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キャリア

重要な運営に関する会議があるというのを休んで、老犬の火葬のバタバタに向かいながら、なぜだかふと思い出したことがあります。

遠いむかし、わたしがまだ研修医だったか正職員になってすぐだったかのころ、うちの病院に神の手を持つスーパー外科医がいました。どうしてそんな繊細な手術がそんな速やかにできるのかわならないほどに無骨な太い腕の豪快な先生でした。カラオケと酒とタバコが好きで、いつも「ガハハハ」と笑っていました。

そんな先生がある日、病院を辞めました。地方の小さな公的病院に移るためです。その病院は緊急手術どころか手術件数自体もとても少ない病院です。それを聞いたとき、わたしは正直とても驚きました。こんなスーパードクターがメスを下すなんて、熊本どころか日本医療の損失です。勿体なさすぎますし、外科医であるY先生もそれは本意ではないと思いましたが、「妻が病気でね。うちのイヌはでっかいからオレしか散歩してやれんのよ」・・・先生は相変わらずガハハと笑いながら事もなげにそう云って去っていきました。たしか先生の愛犬はアフガンでした。彼はそう云ってましたが、きっと奥さんと過ごす時間を作ろうとしたのだろうと思いました。それを承知していても、それでもその決断はわたしには理解できませんでした。あまりにも失うものが大きすぎると思ったから。

それが最近、わたしもその感覚が分かるようになってきました。「先生は働き過ぎですよ。少し休まれるのがいいと思いますよ」と云うヒトがいます。わたしが救急現場から今の部署に異動したときにもたくさんの方がそう声をかけましたが、それは違います。疲れたからとか、楽をしたいからとかではなく、自分の人生の中で自分が大切にしたいものの優先順位が変わっていっただけ、そういう感じがします。

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