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治験コーディネーター

うちの病院には治験コーディネーターさんが何人かいます。今は、治験(製品になる前の薬品の効果や安全性を確認するために実際に患者さんに使ってもらう作業)は医者が直接コーディネートせずに、コーディネーターさんが全ての段取りを立ててくれるのでとても楽です。でも先日、わたしは今うちで行っている治験の担当医リストから外してもらうように治験責任医師に直訴しました。治験コーディネーターのMとこれ以上顔を合わせていたら、自分が壊れると思ったからです。

分かりました。彼らにとって、患者さんは「治験対象者」であり、カルテは「治験用必要書類」でしかないのだということ。きっと彼はコーディネーターの中でもかなり優秀なのだろうことは彼の自信に満ち溢れた態度を見たら想像できました。でも・・・最後は彼の声を聞くだけで、あるいは遠くで彼の姿を見るだけで、自分の血圧が跳ね上がるのが分かるくらいになってしまいました。「ちょっと下痢をしたみたいなのですが、話を聞くとくすりとの関連は低そうでした。だからカルテには『問題なし』とだけ書いておけば大丈夫です」・・・彼は、簡単に云ってのけました。「実はビリルビンが2.0まで上がったのですが、これは治験薬のせいではなくて一緒に投与したマグコロールではないかと推測されました。今日の採血でももう正常化していますから、『因果関係なし』とだけ書いておけば大丈夫です」とも。

「『大丈夫』って何が?」・・・思わず聞き返しました。「カルテに書かなくても問題ないみたいです」・・・彼は涼しい顔でそう即答。「何で大丈夫なの?」とカチンと来て言い返したら、「何云ってるの、この素人医者は?」と云いた気にため息・・・ダメです、もうこれ以上は。

カルテは治験のためにあるのではなく、患者さんのカラダの記録です。治験薬の影響だろうがなかろうが、「途中で下痢をした」わけです。治験薬と関係なくても、「ビリルビンが微増した」のであって、それがマグコロールの影響なら、尚のこと次にこれを使うときには注意が必要なのでないのか?・・・患者を思う良識のある医者ならだれでも思うことです。それを治験に関係ないから、治験のために記録の義務はないから、という理由で「書かなくても大丈夫です」と言い切る感覚が、わたしには全く理解できない。

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