その時が来た。
7月号の連載コラムは、はずかしながらここに出した2つのブログをただ淡々と並べただけです。こんなことのためにこのブログが有るのですから、これで何の問題もない。ノープロブレム。
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その時が来た。
先日、ある女性から高血圧症の治療について相談を受けました。風邪で近くのクリニックを受診したときに高血圧を指摘されて内服し始めたのが2年前。それからなかなか下がらない血圧と付き合ってきたけれど最近動悸・息切れが強くなった、というものです。治療や精査のことは信頼できる同僚に紹介することにしましたが、彼女の心の引っかかりは「どうして自分が高血圧になったのか?」ということでした。若い頃はずっと低血圧だった自分。今は何かの原因で一時的に上がっているけれどいつまでも通院して薬を飲み続ける“病人”でいるのは本意ではない、と。
わたしと同い年の妙齢の彼女に、わたしは粛々とお答えしました。「それは、その時が来たからです」・・・それは職場環境の変化や更年期障害といった一時的なものではなく、お母様、そのお母様と綿々と続く高血圧家系の由緒正しい流れをいよいよ引き継ぐ時が来た、ということでしょう。なかなか受け入れてもらえませんが、女性は閉経前と閉経後でまったく別の身体になります。「だって、昔は・・・」という過去の栄光は忘れましょう。それは脱皮前の別人が作った実績であって、本当の姿になった今の自分には関係ありません。種の保存のために優遇処置の着ぐるみを着させられていた過去の自分は夢の中の話です。やっと自分の本来の人生が始まったのです。過去のことは忘れて、今の自分としっかり向かい合いましょう。そして今の自分を愛することです。・・・そういうお話をしました。
違う日に、ある男性受診者にお会いしました。わたしが産業医を務めている企業で2年前まで働いておられた方です。当時から高度の高血圧症で健診の度に紹介状をもらっていましたが受診せず、「もう少し生活習慣を見直してがんばる!」と主張されていました。実は、昨年あたりから心電図に変化が見られ始めており、それは高血圧の影響だと考えられました。心臓に影響が及ぼされ始めたことになりますので、早めに血圧を下げる必要があります。「何が原因なのでしょうか?」と、久しぶりに会った彼は徐に質問しました。当時に比べると15キロ以上はやせましたし、減塩を中心とした食事を徹底し、毎朝の運動も欠かしていないのに・・・と。
だからこれが「体質」。ここまでやっても下がらずむしろ心電図異常まで出てきたのは、生活態度が悪いからではありません。今の彼に必要なことは、修行僧の道をさらにストイックに徹底することではなく、薬剤を使ってでも可及的速やかに心負荷を下げてあげることだとご説明しました。「今度こそは受診します」と言う彼に、「第一、今の血圧の値は毎朝の運動自体が禁止されている値ですよ」と追い打ちをかけてあげましたが、さて、本当に受診されたでしょうか。
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