ヘキが痛い
「先生、最近”ヘキ”が痛いのですが、膵臓が悪いのじゃないでしょうか?」
先日人間ドックを受けられた女性が心配そうにそう質問しました。”ヘキ”・・・うちの若いアテンダントさんはそれがどこのことだかまったく分からないと云っていました。”ヘキ”とは、肩甲骨の内側の端辺りのことを云うようです。わたしも熊本で医者として働くようになって初めて知った単語ですので、きっと熊本弁なのではありますまいか。地方で働く医療人は、当然のこととしてその地方の医学用語や解剖学用語は知っておかねばなりません。それは臨床医として生きていくための基本的な常識です。
さて、その”ヘキ”の痛み。たしかにここは内臓のトラブルの訴えを表すことがある場所で、膵臓だけでなく胃やら胆のうやらからの訴えの可能性はあります。そして当然のように背骨や肋骨のトラブルなども想像できます。でも、みなさん意外に思いつかないのは頸椎のトラブルです。何を隠そう、このワタシも自分でそれを経験するまでは知りませんでした。家で掃除機をかけている途中に突然”ヘキ”の激しい痛みが出現して取れなくなりましたので、数日後に知り合いの整形外科医に相談したら、「意外にそこの痛みはクビのことがありますもんね」と云われまして、MRI検査を受けたら軽い頸椎ヘルニアが見つかりました。あのときはしばらくカラーを巻いていたら改善しまして、あれ以降、わたしの医学知識がひとつ増えました。
”ヘキ”の痛み。ことばも奥深いですが、それが表す内容も禅問答の様に奥深くて、一筋縄ではいかない症状ではあります。
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