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職人のプライド

遠いむかしのことをふと思い出しました。たしか、ここにもむかし書いたことがあります。25年も前のことなのに、よほど印象に残っているのでしょう。

東京の病院で働くために熊本のアパートの荷物を運ぶのに大手Y引越し屋さんのらくらくパックを頼みました。書棚に並ぶ専門書や雑誌を順番に箱詰めして、引っ越した先で前と同じように順番に並べてくれるので、間取りの違いで移動場所の指定はしますが、ほぼ前と同じ状況を作ってくれるのがウリです。

さすがはプロ。段取り良く荷物を搬入していきます。そのグループのチーフは山形なまりの残る若い男性でした。彼が書棚に本を並べ始めたのですが、明らかに左右が逆なのです。右から順に並んでいたものが左から順に並べられていくのをみて、「それ、間違ってます。反対です!」と声をかけました。そしたら、「いいえ、こっちからのはずです。そういう順に指示されているのですから」と、予想だにしない返答。「いやいや、間違っているから」と云うのに、「前にあった通りにするのがわたしたちの仕事ですから」とまるでわたしの勘違いだと云いた気。一触即発の空気の中、オロオロする妻が「あなたの記憶違いかもしれないし、それはそれでいいじゃない?」なとと火に油を注ぐようなことを云うものだからさあ大変。「何云ってんだよ。自分が長年使ってきた書棚の本なんだから自分が一番わかっているさ。明らかに熊本で詰めたヒトが間違って逆入れしたんだから逆にしなさいよ!」とわたしは語気を荒げました。でもそのチーフさん、まったく意に介さずに作業を続けています。「わたしたちも仕事のプロとしてのプライドがあります。決められた通りに仕事をしないと後で叱られますから」・・・彼もこれまでにいろいろ経験した挙句の解決策が、自分の決められた仕事をただ黙々と遂行することだったのかもしれません。

今はそんなことはないと思いますが、これでは間違いなくトラブルが起きます。そして、せっかくあの業者を頼んだのに、と後味の悪い思い出になってしまいます。本人のいる前でこれ見よがしに並べる端から除けて行って逆に並べ直したわたしも大人気なかったけれど、後のアンケートに書いても何も返答がなかったところをみると、むかしはそれ(現場はマニュアル以外のことはできるだけしない)が当たり前だったのかもしれません。

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