« 2014年6月 | トップページ | 2014年8月 »

2014年7月

食後高血糖

最近、糖負荷試験の結果を説明しながら、気になっていることがあります。30歳前半の若い世代の境界型糖尿病パターンが増えてきている感じがするのです。もっとも、これまで、そんな若い人が何の症状もないのに単なる空腹時血糖やHbA1cではなく糖負荷試験まできちんと受けたりしていなかっただけなのかもしれませんが・・・。

農耕民族である日本人はもともとインスリンの分泌が遅れ気味で、そのために糖尿病になりやすい体質の人が多いことはすでにわかっています。それでも、若い世代は、出遅れたインスリンを後追いする形で大量に補充分泌させて見た目は正常パターンにしたりむしろ若干過剰反応(食後低血糖)させたりするもので、あるいは筋肉活動による糖代謝経路が発達しているから、人間ドックで行うような簡単な糖負荷検査ではマスクされてしまってなかなか表に現れないのが普通だと思っていました。男性の場合は厄明けした40歳以降から、女性の場合は閉経前後から表に現れてくるのが多いと思っていましたから、最近の動向はちょっと意外です。

特別太っているとか、食べ過ぎ・飲み過ぎであるとかいう若者にこのパターンがあるわけではなさそうです。それでも、この世代から、きちんと血糖をゆっくりあげる食べ方を指導し、早いうちにそういう習慣にさせてしまうことが、必ずや将来「やってて良かった」ということになり、いつまでも食事の時間が楽しい時間である人生を送れることになるはずだと信じて、スローカロリーのはなしをしています。

| | コメント (0)

自由時間

「先生、働き過ぎですよ。こんなときなんだから、ゆっくり休んでください」と、みなさんに云われます。有り難いことだと思います。

でも、長期休暇をくれて、「何も考えずに自由にしていいよ」と云われたら、自分はどうするか?と考えると、ぞっとします。

「何もしなくて好きなだけボーッとしていいなんて、最高の幸せじゃないの!」と妻は云うでしょう。でも、そんなこと強いられたら、わたしはそれだけでストレスです。「一日中寝っ転がってゲームができるんだよ」とも云うかもしれません。好きなだけ寝ていられる、好きなだけ映画を観れる、好きなだけゴルフができる、好きなだけ・・・と云われても困る。「やりたいことを存分にできるよ」というのはやりたいことがあるヒトのはなし。特にやりたいことがない人間には、自由時間はストレス以外の何モノでもない時間。

結局、何もしないこともできなければ、したいことも特別持たないわたしは、やらなければいけないことを目の前に山積みにさせてそれを黙々とこなしていけている時間が得られれば、それが一番ストレスのかからない幸せな時間なのであります。

さびしいねーって? そうかね?

| | コメント (0)

経験

健診で行った検査の読影や判読をするのが今の仕事です。わたしの分担は、心電図や心臓超音波検査だけでなく、最近は胸部レントゲンや眼底検査も読影しています。

毎日、毎日、うんざりするほどの量をさばいて行くうちにだんだんと自分が変わっていくのがわかります。前は必ず読んでいた所見をだんだん読まなくなるんです。この感覚は、きっとやったヒトにしかわかりません。

読影業務を初めて研修するようになったころは、小さな所見を見付けることが楽しみでした。自分は「異常なし」にしたのに先輩が読むと所見が見つけ出されていて、改めて見直すと、さっきは何も見えなかったところにたしかにそれはあるのです。未熟者だなあ、と思いました。だからそれを自分の力で見つけ出せると嬉しくてたまりません。画像の端々まで眺めて、重箱の隅をつつくような小さな所見まで見つけ出すことに喜びを感じ、それができるようになったことに自分の上達感を感じていたものです。

ところが、経験を重ねるうちに、そんな所見を読まなくなります。いい加減になってきたのではありません。その程度の所見は所見としては存在するとしても正常のヒトの普通の老化であって、病気ではないし、そのヒトの人生にとって大勢に影響はないし、いちいち指摘をするほどのことではない、と思えるようになるのです。

「細かい所見まできちんと指摘できるのがプロ」と思っていましたが、最近は「細かい所見まで指摘する必要があるものとないものを区別できるのがプロ」だ、ということを徐々に実感できるようになってきた気がします。もっとも、今でもとんでもないポカをしでかしますから、まだまだ未熟者ですが・・・。

| | コメント (2)

「夏に尿路結石が増える」(2)

(つづき)

調子に乗ってツッコミを入れていたら思いの外長くなったので、2つに分けました(笑)

●尿路結石は遺伝も影響~原因は遺伝素因と生活習慣が半々だろうというコンセンサスですが、たしかに身内に結石患者がいると若くして発症し再発しやすいらしいです。でも、わたしの二親等以内の親戚で結石のはなしは聞かないがなあ。ま、予防のために、身内にいたら若いうちから生活習慣を改めろ、というわけだから、やっても損はないでしょうね。

●メタボは結石ができやすい~生活習慣、食習慣の欧米化にともなって結石患者が増えたし肥満やメタボも増えた・・・それは単なる結果であってたまたまの重なりなのじゃないかという気がします。当事者本人からの悩みを云いますとね、食べすぎないようにして運動をこまめにすると、それをしないヒトより明らかに脱水になりますよね。「水分を多めに」というアドバイスも重々知ってますけれど・・・で、一応裏腹な理論なのですが、これはどっちが優先されるべきなのでしょうか?

※「定期的な通院が結石再発率を低下させる(stone clinic effect)ことが証明されている」という一文が一番インパクトを受けました。そんな英語があるのか!

年3回は疝痛発作で悩まされていたわたしも、最近は強い発作が出ません。状況証拠的に時々排石している感じがしますけど、痛みを作るほどの大きさで維持できなくなっているのでしょうか。食うモノが変わってきたから?量が減ってきたから?この辺りは何とも云えません。少なくとも、酒を止めたわけではありません。

| | コメント (0)

「夏に尿路結石が増える」(1)

日経メディカル(2014.7)に最新の「尿路結石症診療ガイドライン」の話題が載っていました。読みながら「何をいまさら?」と思うような内容でしたが、わたしが石博士だから詳しいのではなく、これまでこれらになかった(都市伝説だった)エビデンスをはっきりさせたのだそうです。

●尿路結石は夏に多い~「気温上昇で発汗量が増えると尿が濃縮され、尿路結石が生じやすくなる」・・・そらそうやろ、だれでもわかるさそんな理屈!と突っ込みそうになりながら、でも逆に夏の方が水分は大量に取るし、最近はクーラーの効いた部屋から出ようとしない40~50歳(好発年齢)ばかりなのだけどなあ、とも思います。こんなひねくれたオヤジの質問にどう答えたらいいかも書いてほしかった。

●水は1日に2リットル以上飲む~飲めば飲むほど良いことは分かっている。で、どれくらい飲んだらいいの?という質問へのアンサー。1リットル以下なら増加し、2リットル以上なら低下するというエビデンスらしいです。でも、水分をとって尿量を増やすのが目的、ということらしいのだけれど、それならむかしから云われているように「ビール2リットルでもいい」ということになります。そこのところはどうなのでしょう?あるいはカフェインの多い緑茶やコーラの方が麦茶や水より良いとかいうことはあるのでしょうか?

(つづく)

| | コメント (0)

アタマがおかしくなる

突発性難聴発症3日目を迎えて、霧が晴れるようにすーっと良くなると聞いていたのに、かえってどんどん耳鳴りと耳閉がひどくなっていきました。まあ、これは波だと思うのであまり気にしなかったのだけれど、耳鳴りがひどくなるにつれてアタマが働かなくなる感じ・・・小さなシミがどんどん滲んで広がっていく感じなんです。「あれ、ぼくの病気の名前はナニ難聴だっけ?」から始まって、うちの職場のナースの名前が浮かばない。眼の前にいるお嬢さんの名前は何だったっけ?パソコン画面に書かれている名前のお嬢さんはどんなヒトだっけ?となりの診察室に居る医者の名前は?ウソのようにどんどん消えていく記憶。午後の仕事を1時間休ませてもらって、事務所の名簿一覧を眺めたり、パソコンの名簿を眺めたり、あるいは事務所にいるスタッフの顔を眺めて名前を確認したり・・・一人でこっそり焦りました。脳神経のトラブルってこんな感じなのか?つまり今、神経線維のどこかに断線が起きていて記憶の修復や再合成が必死で行われている・・・それはそれはものすごい不安感に苛まれました。

15分ほど仮眠したら少しずつ名前が出始めてきました。アタマは重いままで耳は両方とも詰まったままでしたが、登山中に襲われた濃霧が少しずつ晴れてくるように、どっしり重くのしかかっていた不安感が薄れ始めてきました。でもこれ、いつまた濃くなるかわからない。アルツハイマーとか痴呆症とかは、こういうことを繰り返しながら少しずつ大事なものが消えていくのだろう。脳腫瘍で亡くなったわたしのボスが生前一番恐れていたこと=自分が自分でなくなっていくこととは、こういうことなのだと実感しました。

結局夕方に強い眩暈を起こして救急外来に無理やり連れて行かれました。採血やMRI検査も受けて、我が病院が誇る精鋭たちの診断をうけて無事に帰してもらえました。ベッドに寝ている間やMRI検査を受けている間、家族やスタッフや友人の名前をアタマの中でひとりひとり確認。少しずつ明確になる中で最後まで思い出せないままのヒトがまだ数人・・・(笑)。おそらくはステロイドの副作用だったのではないかと推測しますが、とにかくこの難聴と耳閉が最悪治らなかったとしてもしょうがないけれど、記憶が消えていく恐怖だけはもう二度と経験したくないと痛感した次第です。

| | コメント (0)

睡眠時間

数日来、突発性難聴に罹患してステロイドを服用しております。仕事も”若干”減らしていただきました。幸い軽快の兆しですので完治すると思いますが、さすがにいつもの不摂生をするわけにもいかず、晩酌をせず、いつもは夜中の0時過ぎにやっと沸かし始める風呂にも夕食後早々に入り、22時半には床に就くという、今までにない超健康的な夜を過ごしております。

22時半に床に就いて朝6時に起床。オシッコには2回起きるものの全部で7時間は確保できているであろう睡眠。とっても健康的!と思うのですが、実は腕に巻いているライフコーダーの記録(jawboneUP)をみると、実質睡眠時間5時間~5時間半くらいのようなのです。何よりも寝付きが悪い。さらに入眠時のころにあるべき深い睡眠がほとんどない。これは意外にショックな結果でした。わかっています・・・眠くなるまでベッドに入ってはいけない・・・現在の睡眠に対する常識です。身体を休めるために床に就くけど眠れないのでついつい枕元のスマホを手にとって睡眠の敵である青色光線の攻撃を目に受ける・・・これでは眠くなりません(スマホをそんなところに置かなければいい、とお思いでしょうが、今週はオンコール当番の週なので夜中の緊急電話が入るかもしれないのであります)。入眠直後の深い睡眠の時に成長ホルモンが集中的に分泌されて細胞修復をもたらすのだ、ということも以前学びました。それも得られていないとなると、病気療養のために早く床に就いても意味ないではありませんか!

治ったら、もっと宵っ張りのショートスリーパーになってやるぞ!

なに?「本末転倒」? はいはい。

| | コメント (0)

受けなきゃいい

またこれだ。

「昨年も一昨年も運動負荷検査で精査を指示されているが、症状がないので受診していない」と問診に書き込まれている40歳代の男性が、今年も宿泊ドックを受診して「運動負荷検査を希望している」とのこと。そしてもちろん、今回も重症不整脈(心室性期外収縮の頻発)が出ているのです。

正直に書きます。こういうの一番めんどうくさい!自覚症状がないから精査するんです。自覚症状があるなら、健診に関係なく外来を受診するでしょ。自覚症状がない人の中に突然死したり心筋梗塞になったりする人がいるから精査指示を出すわけです。むかしから、わたしはずっと云ってきたではありませんか。どうせ「自覚症状がないから行かない」のだったら、最初から検査を受けなきゃいいんですよ。「その検査を受けると必ず『異常』と云われて精査指示が出されるのが不愉快だ。だから受けない!」と強く主張すればいいんです。受けることは権利だけれど義務ではないのですから。そして、受けない限り『異常』とは云われないのですから。

別に他人のことなんかどうでもいいんです。困ってもいない人に介入なんかしたくない。でも何かあったときには「健診では大したことを云われなかった。どうしても行け!と云われたならちゃんと行ったのに!」と言い訳する人が居るんです。あなたはそんな人じゃないかもしれないけれど、そんな人が居る以上、わたしたちは精査を求めます。だから、精査を受ける気がないのだったら、その検査自体を受けないでください。どうかお願いします!

| | コメント (0)

食事はバランス(2)

(つづき)

常温で液体の「油(oil)」と常温で固体の「脂(fat)」で「油脂」。アブラは奥が深いですね。先日職場で『油脂のおはなし~生活習慣病を防ぐには~』(協和企画)という小冊子をみつけましたが、アブラの摂り方については「常識」がコロコロ変わるのでその都度右往左往させられたヒトも少なくないでしょう。「リノール酸がいい」と云っていたかと思ったら「リノール酸は心臓病を増やす」とかに換わるのですから。指導するわたしたちも数年前に学んだ知識が全く覆されるので油断できません(←これはダジャレではありません・笑)。

はなしをまた木庭先生の講話に戻しますが、ω6系脂肪酸は陸のモノに多く、ω3系脂肪酸は海のモノに多いとか、多価脂肪酸の中でω6系の方が炎症を起こしやすくなる作用があり、ω3系には抗炎症作用があるとか、今回も新しい知識を得ることができました。飽和脂肪酸は目の敵にされていますが、実は飽和脂肪酸が少ないと脳出血・脳梗塞が増える、という事実も知りました。ω3系を多く摂ると冠動脈疾患を起こしにくくなるのだけれど、「実はω3系を食事から摂ると効果があるけれど、くすりやサプリで摂ってもあまり効果がないみたいです」って。先生サラッと云ってのけましたけど、これかなり重要ですよ。「魚はキライだけどサプリを飲んでるから大丈夫!って意味がない」ということですからね。あと、面白かったのは、スタチン(脂質異常症治療薬)をきちんと飲んでいる人は飲み始める前より肥満が多いということ。よく受診者さんとも話すことです。今まで節制し尽くしていたのにくすりを飲んだら値が下がるから油断して好きなだけ食ってしまうのです。

先生が最後の結論として云われたことが重要だと、わたしも思いました。「食事はバランスです。何が良いとか悪いとか簡単なことではありません。魚と一緒に何を食べるか、です。そしてサプリだけでは効果は安定しません」・・・だから、食事を理屈で食ってもしょうがないんですってば。

| | コメント (0)

食事はバランス(1)

第20回日本心臓リハビリテーション学会(京都)で唯一聴くことが出来たランチョンセミナーは『動脈硬化性疾患予防のための食事療法のエビデンス』(昭和大学 木庭新治先生)でした。

血中LDLコレステロール値を上げる食事、下げる食事・・・本当に当事者も指導者も治療者も悩みの種ですね。実は血中LDLコレステロールが上がるか下がるかは肝臓にあるLDL受容体活性にかかっていて、受容体活性が高いと血中LDLが下がり、受容体活性が低いとLDLが上がるのだそうです。で、その活性に影響を与えるのが脂肪酸です。世の最悪人扱いされてる「飽和脂肪酸」が多いと受容体活性が低下しますから、血中LDLは増加する。なんか、まどろっこしいですけど、つまり、LDLコレステロールのたくさん含まれているものを食べるのも少しは弊害がありますが、それよりも「一緒に含まれるものが大事なのだ」と云うのが結論です。LDLコレステロールが多く含まれていても飽和脂肪酸が少ないものなら意外に血中LDLコレステロールは上がらないのだそうです。もうひとつ、「コレステロールの吸収率に個人差が大きい」と云うのも大事です。インスリン抵抗性が増すと吸収率が多くなるようですから結局はメタボや肥満が関与することになるのでしょうが、でも「10キロやせてもLDL値は下がらない」というのがわたしの経験的な印象です。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があって、不飽和脂肪酸は一価脂肪酸と多価脂肪酸がある。飽和脂肪酸よりも多価脂肪酸を取るのがいい。多価脂肪酸にはω6系とω3系があって、どうもω3系の方が予防効果は高そうだ。動脈硬化の敵、「トランス脂肪酸」は加工のための器械に使う硬化油にも含まれるし、反芻動物の肉にも入り込んでいるから、マーガリンとかだけが犯人でもないが、やっぱりポップコーンはいけないらしい。

(つづく)

| | コメント (0)

新幹線トラブルに思う

熊本から京都に向かう上り新幹線でその事件は起きました。横浜辺りの信号トラブルか何かで遅れた下り新幹線の通過待ちのため、新大阪駅直前で8分間の信号停止。新大阪で東京行きに乗り継ぐ予定のわたしは「え、大丈夫なの?」と思ったわけです。なぜならもともと接続が6分間しかなかったのですから。そうしたら、車内放送が流れました。「東京行のぞみ254号へ乗り継ぎのお客様へ。本列車の遅れに伴って、のぞみも出発を遅れさせております。本車からのお客様が乗り込んだことを確認してから出発する予定ですので、ご心配いりません」と。待っている間に3回も放送がありました。

それでも大混雑の中を汗だくで走ったわけです。新大阪駅の20番ホームから25番ホームはかなり遠くて入り組んでいるのですが、とにかく頑張ったわけですよ。で、やっと25番ホームに辿り着いたと思ったら、もうすでにのぞみ254号は影も形も無くなっていました。

やむを得ず向かいの26番ホームに停まっていた次の新幹線に飛び乗りましたが、それが定刻通りに発車したところをみると、初めからのぞみ254号はわたしたちを待つ気なんか更々なかったと推測されます。「25番ホームに停車中の列車は回送列車です。乗り込まないでくださーい!」と何度も場内放送が流れていましたから、あれは揉めますよね。だって「ちゃんと待ってます」って云ったのはそっちだし、もともと定刻通りに走っていたのに駅の都合で遅れたわけですから。わたしはもともと新大阪-京都間は自由席だったし、高々10分程度ですからデッキに立っていても大した問題ではないですけど、もっと遠くまでの指定席だったヒトとかお年寄りとか、どうなったのでしょう?

とっさのトラブルの際の大組織の対応。この場合はJR西日本とJR東日本のつなぎ目の問題だったのでしょうが、現場での「さすがだな」と思わせる対応もちょっとした連絡ミスがあるだけで返って逆効果になることもある。ただし、現場では大変なトラブルであってもあくまでも末端の小さな出来事で、全体からみたら”大したことじゃない”ということになるのでしょうか。そうでないと大組織は機能しないのでしょうけれど、それでも現場の当事者のことを慮るココロは失いたくないものだ、と我が身に当てはめながら思った次第です。

| | コメント (0)

めんどくさいおばけ

”めんどくさいおばけ”

先日、友人との会話の中でふと生まれました。生みの親はもちろん、わたし。”もったいないおばけ”は9年前にコラムに書いて、ここでも紹介したことのある世界的に有名なおばけですが、”めんどくさいおばけ”はこれとは違って、だれも讃えてはくれません。最近友人にもわたしにもこのおばけがつきまとってきて、どうも思うように作業がはかどらないのでございます。

締め切り間近の作家さんや講演間近のわたしたちや、原稿やスライドといった商売道具の準備も、回を重ねるごとに遅くなり、「めんどくさいなあ」とぼやいてしまうのは、”めんどくさいおばけ”の仕業に間違いない。めんどくさいけど最後の最後にはおばけが姿を消して、とりあえず期日に間に合うのはありがたいけれど、あれは相手の作戦か?

「運動しないといけないんだけどなあ」、「でもそんなのめんどくさいよなあ」。生活習慣病の基本であり、アンチエイジングの基本である”運動(身体活動)”もまた、めんどくさいおばけの最高の好物です。暑いから倒れるかもしれん、運動したってやせやせん。ゴロゴロしてたら楽だった。今から観たいテレビ番組がある・・・棲みついたおやじのアタマの中から云いたい放題の言い訳を見つけ出して誘惑するのが特技です。 ”めんどくさいおばけ”が棲みついて終の棲家宣言でもされようものなら、何もせずにさぞかし楽だろうなと思ったら大間違いで、すぐに発酵を始めて、急激に歳を取るし、そのままうつになるかもしれません。

でも、もしかしたら”めんどくさいおばけ”は神様からの使者かもしれません。それが自分の肩を叩いたときにはそれを振り払ってもっと「がんばらねば!」と思わず、”少し休め”との神の思し召しかも・・・うをーいかんいかん!だまされよる??

| | コメント (0)

始めること、続けること

「『ムダに動く。ムダに食わない』と先生に教えていただいてもう1年が経ちます。わたしたち夫婦は、最近になってやっとそれを実際に取り組み始めたばかりで、まだ成果は出てきません。」・・・先日、1年ぶりに人間ドックを受診された老夫婦が、わたしにそう云いました。

「そうですか、始められましたか。それは素晴らしいですね。理屈では簡単に理解できるけれど、それを”始める”というのがなかなか大変なんですよ。そうですか、いいですね」と素直に感想を伝えたら、とても嬉しそうに笑われました。「健康のために食事に気を付けたり、健康のために運動したりしてはダメですよ。”健康のため”が一番不健康なのですから」とも。

そして最後に、しっかり付け加えました。

「実は、始めるのはとても簡単なことなのですが、それを続けるのが一番むずかしいんです!自分をいじる旅に出発した以上、もう続けるしかありませんからね!頑張ってくださいね!」・・・叱咤激励をお二人とも大きく声を出して笑いながら診察室を出て行きましたから、きっと大丈夫だろうなと思った次第です。

| | コメント (0)

エクソシスト様

エクソシスト様」・・・カラダやココロはそんなことしたくないのに、アタマに巣食った悪魔が指示するためにやめることができない状態・・・自分で思いついて、なかなかいい言葉だと悦に入って使っていたのですが、先日、これを聞いたうちの職場の若いスタッフに云われました・・・「『エクソシスト様』ってなんですか?『エクソシスト』って昔のホラー映画なんでしょ?リメイクが出ていましたよね」って。

そこで、ハタと気づきました。映画「エクソシスト」はなんと1973年の作品だから、わたしは高校1年生のときに観たことになります。映画館から帰ってきてからしばらくの間、自分の部屋のベッドのカーテンを開けるのがとても怖かった記憶があります。向こうの空間の暗闇に悪魔に憑りつかれたリンダブレアが居て、ぐるっと360度首を回すかもしれない、なんて妄想して(笑) そうなのです。そんな古い映画、名前は知っていても観たこともない世代にとっては、わたしが抱いたようなインパクトはないんですね。「ピンと来なーい」ってやつ? まいったな。ちょっとショックです。今なら、何に名前を変えたら理解してもらえるのかしら?

ちなみに、「エクソシスト様」と書いているのでお分かりのように、わたしはあの悪魔が「エクソシスト」だと勘違いしてましたけど、「エクソシスト」はその悪魔祓いをする祈祷師のことでした(笑) だとしたら、「エクソシスト様」は生活習慣病を改善させるための”良いヤツ”じゃないですか? まいったな。

| | コメント (0)

飲酒運転

バカ野郎が、「事故起こさなければ大丈夫だと思った」と云って、飲酒運転で殺人した。他では、逃げた挙句に酒の上乗せして証拠を隠そうとするバカ野郎。飲んでいることを知っていながら運転するやつを見送るバカ。福岡であの凄惨な事件があって以降、飲酒運転の懲罰が厳しくなったところで、するやつはする。「麻薬中毒と同じだから、罰則を厳しくしても止められない者は止められないだろう」とテレビで誰かが云ってました。だからと云って、殺人者と殺人未遂者を野放しにされてはたまったものではない。これだけ技術が発達しているのだから、運転席で呼気検査に合格しないとエンジンがかからない車を作って義務付けるなんてことは簡単にできるのではないのか。

ずっと前、若いころの同級生からメールが来た。
「今、高校の同窓会をしている。今から友人の車に乗せてもらって二次会に移動中!」
ゴキゲンな風である。
「おまえ、それ、飲酒運転じゃねえんか?」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。酔ってないし、すぐそこだから」
「大丈夫じゃねえ!」
「相変わらずマジメやねえ。そんなこと云ってたら白けるでしょ!」

ここで、切れた。
「ふざけんじゃねえぞ!お前らみたいなバカ野郎が夜中に勝手に事故起こしやがって、救急車で担ぎこまれるせいで、オレたちは当直室から無駄に叩き起されるんだ。あいつらみんな必ず口をそろえて『自分は大丈夫だと思ってた』って云うんだ。真っ赤な顔して酒の臭いをプンプンさせて待合室でオロオロしている若造たちみてると叩き殺したくなるんだ!バカじゃねえのかてめえら!」

そんなむかしを思い出してたら、テレビのニュース見ながらむかついてきた。

| | コメント (4)

孫悟空のはちまき

「食べ過ぎたり飲み過ぎたり、あるいは睡眠不足だったりすると翌朝に胸焼けしたり喉のところが焼けるように痛くなったりします。でも、そんなことしなかったら全然大丈夫なんですよ」と心配気に訴えてきた男性。

「その症状は典型的な逆流性食道炎の症状で、疑う余地がありませんよね。こういうのは”孫悟空のはちまき”と同じで、やらかしたらギュッと絞められますけど節制したらOKなのですから、楽は楽です。それが足枷になって健康的な人生を送るしかないわけだから、考え様によってはラッキーかもしれませんね(笑)」・・・まあ、そう答えるしかありません。やれば起きる、やらねば起きない。やらなければ安泰。しかもそれはまあ大した努力を要しない・・・痛風発作とお酒の関係も似たようなところがあります。

「やっぱりそうですか」・・・想像通りだったことにむしろ安堵している素振りの彼の心境が、何となく分かります。だって、わたしも逆流性食道炎の常習犯だからです。食べ過ぎない、飲み過ぎない、睡眠を十分にとる。そうしたらこの忌まわしい強烈な症状から逃れられる。それをしなかったら必ず起きる・・・わかってます。わかってますけどね、不摂生したところで、この程度のこと。不愉快だけど、そのうち嵐は通り過ぎる。最悪、薬を飲めばいい・・・”孫悟空のはちまき”だからこそ、止めるほどのモチベーションにつながるとは限らないんだよなあ、これが。だって孫悟空がどんな悪さをしたって、はちまきが締まりすぎて孫悟空のアタマを潰してしまうことはないんだもの。

注)”孫悟空のはちまき”の正式名称は、「緊箍児」(きんこじ、または、金剛圏)だそうです。

| | コメント (0)

押忍

昨日の朝も、廊下で若いドクターにすれ違いざまに「おはようございます」と声をかけたら、驚いた顔してもぞもぞ口ごもりながら行ってしまいました。朝のあいさつについてはまあ哲学を語る初歩の初歩で、いろいろな考えを巡らせることができる、いい教科書みたいな存在だなと考えています。

さて、昨朝の彼の姿を見ながら思ったことは、「聞こえてないんだな」「あいさつの習慣がないんだな」「横着なやつやな」「嫌われているのかな」「格下と思われているのかな」などというものではなく、なぜだか”押忍”。

「主に空手道・剣道・柔道などの武道の関係者の間で使われる挨拶の一つ。由来としては、旧海軍で「お早うございます」が簡略化され、その結果「オ」と「ス」が残ったもの。元々は「おはようございます」だったものが「おはよーっす」→「おわーす」→「おす」と縮まり、そこに「押して忍ぶ」(自我を抑え我慢する、の意)という言葉の漢字を当てた結果、現在の形になったのではないかと言われている。」とWikipedia。

実は今年の初めから週一回、少林拳の教室に通っています。そこで最初に交わす挨拶が”押忍”です。これがなかなか出ない。道場に昔から通っておられる有段者の皆さんは、わたしの姿を見たらすかさず”押忍”と声をかけてくれますが、どうしても云えません。最近やっと、聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声ではありますが、”押忍”と発することができるようになった程度。はずかしい、というか、慣れない単語を発する中で、もともと体育会系の硬派バリバリのことばだという刷り込みがあるせいか、なんか自分にそぐわないような気がして・・・。皆さんが使っている”押忍”は単なる挨拶ですからなんということもないことばなのでしょうけれど。

廊下ですれ違った彼の口の中のもぞもぞが、ちょうど自分が道場で”押忍”を云っているときのもぞもぞと同じ感じなのだろうかな。次からはもっと堂々と”押忍”と挨拶することにしよう!と誓った朝でした。

| | コメント (0)

コーラのラッパ飲み

むかし、ある女性の受診者さんから云われました。

「もう二度とあんな病院行きません。だって散々待たせた挙げ句に診察室の若い医者はふんぞり返っているし、話の途中でコーラをラッパ飲みするんですよ。こっちは朝から食べてない上に、ずっと待たされてイライラしているのに!」

「コーラですか?」・・・さすがにわたしも耳を疑って聞き返してしまいました。「コーラです。こんな非常識な医者が云うことなんか聞いていられますか!」・・・最後はかなり切れ気味に興奮してそう云い放たれてしまいました。前の年に要精密検査の項目があって、それの受診歴を確認したときの会話です。

こんな会話をふっと思い出したのは、ちょっとした二日酔で気分が悪くて診察室でこっそりGREEN DA・KA・RAをラッパ飲みしているときでした。断っておきますが、わたしは「こっそり」ですよ。誰も居ないときに、です。で、考えたのです。その医者はどうしてコーラのラッパ飲みをしたのだろうか?と。ときどき看護師さんが気を利かせてお茶を診察室に持ってきてくれることがあります。いわゆるコーヒーブレイクといいましょうか。なにしろ朝から山積みのカルテをにらみつけながらしゃべりまくっているのです。のどは渇きますし、アタマは疲れます。カフェインを補充したいという目的なら、緑茶でもコーラでも似たようなもので、その若医者はいわゆる「コーラ中毒」だからお茶代わりにコーラを飲む習慣だったのでしょう。じゃあそのとき、患者さんの目の前で湯飲みに入っている緑茶をすすったら同じように怒ったのだろうか?コーラ=嗜好品=健康に悪いもの(あるいはモラルの低い飲み物)という先入観が勝った可能性はあるのだろうか?じゃあそれが、ペットボトルのお茶だったらどうだろう?ポカリスエットだったら?そして今わたしが手にしているGREEN DA・KA・RAだったら・・・。忙しくて休憩も取れない診察室の中でつい水分補給のために目の前の医者が口にしてしまうものとして、どのラインまで許してもらえるのだろうか?その前に、医者の態度がもっと紳士的だったら?あるいはラッパ飲みじゃなくてコップに注いで飲んだとしたら?

などと思ってみたわけです。いやいや、飲むなら裏で飲むのが礼儀。どんな理由があってもそれは許されませんけどね・・・とわたしもたまには仕事中にこんなことを考えたりなんかしております。

| | コメント (0)

慢性胃炎

先日の職場の医局ミーティングで、素直な疑問を専門医たちにぶつけてみました。

「そもそも『萎縮性胃炎』て、画像上どんな所見のことをいうの? そして、健診受診者さんにはどういう説明の仕方をしたらいいの?」

健診やドックの結果説明現場では、胃内視鏡検査を受けた方々への所見の説明は他の結果と併せて別の診察室で説明することになっているので、実は消化器専門医でもないわたしたちがあたかも何でも知っているプロ中のプロであるかのような顔をして説明しています。だから、意外に自己流に説明しているけれどただの”はったり”であることが少なくありません。この『萎縮性胃炎』もその中のひとつです。最近はピロリの除菌が保険診療で受けられるようになって、一層この所見の存在がクローズアップされてきています。

「え、そんなのとりたてて云うような所見じゃないですからねぇ」・・・消化器内科の医師はそろって苦笑い。「『慢性胃炎の一種です』で、いいんじゃないですか」とのこたえをもらいましたが、 「いやいやいや、その『慢性胃炎』こそ得体の知れないうさんくさい存在でしょ。『慢性胃炎』ちゃ、そもそも何ですか?」と、皆のココロを代弁して食い下がってみるわたし(偉い!)。「いや、固有胃腺や胃粘膜細胞がね・・・」と説明が始まりましたが、すみません、それは一般の方には理解できない説明。わたしたちの知りたいのは、受診者さんにどう説明したらわかるのかということだから・・・(笑)

『慢性胃炎』・・・日常の会話の中でもむかしからよく使われますし、胃腸薬のCMなどでもよく耳にしますが、さてさて、『慢性胃炎』の一般向けの定義はなんでしょう?これ、意外にむずかしいんです。わたしは専門医ではないのでここには書きませんが、興味がある方はどうぞ検索してみてください。

ちなみにわたしが日々説明で云っているのは、「『萎縮性胃炎』とは”胃が年を取って細胞がしわくちゃになってきた”ということ。胃の細胞からは表面を保護する粘膜を出しているけれど、それの量が少なくなるから、胃酸の攻撃をもろに受けやすくなる。胃酸が表面に触れるととたんに出血してただれます。ただれて治って、またただれて・・・を繰り返すうちにゴツゴツした洞窟ような胃になって、それを繰り返すうちにがんや潰瘍ができやすい素地ができあがるんです。だから、胃が健気にがんばっているのだから胃酸を無駄に出させない努力をしてください。食べ過ぎない、飲み過ぎない、イライラしない、良く噛んで食べる、たばこを吸わない、よく眠る!」

「どうでしょう、こんなもんで」とくだんの医師に聞いたら、「まあそれで良いんじゃないですか。でももっと簡単でもいいと思いますけど」と。なかなかお互いしっくりきません。

| | コメント (0)

一歩もどること

狭いロッカーの内壁に傘を掛けたら、なぜだか白衣がひっかかって取り出せなくなりました。「何で?」・・・ひっかかるはずがないのであって、状況が掴めず無理に引っぱり出そうとするほどまったく動かなくなる。

「こういうときはね、行動をやめて一歩もどってリセットすると良いんだよね。大したことじゃないし特別なことじゃないけれどかえってなかなかできるもんじゃないよ。それができるこのボクの冷静さ。賞賛に値するよね」などと自褒めしながら、一旦傘を取り出してもう一度初めから掛け直したら、何ということもなくいつものように白衣を取り出すことができました。

うまくイメージできなかったと思います。なぜなら、そんなこと普通起こらない問題だから。何かとっても強引なことをしようとして混乱してしまったとか、複雑な作業をしているうちにグチャグチャに絡まってしまったとか、そういうときには「焦らずにひとつひとつもどしていけば必ず解ける」とか、「面倒でももう一度最初からやり直すと解決しやすい」とかいうことは、できるできないに関わらず経験上知っています。でも、日常から普通にできている行動で思いがけないブロックに遭ってしまったとき、人間は意外に右往左往してしまって、冷静さを欠いてしまったりするものです。

結局、大事なことは、そんなことが起きた原因を究明することではなく、再び滞りなく平穏な日常にもどること。めでたしめでたし。ちなみに、今の職場のデスクのパソコン、再起動率50%強、少なくとも2回に1回はフリーズしますけど、気にしない、気にしない。

| | コメント (0)

当たり前さ

果物と野菜はダイエットの特効薬ではない

減量する方法として果物や野菜を多く摂るよう勧められることが多いが、これは余分な体重を落とすのには役立たない可能性があるという研究論文が、「American Journal of Clinical Nutrition」6月25日に掲載された。

(中略)

「果物と野菜は健康に多くの恩恵をもたらすが、これらによって痩せることは期待できない。減量には、全体的に健康的な食事を摂りながらエネルギーを削減することが役立つ。つまり、減量するには、カロリー摂取量を減らさなくてはならない」・・・(後略)

・・・・・・・・・・・・・・

って、当たり前田のクラッカー!さ(古っ!)。食事前に大量のキャベツを食べて腹を満たしてから食事を取ると食えなくなるからやせるという「キャベツダイエット」が一時流行しました。かなり効果があった男性も多いのではないかと思いますが、その後いかがお過ごしでしょうか。キャベツの味が大好きにならない限り、食べるの大好き人間の行動変容にまでつなげられるか?は本人のモチベーション次第でしょうか。

最近はやりでわたしもよく受診者の皆さんに勧める「食べる順番療法(スローカロリー)」。これは、食事の最初に野菜を食べることで食後高血糖を回避できて糖尿病予防やインスリン感受性の改善に良い、細胞の老化を防ぐといわれるものです。結果としてやせる方もおられるでしょう。でも、以前お書きしたように、やせたいヒトや糖尿病のヒトが勘違いしているのは、食べる前のサラダひと皿を”免罪符”にしようとしていること。いつものおかずにサラダひと皿加えたら、ただの”食い過ぎ”でしょう。あるいはまず最初に野菜を飲み込んでしまう勢いで投げ込んでもインスリンや血糖に気づいてもらえてないから無意味です。

「食事に果物や野菜を加えるだけで体重の変化を引き起こす可能性は低いけれど、摂取量を増やしても体重は増加せず、食事で摂るビタミンや線維が増えるという点では良いことだと思われる」という部分はせめてもの救いでしょうか。

| | コメント (0)

「ぜんめい」と「ぜいめい」

「うちのスタッフがね、『みんな”ぜいめい”ていうでしょ?あれは間違いなんですよ。”ぜんめい”が正解なんです。だって”喘”という字は”ぜんぞく”の”ぜん”でしょ』て云うのよ。どう思います?」と、訪問看護のチーフをしている友人が酒を飲みながらいうので、「”ぜいめい”は”ぜいめい”でしょ。医学用語なんだから、間違いも正しいもなく、ただの決め事で、そこに理屈は存在しないでしょ!」と、同じように酒を飲んでいるわたしはちょっと熱くなってそう答えました。

実は・・・わたしたちの会話を聞きながらすかさずネットで検索した妻によると、「”ぜんめい”が正しいけど”ぜいめい”とも云う」らしい。「そんなのただの意見でしょ?ボクは医者として教育現場で”ぜいめい”って教わっているんだから、”ぜんめい”と云うことに反論はないけど、本当は”ぜいめい”だけど”ぜんめい”ともいう、というのが本当なんじゃないの?」と、ついムキになってしまいました。「腹腔」を医学用語では”ふっくう”というのにパソコン変換するには「ふくこう」としなければならないから、正式には”ふくこう”なんです、って云い張っているのと同じなんじゃないの?とか思ってしまうわけです。だって、こういう専門的な単なる用語は理屈でなくて決め事なんだから、答はひとつなはずでしょ!と主張したくなってしまうわたし。

で、もう一度最初にその話題を出した彼女。わたしや妻のことばを聞きながら明らかに白けています。「わたしね、そんなのどうでもいいんじゃないかと思うんです。だって、そんなどうでもいい言葉の定義じゃなくて、受け持ち患者さんのケーススタディで、もっと重要なことを話し合っているのに、”ぜんめい”でも”ぜいめい”でも、どうでもいいじゃない?」

はい、あなたが一番冷静で、一番正論。

ちなみに、「漸減」は”ぜんげん”であって”ざんげん”ではない。「施行」は”しこう”であって”せこう”ではない。最近のワープロはこの間違った読みも変換してくれます。でもこれは、絶対に認めません、わたし。意味が全く違ってしまうのですから(ワープロ変換で出るから間違いじゃない!と云い張るヒトの感性がわからない)。”ぜんめい”以外を認めないと云うヒトも同じ感覚なのかもしれません。

| | コメント (0)

ふかせばいい?

タバコの煙を吸い込む喫煙者の肺がんリスクは3.3倍:わが国の大規模症例対照研究

くだらねえ!・・・ケアネット2014.6.18配信のこの記事の見出しを見ながら、ひとり声を上げてしまいました。愛知県がんセンター研究所で大規模な症例対照研究が実施され、その結果、日本人の集団でも欧州と同様に「累積喫煙量にかかわらず、タバコの煙を吸い込むことが肺がんリスクである」ことを示した、と書いてありました(European Journal of Cancer Prevention オンライン版2014.6.6号)。

「非喫煙者に比べて、タバコの煙を吸い込まない喫煙経験者でオッズ比1.72だったのに対して、タバコの煙を吸い込む喫煙経験者は3.28だった」って。これはどういうことかというと、つまりむかしよくタバコ吸いのオッチャンが強く主張していた、あれでしょ?「おれはタバコはふかしているだけだけん。肺の中まで吸い込みよらんけん、心配いらんけん!」・・・これを証明したということでしょ? なら、「吸い方を注意したらタバコもうまく付き合えるよ」って、そう結論付けてやったらいかがでしょうか?タバコ吸いは小躍りして喜びましょうよ。

| | コメント (2)

1日8000歩

早歩き20分を含む1日8000歩が疾病予防に有効

先日行われた第51回日本リハビリテーション医学会学術集会の報告特集の中に「中之条研究の成果から」として発表された報告によると、群馬県中之条町の高齢者5000人の実態調査の結果、男女とも毎日平均8000歩以上歩き、その中に中強度の身体活動が20分以上含まれている人では、高血圧や糖尿病や脂質異常などを発症するリスクが低かった、ということです。1日平均7000歩で中強度が15分以上含まれると動脈硬化や骨粗しょう症が、5000歩+7.5分では認知症が、4000歩+5分でうつ病が予防できるということも併せて報告されています。

こういう報告は、ヒトの運動(身体活動)に対するモチベーション維持に大きな意義をもつものだと思います。ただ、勘違いしてはいけないのは、こういう場合の「予防」とは「一次予防」のことであって、すでに高血圧や脂質異常を指摘されているヒトや特定健診で積極的指導レベルで引っかかったヒト(すなわち「二次予防」)に対する運動効果の指標ではありません。日頃からこういう身体活動を続けていたヒトは病気知らずだと云っているわけで、自分の病気を治すための運動量の目安を表示しているわけではないということ、十分ご注意ください。だって、こういう研究結果に一番興味があるのは健診で異常を指摘されて凹んでいるヒトや外来で治療を余儀なくされているヒトでしょう。初めからこんな生活をしているヒトはこんな成果が出ることを目指して生活してきたわけではなく、あくまでもそういう生き方の”結果”なのです。

まあ、それはそれでいいとして、数値はどうでもいいからとにかく人間動くに越したことはないという結論があって、だから面倒くさがらずに日頃から動きましょう!ということだけ覚えておきましょう。

| | コメント (0)

みため

半年ほど前から白髪染めをしています。特に困っていたわけでもないのですが、ちょっとした好奇心で妻の毛染めを塗ってみたら、ロマンスグレー(というかごま塩アタマ)が赤茶色に光って、思いの外おもしろかったのです。

「そんな若作りしてどうするの?」と何人かに云われました。「何をこの歳で色気づいているの?」とも。でも、「みためのアンチエイジング」というのはとても大切な健康法なのですよ。そんな内容の医学雑誌すら出ているほどなのです。髪を染めるとか、肌のシミ取りをするとか、あるいはご高齢のご婦人がいくつになってもきちんと化粧をするとか、衣服にいつも気を遣ってオシャレに着こなすとか、それを面倒くさがった瞬間から、人間は老化に加速度がついてしまうのですって。

「それはわかるけど、元がもうちょっと二枚目さんならともかく・・・何をそんな田舎顔でしゃれ込んでるんだよ?若い娘に気に入られようとしても、無駄だよ!」と云われると、たしかにそうだな、とつい頷いてしまう自分が悲しい。なんせこの風貌でしょ。不毛の青春時代を過ごしてきているので、「ほどほど」というわきまえ方を覚えて生きてきました。それがこの歳になって、しゃれっ気が出てきたときに反って足かせになってしまいがち。それを振り切るためにも、この白髪染めは、なかなかおもしろい道具なわけです。この際、顔のシミ抜きもやっちゃおか。

人生、身の程知らずが一番!

| | コメント (0)

本当はぼーっとしていたい

「せっかくのお休みなのに、あなた動きすぎよ。典型的な多動児だよね」と、撮りだめした韓流ドラマをバックグラウンドに椅子にふんぞり返ってスマホとタブレットを駆使してゲームを取り仕切っている妻が、わたしを見てよくそう云います。「もっとゆっくりしたらいいのに」と。

わたしはね、動くのが嫌いではないけどね、別に動かずにはおれない性格ではないのですよ。できたら一日中どっかのっぱらで寝っ転がって、何も考えずにぼーっとして毎日を過ごしてみたい、というのが本心なのよ。もしあなたが、買ってきたり送られてきたりしたものをそのまま積み重ねていって食卓の3分の2をモノで一杯にさえしなければ、せめて週一回でも家の掃除をしてくれるなら、あるいはワンの排泄物をこまめに捨てたりブラッシングをしてあげたりしてくれるなら、ね。わたしは、目が覚めたらゴミの山の中に埋もれてしまっていたなんて人生がいやだから、動かずにはおれないんだよ。

と、こっそりグチってみた。

| | コメント (2)

知らなければいいこと

毎年ご依頼を受けて行っている某企業の健康講演の対象は、今のわたしとほぼ同じ世代です。

「エレベーターやエスカレーターを使わない方法はいたって簡単です。そんなもの存在しないと考えれば良いのです」・・・日頃からそういうスタンスで生活しているわたしの実感として、いつもそう云ってきていますし、ここでも以前に書きました。でも、聴衆の半数以上は苦笑いしていて反応は今ひとつでした.。

「そんなことできるものか!という顔をしていますね。でも、わたしたちの世代はそれができます。なぜなら、それがない時代を知っているから」・・・知っているから『あんなきついこともうできない』と思うヒトもいるかもしれませんが、生まれたときからエレベーターやエスカレーターを使うことしか知らない若い世代に『ないと思え』と云っても想像がつきにくいのでむずかしいところです。その点、わたしたちはつい最近まで階段を歩いて上がるのが当たり前でしたから、その気になれば簡単だと思うのです。

それにしても、昨日も朝の出勤時に若いお嬢さんが業務用エレベーターで待っていて、結局2階まで乗ってしまいましたが、2階とかなら自分の家でも階段使うでしょうに、とオジサンは陰でこっそり独り言を云ってしまいました。あ、そうか。違う。マンションのひとり暮らしだったら、玄関まではエレベーターで移動だ、きっと。

| | コメント (2)

十二指腸潰瘍と血液型と胃がんの関係

「十二指腸潰瘍になりやすいヒトは胃がんになりにくいんですってよ。わたしはピロリ陽性だけど若いころから十二指腸潰瘍によくなっていたから胃がんにはなりにくいんです」

先日、うちのスタッフがそんなことを云いました。何云ってるんだい!十二指腸潰瘍も胃潰瘍もピロリ菌が関与しているのだから、そんな理屈はおかしいやろ!と反論したら、だって正式に論文が出てるんです!って。早速、検索してみましたら・・・ありました(汗)

日本人は胃がんになりやすいが十二指腸潰瘍にはなりにくい
2年前に東京大学医科学研究所が理化学研究所と愛知県がんセンターとの共同研究として発表しております。ピロリ菌の感染者であっても十二指腸潰瘍患者は胃がんになりにくいということは周知の事実だった、とまで書かれています。このデータは今でも肯定されたままなのでしょうかね。で、何とこの違いに血液型が関与しているのだと。O型の人ではA型に比べ1.43倍十二指腸潰瘍になりやすいと書かれています。だから、O型のヒトは胃がんになりにくい(胃がんリスク遺伝子であるPSCA遺伝子の関与云々はとても学問的なので、各自で読んでください(笑))ということになるみたいです。

雑学として知っておくのは良いことだけれど、結局は確率論だから、「十二指腸潰瘍を起こすヒトは胃がんになりにくい」とはいえ、「十二指腸潰瘍すら起こさないヒトより胃がんになりにくい」とはどうしても思えないのですよね。あと、十二指腸潰瘍と云えばストレス潰瘍。カラダがストレスを受けやすいのはO型よりA型なのだと思っていたので血液型の件は一層意外・・・ちなみに胃がんのために58歳で亡くなったわたしの母はO型です。

| | コメント (0)

うつ

昨日と一昨日と、仕事がとても辛かった。

朝から仕事に行くけれども、運転している途中から右耳が詰まった感じがしました。左耳を押さえても聞こえはするから突発性難聴ではないんだろうなと自己判断。その後いつも通りに結果説明をしてその隙間で読影をしていたら、徐々に右目の奥が痛くなって、そのまま頭痛がし始めて、仕事をする気にならなくなってきました。途中でスタッフが部屋に入ってきて、何か頼み事をしているのだけれどまるで他人事で、「はい、わかりました」とは答えるものの、明らかにこの世のものとは違う感覚で仕事をこなす。わたしはプロだな、と感心する。でも、次の瞬間意識が消えている。ふと気づいたら、机に突っ伏して完全に意識消失していました。

やむを得ず、毎日鎮痛剤を服用。「ヤバいな」と独り言。

ところが、です。夕方に近付くにつれて急激にアタマがスッキリし始めるんです。2日ともです。16時頃になるとほとんど鼻歌交じりで非常階段を軽快に走り下りる自分の姿。自分でも「おかしいぞ」と思う。

これは、いわゆる「うつ状態」というやつではないのかしら?出会ったスタッフに「ぼく、うつかもしれん」と何度か云ってみたが、「またまた」「なにを云ってるんですか」と一笑に付される。でも、自分はもっと冷静である。

・・・そして今朝もアタマが重い。参ったぞ。

| | コメント (0)

がんの可能性

「この所見の場合、がんである可能性は何パーセントくらいあるのですか?」

健診の結果で精密検査の指示を受けた受診者さんが、精密検査を勧めるとよくそんな質問をされます。一応その答えになる数値はあるらしい(当たり前か)。それくらいはきちんと云えるようにわたしたちは医師ミーティングで勉強会をしました。

ただ、申し訳ないが、わたしは数値を覚えません。乱暴な云い方だけど、「そんなことどうでもいい」と思う。「がんかもしれない」と思われる検査所見を有するヒトのがん発見率が何パーセントかということを当の本人が知ったところで、何かメリットがあるのでしょうか。確率が低かったら(何を持って高いとか低いとか云うのかわかりませんが)どうだというのでしょうか?そんな所見がなかったヒトの群とその所見を有するヒトの群を比較したら、間違いなく後者が高いのですから(だから要再検者としてひっかけるのですから)、それで十分なのではありますまいか。

何を確認し、何をよりどころにしたいのだろう?その気持ち、わからないでもないですけど、せっかく健診を受けてわざわざ選び抜かれたのですから、さっさと専門医を受診してください。「ほらみろ。やっぱり何もなかったじゃないか!」の結果でも構いませんから。

| | コメント (0)

血液型

「先生の血液型は何ですか?ボクは、O型じゃないかと思っているんですけど、どうですか?」

先日、職場の若いスタッフからそう言われました。

「そーお?そうかな?」と曖昧に答えていると、その横からこれまた女性スタッフが、「わたしも、たぶんO型だと思います」と会話に入ってきました。

「あなた?あなたは典型的なA型でしょ!」と一笑に付すわが妻はB型。

そうなんだよな。自分でも当然、典型的なA型人間だと思って生きてきたのだけれど、いつの間にか周りからはO型に見られるようになってきたのだろうかな。先日、ここに書いたばかりですが、若い頃の父親気質が歳とともに母親気質に移行してきていることの証明でもあるのでしょうかね。

父A型(AOなのかAAなのかようしらん)、母O型、そして、わたしも姉も二人の気質を受け継いでのAO型でございます。

| | コメント (0)

« 2014年6月 | トップページ | 2014年8月 »