を作る3要素」「第一印象」「笑顔の作り方」「挨拶の仕方」などの90分の講義はとても楽しい時間でした。そんな中で、先生は全く触れもしませんでしたが、配布された資料からわたしがココロを止めたのは、「挨拶は良い人間関係を作る」というスライドの中の2行でした。

挨・・・自分の心を開き、相手を受け入れる

拶・・・相手の心に近付き、相手を理解する

「挨拶」ということばの意味がこういう組み合わせだったことに、「なるほど」と思いました。そして、相手とのコミュニケーションのために挨拶が如何に大切かということを今さらながら再確認させていただきました。

「聞いたはなしの内容の26%しか翌日まで覚えていないから自分の目標を紙に書いた上で声に出して宣言しましょう」という藤原先生のお話を受けて、わたしは、「『はい』と『ありがとうございます』ということばを積極的に使う」と宣言いたしました。

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同じこと

気付いてみたら、最近同じことばかり書いています。

思いついた端からメモして、忘れないうちに文章にする毎日なのだけれど、以前書いた記事を探すために先月と先々月の記事を眺めていたら、全く同じ題材の話が別の日にアップされて出てきました。たとえば、先日前編と後編にわざわざ分けて書いた大作「目標体重」はあの時初めて書き連ねた気分でしたが、実は5月に同じ「目標体重?」という題名で似たような内容の記事をすでに書いていました。お読みいただいている読者の皆さんはとっくに気付かれていたことでしょう。

ヤバいですね。昔も同じような記事をアップしかけたことはありましたが、必ず検索して、文章が出来上がっていても二番煎じの文章だったら削除していましたのに・・・最近はそんな面倒くさいことほとんどしません。何よりも、検索云々の前に、「これ昔書いたかもしれない?」と気付くこと自体がなくなっています。いつも酔っぱらって書いているせいか、それともそのために脳が溶けているせいか、よく分かりませんが・・・。

ま、いいんじゃないですかね。どうせわたしの無料独り言コラム。刹那刹那に生きているのだから、「過去のことなんて関係ねえぜ!」ってなもんで。少なくとも、読者の皆様、間違っても「これこないだ読んだやつと同じだで」みたいなイケズなコメントはなしでお願いいたします。

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続・信号の哲学

交差点の30~50m手前で歩行者信号が点滅から赤に替わったのに気付きました。「あ、交差点に入る前に黄色から赤になるな!」と認識したわたしは、バッグミラーで後続車がいないことを確認した上で徐(おもむろ)に減速しました。すると、その横の車線をスピードアップした軽自動車が黄色信号の交差点に突っ込んで行きました。ここまでは想定内でしたが、さらにその後ろの普通車もそのままくっついて入って行ったのにはちょっと驚きました。

このシテュエーションでブレーキを踏むかアクセルを踏むか。
ブレーキを踏んだ自分の横を信号無視の突っ込んでいく車に何を思うか。

勝った負けたの表現は適切ではないかもしれませんが、自分がきちんと停まる準備をしている横をいく車に「あ、こいつ突っ込むな」と思っていると案の定スピードアップするわけで、それを目で追いながら、「行けることくらい分かっているさ。それでも停まったんだ。いいさ、行きたいやつは行かしておけば」と思う。むかしはそれを、「負けた!」と思ってくやしがっていたし、「あいつは交通違反じゃないか!」「こんなやつがいるから事故が起きるんだ!」と怒っていました。今でもわたし自身がむかしみたいに突っ込むことが時々あるのだけれど、なにかそんなことをする周りの若造のこと(暦年齢ではありません)が、どうでも良くなってきています。ちっとも悔しくありません。

このリズム大切だよな。行き急がない、食べ急がない、云い急がない、打ち急がない・・・そうそう、このリズムがゴルフスコアアップの基本だ(笑)。

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なぜ生検した

「一か月前に他の病院で胃カメラをしたときには『異常なし』と云われたのに、今日の健診では生検された。一か月前に正常だったものが急に「びらん」を起こすなんてあるはずがない。ムダに生検したのではないのか?」・・・ある男性からそんな信じられないクレームが寄せられました。

その数日前には、「毎年健診を受けている。毎年同じ診断名で何もしてないのに、今日は生検された。なぜ? がんの可能性は何パーセントあると考えて生検したのか?検査過剰ではないか?」というクレームも。

こんな理不尽なクレームに対応した先生は本当に災難でした。「胃びらん」なんて瞬時に出来上がります。毎年同じ診断でも場所も程度も全然違います。早期胃がんはそんなびらんの中から生まれます。そんなことは当たり前ですし、「問題がありそうなら生検します」に同意してサインまでしたんでしょうに。健診の胃カメラのときの生検は本当に神経を使うだろうなと思います。検査する消化器科医の経験も影響を受けますが、外来で胃の調子が悪いヒトに検査をするのと違って、ムダにやって事故が起きるといけないし、かといってやらずにがんになったらそれこそ訴えられます。大変な仕事ですな。内視鏡医の先生方、毎日ご苦労様です。

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カミングアウト

わたしは風呂が大キライです。面倒くさいからです。大汗かきですけど、別に汗が引けばそれでOKだし、汗かいたときに風呂に入ったら一層暑いし、寒いときに裸になるのも面倒くさい。

歯みがきもキライです。面倒くさいからです。毎食後にせっせと歯みがきしている方々を見ていると、潔癖症だなあ(あるいは不安神経症)と思います。人間、歯みがきを始めたから歯周病のヒトが増えたんだってよ(ウソ)。

社会人として、風呂と歯みがきをしないと野蛮人扱いされて引かれてしまうからしかたなくやってますが、もしも社会から隔絶された生活をすることになったら、あるいは無人島に一人で暮らすようになったら、絶対何もしなくなるでしょう。

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真偽

情報の氾濫する中で、たとえばfacebookやLINEなどで誰かがある情報を発信したとします。「ある友人からの情報によると、驚いたことに、本当はこんなことが起きているんだそうです」と。すると、すぐにこれに呼応して「それはガセネタです」「その情報は有名な都市伝説です」と誰かが必ず否定情報を流してくれます。

こういうとき、それを傍観しながら「へえそうなんだ」「え、そっちが正しいの?」と情報に右往左往するわたしたちは、結局最後の否定情報を鵜呑みにします。でも、その情報は正しいとどうして信じるのでしょう。「こういう記事が正式に発表されているからです」と添付されているその記事自体の真偽を誰が保証するのでしょう?インターネット時代の現代、簡単に検索ができます。キーワードを入れると瞬時に膨大な情報が得られます。いつの間にか私たちはその検索上位で書かれていることや有名なサイトで書かれていることはきっと正しいと思ってしまう(WikipediaやYahoo知恵袋などはその代表)のですが、真偽は分かりません。昔は、図書館で正式な書物を読み解いたり、専門家を訪ねて聞き取らなければ正解は得られませんでしたが、今は手軽です。でもその裏付けを取るのは、実は今の方がはるかに大変だと思います。

国や企業や自治体などが発信する否定情報(「そういう事実はありません」「それは根も葉もない噂です」)なら信用できるか?というと、不思議なことに、きっとこっちの情報の方が信用されませんね。国や企業は何か隠しているに違いない。事実をもみ消そうとしているかもしれない。火のないところに煙は立たずだね、と。ヒトは、相手やそのシティエーションによって簡単に信用してしまうところがあるので要注意です。最近は「これは間違いないでしょ」と思うような情報がすべて偽物であったりするのが詐欺の手口です。逆に感心します。

「間違っているにしろ正しいにしろ、あんたの云うことなら信用する」と云われる人間になりたいものです。

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力量評価

健診結果の説明をしていると、妙に詳しい質問をされることがあります。
「こんな所見がでる頻度は何パーセントですか?」
「この所見が悪性の可能性は何パーセントぐらいですか?」
などなど・・・わたしは、知らないモノは知らないと答えますが、結局これは相手の力量評価(品定め)なんだろうなと思います。

うちの妻は、車屋さんに一見の客として行くときは、車の前に立つなり最初に「エンジンルームを見せてください」と云います。そして、あーだこーだとわたしにはチンプンカンプンな質問をショップのスタッフに浴びせますが、いくつか質問した時点で黙って聞き流し始めたら潮時です。さっさと店を後にします。

「あの人はパンフレットに載っていること以上の知識をもってないから話しても時間の無駄!それだけならパンフを読むかインターネットで検索すればわかる。わたしはもっと深い情報を知りたくてわざわざ足を運んでいるのに・・・」と、バッサリ切り落とします。その明快さには感心します。

こういう知識量の力量評価を相手が求めている場合は、あまり見栄を張らずにさっさと詳しい人を呼んできて担当を替わることが、たぶんお互いの幸せのためには肝要です。ただ、わたしたちの仕事の場合は、こういうタジタジさせられる質問を受けることが、深く勉強し知識を増やすきっかけになります。なんでもすぐに専門家へ専門家へと逃げていると、どんどん自分がカラっぽな人間になっていきますので、こういう経験はチャンスとして考えることにしています。

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サイズ

衣類の買い物をするときに悩むのはサイズ。特に簡単に試着できないシャツ類です。

若いころのわたしのカラダは絶対的にLL(XL)サイズでしたが、7~8年前に約10kgやせたときにそんな服が全部ダボダボでみっともなくなったので、その後はずっとLサイズを選んできました。

最近だんだん緩いカラダになってきて、昨年の秋にユニクロでLサイズのアンダーシャツを買ったらピチピチで胸を広げられませんでしたので、先週、新しいAIRismを買うに当たって、その教訓からXLサイズを買ってみました。ところが、早速着てみたらやはりデカい。この手のアンダーシャツがこんなユルユルではいけないのでは?と思う。でも、同時に買ったLサイズのポロシャツはピッチピチ・・・お腹辺りのシルエットがちょっとみっともなくて、凹みました

ん~難儀。今のわたしのカラダは、XLサイズではデカすぎるけどLサイズでは小さいのだな。その中間はございませんか~?やはり、カラダの方を服のサイズに合わせるしか手はないのでしょうかね。

しょうがない、不本意だけど、頑張って太るか!(笑)

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読影

現在、総合健診医を目指して、日々眼底所見の読影を研修中(一次読影実施中)です。眼底というのは目の奥の網膜が張り巡らされている部分ですが、健診の眼底検査は、動脈硬化の評価(カラダの中で唯一、外から直接動脈を見れる場所が眼底)と緑内障の存在(乳頭陥凹拡大や視神経束欠損などの所見)、黄斑変性や網膜出血のチェックなど、確認するべき所見は限られています。

これまで、網膜の小さな出血斑をなかなか見つけられず、最終判定をフィードバックしていて自分では見つけられなかった出血所見が指摘されていると凹んでいましたが、それが最近なぜだか見つけられるようになってきました。特に何をするわけでもないのですが、眼底写真をながめていたら、所見側から勝手にわたしに手を振ってくるのです。「あれ?何か違う?」と思って拡大してみると、前回の写真にはなかったところに出血斑らしい影が存在しているのを見つけることになります。

「見えるようになる」とは、こういうことなんだな!と実感。これが”経験値”というやつなのでしょうか。「どうしてそんなものに気付けるの?」「そんな所見に気付くなんてわたしには絶対ムリ!」・・・心電図判読で、他科出身の先生方がすぐにそう云うのを聞きながらとても不思議でした。「そんなもの、見たらすぐわかるでしょ!」と突っぱねていましたが、やっとその意味が分かってきた気がします。

そうか、経験値か。これから、もっとたくさん心電図を読んでもらおう!

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目標体重(後)

(つづき)

「頑張っているけどなかなか目標体重にたどり着けない」と悩んで相談する方がたくさんいますが、考えてみてください。あなたのその目標体重って何?「理想体重」から割り出した体重?自分がこうなりたいと思い描く体型の体重? では、「理想体重」って何? BMI=22になる値? 腹囲が85cm以下になる値?・・・その値自体が間違っているのじゃ?と思わないですか? 

同じ身長、同じ性別、同じ年齢なら、理想体重がみんな同じという発想そのものに無理があることくらい、みなさん絶対感づいていますよね。その人その人の理想体重は、その筋肉量や代謝量や生活様式や体質やでみんな違うのが当たり前、ということはみんな分かっています。その人の理想体重は、おそらくその人のカラダだけが知っています。じゃあそれをどうやったら知ることができるか?それがプラトーです。自分なりの節制をして自分なりの運動をして良い感じのシルエットになっただけではなく体調も良くなったのに、なかなかあと少しが落ちない、という方。減食も運動も自分なりに頑張っているつもりなのに増えも減りもしないという方。きっとそこがご自分のカラダが求めたキープ線です。「もうちょっと努力が足りない」とは思わないことです。本当に努力が足りない方は、同じことをしていても必ず体重がどちらかに動き始めます。プラトーがまた動き始めたときはご注意ください。

計算式で求めた数字が本人にとっての理想値だとは限らない!各人各様の理想値はあるのだ!とアタマでは分かっていても、目の前にデジタル表示の数字が示されると人間弱いモノで、何とかそのラインをクリアしたいと思います。クリアできるのが「出来た人間」で、できなのは「ダメな人間」と、つい思いがちです。目の前の数値よりはるかに多くてもはるかに少なくても、自分が良い体調で、歳をとっても数値が全然変わらないのだとしたら、それはあなたのカラダが求めた理想値だから、あまり気にしない方がいいと思います。

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目標体重(前)

「わたしの理想体重は○○kgだからあと●kg減らしたいんですよね」「あなたの体重はあと△kg減らすと目標に達しますから頑張りましょう」

まあ、メタボの健診が始まるはるか前から、体重は人類の最大の関心事であり、現代社会は得てして減らせる人間がもてはやされます。健診現場ではとにかく理想体重があり、各人が自分の目標体重を設けて、それを達成すべく行動計画を立てます。そして日々血の滲むような努力をするわけです。

体重に限らず物事のバランスというものはインとアウトの単純な引き算です。どちらかが多くなれば自然とどちらかに傾き始めます。お金であれば使う量が変わらない限り貯金は貯まる一方か破産するかのどちらかです。でも、そんな計算式と違い、体重はそれがずっと続くわけにはいきません。ずれていたバランスが均衡を保てる関係になるまでは変化しますが必ずプラトーになるはずです。毎日激しく運動して食う量を極端に減らしたとしてもどこかでプラトーになります。そこが、そのパフォーマンスのバランスが取れた点だからです。だからこのプラトーを保つためにはその生活をずっと続けなければ成立しません。「あと2kg減らせば目標に達しますからあとちょっとだけ辛抱して頑張りましょう」とか云って激励する姿を見かけますが、その辛抱、一生続けない限り維持できませんからあまり無理させないでほしいと密かに願っています。

(つづく)

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検査値

先日始まった、ある健康バラエティ番組。専門医師たちがいろいろアドバイスする構成ですが、第一回目を何気なく見ながら、「これはいけない!」と憤りました。ゲストの芸能人の採血結果を元に健康度ランキングを付けるわけですが・・・。

数値に異常は見当たらなかった若手芸人。ゴミ屋敷のようなアパートの一室で生活していることに言及され、「将来のことを考えたらきちんと整理しなさい」とお説教。いやいや、カラダがこの環境に合ってるわけだから、なまじ片づけなどしたら病気になるかも。同じような非衛生的な生活をする他の若手芸人は好酸球が8、5%なことにイチャモンがつきました。アレルギーが起きている証拠だ!衛生的じゃないからだ!と。この人も同じですね。彼が衛生的な生活に目覚めたら途端に体調を壊すことは必至です(無視した方が良いぞ)。第一、好酸球8、5%なんて注目されるような数値ではないわ!50歳を超えた、ワイン好きで有名な女優さんはHDLコレステロール高値のために総コレステロールが高くて、「とても質が良いけれど、コレステロールが上がらないように注意も必要」とか(バカ云ってんじゃねえぞ)。運動ばかりしてさらにそばばかり食っているからコレステロールが高い、血糖が正常高値だといわれた男優さん。この歳で正常高値の血糖値(正常範囲内だぞ)が糖尿病になんかなるものか!きわめつけは30歳台の若い芸人さんのPSA高値。番組としては必死に前立腺がんの恐怖をあおっていたけれど、この歳で前立腺がんなんか起こしません!

制作スタッフの意図はよくわかる。検査値はウソをつかない。自覚症状が出る前に、健診を受けて、その結果をみて対処するのが肝要だ!と。でも、今回の例は全部が全部ただのイチャモンでしかなく、返ってこれは健診をバカにしています。番組スタッフは素人だからしょうがないとしても、呼ばれている一流の医者たちはもうちょっと節度を持って監修してあげてほしかったと思います。

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一品料理

先日、妻と義母の3人で外食をしました。知り合いの和食料理のお店です。飲み放題、食べ放題のお店と違って、注文する一品一品がとても上品な量です。「アスパラの塩焼き」は2、3cm長のアスパラが6本、シンプルですがとても美味しい味付けでした。「塩トマト」も小さな盛り付けながらひとつひとつが締まった味、「かんぱちカマ」や「馬のあぶりトロ」や「かわはぎの刺身」やとそれなりに頼んだものの、各々が少量の盛りなので3人で食べてみるとお腹にちょうど良い感じの量で終われました。

お上品に出てくる一品一品を見ながら、「日頃からこういうひとつひとつに心を込めた料理を一口一口味わうことを念頭に、ちびりちびりと嗜むお酒のあてに2、3皿だけ食べる上品な食べ方をしていたら、自ずとアンチエイジングな人生が送れるんだよな」と痛感した次第です。食事は「量よりも質」・・・せっかくの人生、同じ値段を払って食べるなら、鱈腹山盛りのコッテリ料理より舐めるようにして味わえる美味しい匠の味・・・そういう歳になりました。歳とともに自分のカラダに合った食べ方を求め始めてきます。その感覚に従っておいて損はありません。この感覚、きっと若いヒトには理解できますまいな。

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浅い眠り、深い眠り

JawboneのUPというライフコーダーを使い始めて1か月以上経過しました。とても優れた機能がたくさん仕組まれているようなのですが、わたしはまだ歩数計と夜間の眠りの質の記録だけしか使っていません。

歩数は、意外に動いていることがわかってほくそ笑んでいます。何も行事のない普通の日でも夕方のワンの散歩さえきちんとやる限り必ず1万歩は超えています。サッカーの応援に行った日は駐車場からスタジアムまでの距離が長いので15000歩前後、ゴルフに行った日には有に2万歩を超えます。

それは良いとして、わたしが興味をもったのは睡眠の記録です。どういうメカニズムなのか良く理解できませんが、単にベッドに横になっている記録ではなく、本当に睡眠に落ちている時間とその中の「深い眠り」の時間とリズムが記録されています。たぶんわたしの人生の中で睡眠の占める割合はあまり多くなく、特にその質が落ちているだろうことは想像できていましたがそれが数字として表されるとちょっと凹みます。トータル睡眠時間は3~5時間、そのうち「深い眠り」は最低30分~最高2時間21分。総じて深い眠りが少ないのがわかりますが、それでも面白いと思ったのは、深い眠りの時間が長い日が必ずしもトータル睡眠時間の長い日とは限らないことです。全体的な傾向として、全体の時間が短めな方が深い眠りの占める割合が高く、だらだら朝寝している時の方が質が悪い傾向があるように思われます。

ま、そんな解析の前に、絶対値が少なすぎる?蓋し正論。でもご心配なく。睡眠の記録は「これから睡眠に入りますよ」という意思表示をしてから開始されますから、自分は寝るつもりのなかった”うたた寝”の時間は記録されていません。意外に「ソファでうたた寝」の時間が一番いい眠りだったりして・・・。

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お天道様と酒

「隣人が新鮮な魚を持ってきてくれるので、最近は刺身を肴に朝から酒を飲んでいます。以前は全く飲まなかったのに、最近は毎日朝晩飲んでいます。この歳になって、楽しいことを覚えることができて幸せです。」

定年退職を機に都会から天草の島に住むようになったMさんが1年ぶりの受診をされて、嬉しそうにそんなはなしをしてくれました。今の悠々自適な生活がとてもカラダに合っているようで、毎年健診データが良くなっていきます。

そんなMさんのはなしを聞きながら、わたしは学生時代に衛生学の教授が話していたことを思い出していました。「お天道様が出ている間はアルコールを飲んではいけません。カラダが蝕まれて危険です。夏は明るいうちからビアガーデンに惹かれるでしょうが、日が暮れてから行ってください」・・・日の高いうちのアルコールがなぜ悪いのか、その理由は覚えていません(たぶん居眠りしていました)。おそらく、自律神経系に作用して心肺に過負荷をかけてしまったり血管を広げ脱水を助長したり、そんなことだったかと思いますが・・・理由は覚えていないけれど、アルコールは夜になってから飲まなければならない、というその専門家のコトバだけが何十年経ってもアタマから離れません。インターネットで検索すると、「昼間っから酒を飲むようなやつは人間のクズだ!」とか「堕落した人間のすることだ」とか、そんなことしかヒットしませんが、これは道徳的なはなしではなくて、たしか医学的にも良くなかったはずだがなあと思った次第。

でも、ヨーロッパでは普通に昼食時にも酒をかっ食らいますよね。それを云われるとちょっと弱い。ま、あいつらただのアル中だから・・・。

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