グリコヘモグロビン
「先生ちょっと教えてください。ヘモグロビンというのは赤血球の中でしか存在しないんでしょ?HbA1cはどこにグルコースがくっ付くのですか?」
糖尿病の指標としてグリコヘモグロビン(HbA1c)というものがあります。赤血球の中に含まれるヘモグロビン(酸素を運ぶ)というタンパクにブドウ糖がくっ付くわけです。長時間の高血糖状態が続くと血管内のブドウ糖が体内のタンパクと結合する性質があるのです。でも、ヘモグロビンはヘモグロビンだけで血管内を流れているわけではなくて赤血球内に含まれるわけで、どうやってブドウ糖がくっ付くのだろう?たしかに考えてみるとイメージが湧きませんが、そんなことをイメージしようとしたこと自体がないので、すぐに明快に答えることができませんでした。
ネットで検索してみたら、血管内にヘモグロビンとブドウ糖がハダカで結合している絵が出ていましたが、これは違うだろ!と分かります。どうしてもイメージが湧かないので職場の検査室のスタッフに聞いてみました。「グリコヘモグロビンの説明をするとき、わたしは梅酒を例えにして話します。長い時間が経てば経つほど味がしみ込んでいきますが、この状態と同じだ、と」・・・一瞬分かりそうでしたが、今それを書きながら、「よく分からねえな」と思ってしまいました。
こういう予想だにしない質問って、ときどき聞かれてドギマギします。「赤血球にブドウ糖がくっ付いているから重くて血液がドロドロになるんですかね?」「120日の赤血球の寿命が来て破壊されるとき、くっ付いていたブドウ糖はどこに行くんですか?また血管内を浮遊するんですか?」とか、次々やってくる質問・・・正しいか正しくないかすら想像できません。どなたか真実をご存じなら分かりやすく教えてください。
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コメント
ご無沙汰しております。上通物語出演の後、徳島単身赴任中の徳島野郎です。ヘモグロビンA1cは蛋白糖化反応の前期反応生成物で、更なる化学修飾が加わるとAGE(advanced glycation end product)として様々な生理活性を発揮します。これは非酵素的蛋白糖化反応ですので、酵素学で習う鍵と鍵穴的な特異的反応ではなく高血糖状態に存在する多くの蛋白質に普遍的に生じる糖化修飾です。ですからヘモグロビンだけではなく皮膚のコラーゲン(皮膚コラーゲンの糖化修飾は皮膚老化)も眼球の水晶体に存在するクリスタリン(クリスタリンの糖化修飾は白内障)も糖化修飾を受けることになります。皮膚や水晶体とは異なり、ただ単に採血すれば簡単に測定できるのでヘモグロビンA1cが高血糖状態に伴う非酵素的蛋白糖化修飾の指標にされている訳です。この方面には疎いのですが、糖化修飾を受けやすい蛋白のコンフォメーションやモチーフは存在しなかったと思います。ヘモグロビンA1cは可逆的糖化修飾ですのでグルコースとヘモグロビンの解離が起こり得ますが、更なる修飾を受けてAGEの状態に至ると様々な炎症反応や細胞機能異常をもたらしてやっかいな病気を併発することになります。糖化ヘモグロビンと正常ヘモグロビンは化学平衡の状態にありますので、糖化ヘモグロビンの一部が脱糖化を受けると正常ヘモグロビンに戻りまます。私の知識はこの程度です。お役に立てれば幸いです。
投稿: 徳島野郎 | 2013年6月20日 (木) 03時13分
徳島野郎さん
おはようございます。益々ご活躍のこととお察しいたします。詳しく解説をありがとうございました。私にはちょっと難しすぎましたけど(笑)。
私が興味を持ちながらどうしてもしっくりと理解できていない糖化ストレス(AGE)やオートファジーなどのこと、また機会がありましたらご教示ください。
さて、今日から仙台出張してきますが、嵐様のゴキゲンはいかがでしょうか。
投稿: ジャイ | 2013年6月20日 (木) 06時25分