先天性左室肥大
人間ドック受診者の中年男性。心電図で広範囲の大きな陰性T波所見がありました。これに関しては「以前、専門医で精査を受けて『おそらく先天的な心肥大だから心配いらない』と説明された」という問診コメントがあったので精査指示は出しませんでしたが、糖代謝が『要医療』の判定=つまり「糖尿病だから治療を受けてください」のために結果説明に回ってきました。糖尿病となると、やらなければならないのは運動と食事療法。できたら触れたくなかったのですが、そうなると、運動をしてもいい心臓なのか?ということになり、この心電図異常を「先天的な心肥大だから大丈夫」などといういい加減なことばで済ますわけにはいかなくなるのです。
「先天的な心肥大だから心配はない」ということばは明らかに間違いです。後天的な肥大であれば生活を改めたり薬を飲んだりしたら良くなる可能性はありますが、先天的なもの(代表的なものが”肥大型心筋症”)は生活態度の問題ではありませんから、治しようがありません。でも、突然死の原因としては比較的高い比率を占めますし、生徒の体育の授業中の突然死や運動選手の突然死などの中には多くの先天的心肥大が隠れています。
この方の場合はおそらく、どこかの健診の心電図検査で「虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)疑い」という判定が出たから精密検査が行われたのだと推測されます。「精査の結果、この心電図変化は心筋が肥大しているためで、狭心症や心筋梗塞の心配はない。心筋肥大の原因は高血圧や過度の運動などによる後天的な変化ではないだろう」というニュアンスの説明をされたのではないでしょうか。これから運動療法をしなければならないカラダにとって、この心臓は厄介です。定期的に運動負荷心電図検査や心エコー検査を受けながら、運動制限が必要ないのかどうかを毎回評価した上で、糖尿病の運動療法をしなければなりません。必ず、循環器専門の主治医を持ってもらいたい、と説明しました。
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