ただやせればいいというものではなかろう
先日、CareNet配信で、「The Lancet Diabetes & Endocrinology」オンライン版に5月21日掲載されたロンドン大学(UCL)のJohn Deanfield氏らの研究報告が紹介されました。1946年3月に出生した英国の男女1,273人を追跡調査して、小児期、36歳、43歳、53歳、60~64歳時における正常体重、過体重、肥満のいずれかに分類した上でそのデータを分析した結果、成人期の体脂肪過多の時期が長いほど、後に高血圧、糖尿病、動脈狭窄など心疾患のリスク因子をもつ可能性が高く、成人期にどの年齢であれ体重の少ないカテゴリーになった被験者ではリスクが低減したのだそうです。
簡単に云えば、今やせているヒトはOK、太っていたヒトもやせるとOK、という結果の報告です。体重で生活習慣病のリスクの結果を語っているようにみえますが、本当にそれでいいのでしょうか。こういうEBMとして使われるに決まっているマススタディで大切なことは、体重が減って良くなったヒトの群と体重が減ったけど良くならなかったヒトの群をもっとよく比較することだと思います。体重が減ったら必ず良くなる!というデータであればやむを得ませんが、必ず良くならなかったヒトが居るはずです。体重が減って良くなったヒトよりも良くならなかったヒトの原因こそが重要で、それを検討してほしいのです。誰もが、ただやせればいいというわけではないのだから、それがメリットになる条件(あるいはデメリットになる条件)を見つけ出してこその予防医学。EBMはそこしか使い道がないように思います。
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