« 2014年12月 | トップページ | 2015年2月 »

2015年1月

リバウンドとの決別?(後)

(つづく)

まあ、現在その維持期の渦中にあるわたしとしては面白く読ませていただきましたが、さて、「この身体活動の習慣化」・・・みなさん、できるかしら?歩く、走る、チャリとかだけでなく、立つ、腰掛ける、ストレッチする・・・いっぱい書いてあるんですけどね、悩んでいるのはもともと運動習慣のないヒトたちですからね。「ちょっと10分でいい」の10分はかなり長いんですよね。それが習慣化できての人生最後のダイエットなのでしょ? できるのかなあみんな、一生の習慣化が。ちなみに、最終ページの赤いくまモンの体操も、なかなか簡単そうに見えて続けるのは気合いが要りそうですよ。

今、7キロのダイエットに成功しているわたしは、つまり数年前に7キロほどリバウンドしたのですけどね、その前に10キロほど減ったとき、「もう絶対リバウンドなんてありえない」と思いました。もはや運動中毒で、大した運動ではなくて日常の身体活動として動かずにはおれない体質になったのだから、という自信がありました。首を痛めて自転車通勤できなくなりましたし、仕事量が増えて昼休みのフィットネス通いができなくなりましたけど、でもそれでもいつも10000歩程度は歩いていますし、じっとしておれなくて掃除や散歩やゴルフやといつも動き回っています。でも、7キロ増えちゃいましたよ。どうしてなんでしょうね。年齢とともに基礎代謝量はたしかに落ちますよね。シュミレーションをして頑張り始めたときの年齢も5年経てば全然違うモノになりますよね。全然変わらない体重になると、毎日セルフモニタリングすること自体も面倒くさくなりますよね。しても何も爽快ではないし。そこが日記帳と違うところ。歯磨きとも入浴とも違うところ。そこで修正をかける作業も面倒くさいし、やればできるのだからこそやりませんよね。なんかね、そんな自分の経験を思うと、人間のココロって、さほど単純でもないよなと思うんですよね。きっかけ作りにはなりますし、これで目覚めるヒトはきっと多いと思うから試してみてほしいとは思いますけど。

| | コメント (0)

リバウンドとの決別?(前)

くまモンの赤いジャージ姿に触発されてつい買ってしまったTarzan1/22号。特集は『リバウンドと決別する、人生最後のダイエット』です。日本版ウエイト・シュミレーターの応用であることも踏まえて、多くのダイエッターが手元に一冊持っているのでないでしょうか。

予防医学研究のイノベーターである石川善樹先生が考案したダイエット法は、何よりも”論より証拠”の自信に満ちているのがいいですね。先生の云うように、「メタボ健診のダイエット指導は現場の懸命な努力にもかかわらず、目立った成果を上げていない」わけで、是非とも世の中からリバウンドがなくなってしまってほしいと思います。

『日本のダイエットは、40年遅れていた!』
『短期の食事制限で目標の体重に!(減量期)』
『絶対にリバウンドしない理由がある。(維持期)』
『ウエイト・シュミレーターの使い方ガイド』

別に、わたしはこの雑誌社の回し者ではないので、どうぞ興味のおありの方は書店かAmazonかでお買い求めください。簡単にまとめると、まずは食事療法中心にガッツリ減量して(炭水化物制限が有効)、維持期に入ったら食事制限を緩めて身体活動中心に変える。特殊でハードな運動ではなくて日常生活で習慣化できる身体活動・・・毎朝意識しなくても歯磨きをするように、毎日習慣化させた身体活動を続けるだけでいい。モチベーションが続かないので、監視役としてセルフモニタリングをするのにたくさんのスマホやPCのアプリ(この場合はウエイト・シュミレーターというやつ)があるので活用すると良い、ということ(でいいのかな)。

(つづき)

| | コメント (0)

「止められない」のだとしても

「ずっと昔から高度の高血圧があって、昨年初めてクリニックを受診したけれど、『もうこれから一生クスリを飲み続けなければならない』と医師に云われたのが気になって、そのまま受診しなくなった」というドック受診者の方がおられました。保健師さんが「ちょっと、先生からガツン!と云ってやってください」という無責任な依頼(笑)とともにその方を診察室に連れてきました。

五十歳代の彼の血圧が上がり始めたのは四十歳を超えてからで、ここ数年は180~190mmHgを下らなくなったそうです。濃厚な家族歴もあり、おそらく二次性高血圧(他に原因があるために血圧が上がる状態)ではなくて、本態性高血圧(他に原因がない体質的な高血圧)の可能性が高いでしょう。それなりの生活療法をしているようですし、よほど強烈な減塩をしたら下がるかもしれないけれどあまり現実的ではなく、やはり早めに薬剤かサプリかを服用するのが良いようにわたしも思います。

で、クスリを飲むか飲まないかは本人の勝手だと思うのですが、「不安だから何かしなければならない」と思っているのであれば、とりあえず試しにクスリを飲んでみたらどうなのでしょう。「血圧のクスリは飲み始めたら止められなくなるから飲まない」というナンセンスな言い訳を信じるとしても、そんなに真面目に考えることですかしら? 悪魔に魂を売るわけでもなく、一度手を出したら取り返しがつかなくなる麻薬や覚醒剤ではないのです(タバコはそうですけど)から、もっと気軽に飲んでみたらどうでしょう。3ヶ月飲んで「やっぱりイヤだ!」と突然止めたとしても、ずっとほったらかして悪化させたヒトよりマシだと思います。どうしたらいいか悩むのだったら(悩まないヒトはどうでもいいです)、とりあえず飲む選択をしてみながらどうするか考えても何ら困らないように思うのですけど、違うかしら?

| | コメント (0)

がん予防ガイドライン

がんを生活改善で予防 米国がん学会が勧める「予防ガイドライン」

米国がん学会(ACS)ががん予防ガイドラインを発表したのは2001年です。

●標準体重を維持する
●適度な運動を習慣として続ける
●高カロリーの食品を食べない
●植物性の食品をとる
●アルコールに注意(1日純アルコールで20g以下推奨)

これをどれくらい守っているかによって約50万人の対象を5つのグループに分類し、死亡リスクを検討した結果が米国のイェシーバー大学アルベルト アインシュタイン医学校とNCIがんセンターの共同研究チームから発表されたそうです。それによると、

●全死因による死亡リスクは、もっとも順守度が高い男性では26%、女性では33%低くなった。
●がんによる死亡リスクについては、もっとも順守度が高い男性は25%、女性は24%低くなった。
●がんの発症リスクについては、男性ではもっとも順守度が高いグループは、もっとも低いグループより10%、女性では19%低くなっていた。
●種類では、胆のうがん(男女合わせて48%減)、肝臓がん(男性48%減、女性35%減)、直腸がん(男性40%減、女性36%減)などで発症が大きく減少することが確かめられた。
●生活スタイルの項目ごとのリスクについても検討したところ、全死亡率の低下にもっとも大きく影響しているのは「健康的な体重の維持」と「運動の習慣化」であることが判明した。
とのことです。

どうなのでしょうね。こういう確率論のお話は、やっておくことに越したことはないのでしょうが、やったらがんになる危険性が著しく低下するというものでもありません。実際、わたしなんかこの2項目なら遠いむかしからできていますし、特に中年以降の日本人はほとんどがクリアしている内容だろうと思います。そうなると、生活変容のモチベーションとして、このような検討結果がどの程度寄与(がんばって生活を変えてみようという気になるきっかけになる)できるものなのでしょうか?

| | コメント (0)

だったら、聞くな。

いつも思っていることなんですけどね。

「先生やせられましたね。どうやったらそんなにやせられるんですか?」と聞かれて、まあとりあえず自分のしていることを告げると、「わたしにはムリですね。ごはん大好きだから、ごはんをたくさん食べるのは止められないし、食事は満腹にならないと満足できないタチですから」とか「やっぱり運動ですか。わたしは運動は苦手だから動きたくないんですよね」とか云う方にもの申したい。だったら、聞くな。

「自分はやる気はあるんだけど残念ながらできないんですよね」ということをアピールしたいのかもしれませんが、やる気があるのなら、とりあえずしてみたらいいのに、と思います。今回のわたしのトライアルは職員の生活習慣改善プログラムですが、このイベントのスパンは3ヶ月です。3ヶ月だけしかしないのだから、いろいろ考えずにまずやってみたらいい。こんな屁理屈こね太郎のわたしですらやってみたらいろいろ新しい発見をしました。ここで何度も書いているように、ごはんは少なく炊いた方がはるかにおいしく味わえます。「少ないと物足りない」という感覚は、その量しかないと諦めた瞬間に消え去ります。運動なんて面倒くさいけど動いて何かが変わったら人間必ず動き始めます。やってみて効果がなかったとしても、あるいは効果があるけど毎日が辛いとしても、高々3ヶ月の辛抱で、終わったら止めれば良いだけのこと。人間は自分に甘いから念じただけではなかなか実行できないけれど、公の短期間のイベントだと意外にがんばれます。一生続けろとは云ってないのだから、とりあえずやってみたらいいのに・・・。ムリすることなんか誰も強いてません。苦しむことがダイエットだと思い込んでいる御仁に、このチャンスに新しい感覚で楽に生活する術を見つけられるかもしれない。机上の空論で逃げてばかりいないでやってみればいいのに、何度やり直しても何も困らないのだから勿体ないな、と思うばかり。

なんか、不満ばかり云っている御仁たちを眺めていると、そんなことばが浮かんできます。まあ、「したくない」御仁にムリは申しませんが、だったら、聞くな!

| | コメント (0)

大気汚染

新年に送られてきたMedical Tribuneに、『心疾患患者はラッシュアワーの外出避けるべき』という記事がありました。欧州心臓病学会(ESC)が2014年12月9日に発表したもので、「心疾患患者はラッシュアワーで渋滞した道路での歩行や自転車運転は回避すべき」「運動は道路沿いではなく公園や庭で」などという奨励項目が含まれているのだそうです。大気汚染の深刻さがいよいよそんな時代になったのか・・・以前から冗談交じりに交わされていたブラックジョークも、確信のあるエビデンスのもとで公に発表されるとなると、企業や政治家の圧力をしても抑えられないほどに重篤な現実としてとらえるべき現状なのでしょうね。

記事によると、2010年の大気汚染による死亡者は世界で300万人、疾病負荷の寄与度でいくと大気汚染は9位で、10位の運動不足や11位の塩分過多より上位にあるのだそうです。大気汚染の健康被害は呼吸器の疾患だけでなく循環器疾患にも関与していることは、わたしたち循環器内科医でなくても知られていることですが、それが心血管疾患を持つ人の病態を悪化させるだけでなく、心血管疾患を新たに発症させる危険性もあるということがPM(粒子状物質)に関わるエビデンスとして示されているようです。まあ、PM2.5の影響(つまりはタバコの影響)を考えれば容易に想像つく話ではあります。

できるだけ外に出ないでクリーンな室内環境で生活する時代・・・いよいよ近未来の映画さながらの荒廃した地球の時代が現実になって来ています。恐ろしくも悲しいお話です。

| | コメント (0)

悩ましい判定(後)

(つづき)

腹部超音波検査の『膵のう胞』所見の精査もいつも問題になります。膵臓がんはなかなか見つけにくい病気で、見つかったときは手遅れのことが多いので膵臓の検査所見にはとてもナーバスになります。「そんな小さな膵のう胞ぐらいで精密検査したって大部分は正常なんだから・・・」と臨床現場からお叱りを受けますが、膵臓がんが早期の状態で見つけられる可能性はそのレベルしかないのですし、問題なくてもそれが変化するときががん化のときなのだから、定期フォローしなければならないわけです。それをだれがどのタイミングでするのか。「そんなもの、ほとんどは問題ないのだから、半年か1年後に健診で評価したらいいじゃないか」と簡単に云いますが、受診者さんにとって「問題ないもの」なら1年後にムリして受ける必要もないわけですし、その中のごく一部は確実に1年後では手遅れなヒトになる・・・みなさんは結果論と確率論だけで他人事のように話しますが、対策型の集団検診ではなく人間ドックである以上、受診者さんひとりひとりの将来がどちらのパターンになるかなんて、どうやったら予見できるのでしょうか。

「何でもかんでも外来に丸投げするのは健診のあるべき姿ではない」はわかるのだけれど、何でもかんでも健診で引き受けるのは負担が大きすぎます。困るのはいつも中に挟まる受診者本人・・・やはり持つべきはそんなときに精査を受ける大病院の存在ではなく、日頃から何でも相談できるかかりつけ医(主治医)を持つことのように思います。

| | コメント (0)

悩ましい判定(前)

先日、人間ドックを受けたある男性の全大腸内視鏡検査の評価が<要治療>から<要経過観察>に結果説明直前で変更されていました。4年前に発見された5ミリ程度のポリープと比べて大きさに大差ないが形状が明らかに変わっていたために施行医はそろそろ切除術をした方がいいと判断し<要治療>にしたけれど、その後で画像を再評価する担当だった医者は4年間でこの程度しか変わってないのだから1年後の再検査で確認しても遅くはないと考えて判定を軽くしたのだろうことが伺い知れました。だから、そのまま受診者本人にそのように説明したのですが・・・とても不安そうな表情をされました。その気持ち、とてもよく分かります。一旦<要治療>にされたものなのです。そういう意見もある中で、「本当に1年後でいいの?」という思い。もちろん、健診の評価結果の如何にかかわらず、そこに所見はあるのですから、ポリープ切除術を積極的に行っている専門病院でセカンドオピニオン的相談をしてもいいと思いますので、そう話しました。それでもどこか合点がいかない様子。

「本当にそれでいいのですね?」と念を押されると、「たぶん・・・」としか答えられない自分がいます。それはもはや神のみぞ知る、の領域なのですから。自分や自分の身内なら「大丈夫です」と答えられるけれど、相手はお金を払って検査を受けた赤の他人。だから、厄介なのです。                    (つづく)

| | コメント (0)

一喜一憂はイヤだ

昨日、またまた体重が減っていました。一昨日から300グラム減。その一日前に400グラム減。ダイエット開始からとうとう7キロ以上減ってしまいました。

どういうことだ?最近は夕食の後でビスコやせんべいを食べる回数が増えているというのに。運動量が増えたわけでもないのに。まあ、良いんですよ。「あら、また減っちゃったか。どうかしているぞ、大丈夫かな」とか口にしながらも「えっへっへ、すげえな」とか密かにほくそ笑んだりなんかするのも事実ですから・・・でも、良いのかな、ホントに?

もともと痩せるのが目的ではなくて、「腰のくびれを作る」「尻をキュッと引き上げる」が達成できれば良かったわけで(これはまだほとんど達成できていません)、結果として減量できたらそれで良かった。なのに人間って、欲タレです・・・大したことしているわけではないからそろそろ平衡状態になるはずだと思いながらも、体重計に載るときはとにかく息を吐けるだけ吐いてそっと載る。まだ右肩下がりの直線が続いていくのが解せない、とか云いながら自分のスリムなシルエットを鏡で見て内心喜ぶ一方で、いつ終わるのか考えると不安になったりします。これで横ばいになったらなったで、もはや引き出しはないのだから、これからリバウンドし始めても成す術がないじゃないか、そうなったらどうしよう?と焦るに違いない。バカみたいです。

いじらなかったらこんな一喜一憂もなかった・・・そんな葛藤と後悔を繰り返しながら、10キロレベルの上げ下げをもう3、4回やってきています。

| | コメント (0)

こどもの感性

我が家の愛犬はビアデッドコリーという犬種で、両目がカーテンのような前髪で隠れています。ちゃんとつぶらな瞳があるのですが周りからみると目がないように見えるようで、そこがとてもチャーミングです。目立つ犬種なので、公園を散歩していると注目を浴びます。特にこどもたちは必ず見つけます。

すると、こどもたちの反応は明らかにふたつに分かれます。
「目が見えなくてかわいい!」という声と、「目が見えないから怖い!」という声です。「あのイヌ、目がないねえ」「毛で隠れているけどちゃんとあるよ。かわいいね~」・・・そんな親子の会話は想定できますが、「ほら、ワンちゃん。かわいいね~」「イヤだよ。怖いよ~!」の会話をすれ違いざまに何度も聞かされると、その意外な反応に驚かされます。こどもたちの目線からみると大きくて異様な生き物に見えるのかもしれません。子どもたちにとって、「目」から得られる情報はとても大切なものなのだということを改めて知ることができます。彼らは、見知らぬモノと対峙するとき、あるいは大切なお母さんやお父さんと話す場合も、相手がココロを許しても大丈夫な存在かどうかを目の中の表情から判断するのだろうなと思います。ココロから優しく微笑んだ目でのぞき込んであげないと、子どもたちのココロは閉ざされるのです。

実は、イヌたちも同様です。彼らもまた人間たちの表情を敏感に感じ取って生きています。だから、我が家の愛犬は子どもたちが苦手・・・小さな子どもたちは突然何をしでかすか分からないから表情を読み取れずに不安な様子です。

| | コメント (0)

20世紀少年

通称「ようじ動画」少年。19歳。各放送局が取り上げ過ぎ。見るからに稚拙で幼稚な行動は、いちいち解説は無用だから、さっさと報道から抹殺すべきこと。その他のうざい非常識動画の数々も、ネットで話題になったからと云ってマスコミがいちいち取り上げないでもらいたい。取り上げてもらいたいからやらかすのだから無視してほしい。ウンザリ。

この子の中学時代の同級生の女子が「そんな子がいたことを覚えていない」と云って、ナレーションが「その頃から彼の存在が透明になっていった」と表現したのが、妙に耳から離れません。ホントに映画の『20世紀少年』みたいな存在の人って居るんだ? 私は、たとえ話をしたことがないとしても、小学校時代から大学まで同じクラスのメンバーくらいは分かる。名前を聞いても卒業アルバムを見ても存在を思い出せない級友は居ないと思うから、同じクラスの女子にそんなこと云われる気持ちは計り知れない・・・どんなにやり方が稚拙でも、やっぱり『自分の存在価値』を見出したくて悶々としている若者は少なくないのかもしれない。

イスラム国に向かおうとする若者たちも、オウム真理教に入信した若者たちも、みんな基本は同じなのだろうけれど、そういうことに是も否も論じる気になれません。自分のことなのだから、勝手に自分で考えればいい。とにかくもう実害なく解決したことだから、犯罪心理学のどうのこうのは要らない。

| | コメント (0)

おいしいと思うこと

日本病態栄養学会が今年の学術集会で『京都和食宣言2015』というのを発表した、という話題がMTProに掲載されていました。昨年末に和食が世界無形文化遺産に登録されたこともあり、和食が欧米食と比べていかに健康維持・増進のために優れているかのエビデンスを国内外に発信しよう!というものだそうです。

和食がいかに健康にいいか、予防効果や病気の改善に有効か、各分野の研究が進むことはすばらしいことだと思いますが、食事は理屈ではありません。クスリでもありません。おいしいことが重要ですし、それの値段が高くないことが大前提です。和食が若い人たちや庶民に定着できなかったのは、日本庶民が飢えをしのぐために口にしていた貧相な食事に比べて、欧米から入ってきた天使のような食べものが今まで経験したことのないおいしさで日本人の舌を狂わせたせいです。しかもそれが安く手に入るようになってきた。和食の粋を極めた料理人の味はすばらしいかも知れないけれど高くて庶民の毎日の食卓には載せられないのに対して、洋食やファストフードの多くは大量でも安い。

和食の復活を促す方法は明快です。若いヒトの舌が「おいしい」と認めるものを生み出して、子どものころから好んで食べるようになること。そしてそれが安くていつでもどこでも簡単に手に入ること。食の安全性が叫ばれる昨今、理屈より実益で和食が他の食材を凌駕できるようになることを願って止みません。

| | コメント (0)

試行錯誤

「どうやったら腰がくびれますか」

先日、私と同い年の妙齢の女性受診者さんから単刀直入に質問されました。「やせるためとかいうのではなくて、女性として若いころの腰のくびれを取り戻すぞ、という強い気持ちでかんばるのがいいと思います」とわたしが云ったことへの返しです。

ちょっと考えるふりをした後で、「まあ、いろいろ試行錯誤してみてください」とお答えしました。これは、意地悪で云っているのではありません。もちろん専門的にどんな運動をしてどんな生活をすると効果が期待できるかという知識はあります。でも、健康に関するハウツーは、結局やってみないと効果があるかどうか分かりません。よく『こうやったら誰でも簡単にやせられる』とか、『私はこうやってダイエットに成功した』などという本を見かけますが、それを読んで期待通りにやせた人をほとんど見たことがありません。「云われた通りにやったのに、どうしてやせないんですか?」と詰め寄られても困ります。やり方が違っているとか実践が徹底できなかったとかいうのでなくても、効果の出ない人には出ません。わたしも自分なりのやせ方を体得しています(あとはそれをするかしないかだけ)。「どうやったら先生のようにやせられますか」と講演会などでも質問されたことがありますが絶対に答えませんでした。「これをやったら絶対に簡単にやせられますから、いちいち回り道せずにわたしの方法を実践してみてください」と云いきるダイエットのプロの自信には恐れ入りますが、わたしは人に説くほどの自信はないのです。わたしにしか通用しないやり方だと思っていますから。

目的と夢に向かった試行錯誤は意外に楽しいものです。できなきゃ他の方法に変えれば良い。「これが王道のはずなのになぜわたしだけうまくいかない?わたしはダメな人間?」などと悩まずに済みますし、自分で自分に課した決め事は自分との契約ですから、知っているのは神様と自分だけです。まあどうぞ、見違えるような自分になった姿を夢見てやってみてください。唯一わたしが助言するなら、「何をするでも良いですけれど、今日から取りかかってください。明日から、では永久にやりません」とだけお伝えしておきます。

| | コメント (0)

低炭水化物ダイエット(後)

(つづき)

わたしは、もともと食の執着がありません(目の前にあるから食うだけ)。夜の食卓からご飯がなくなっただけで、おかずはそのままの量であっても何ら問題を感じません・・・「増えもせず減りもせず」です。朝食は健康のためにむかしから意図的に食べていませんし、昼食は小さな愛妻弁当・・・結局、日常の食生活からご飯が減っただけです。それでも何のストレスもありませんし、反って、今まで以上に目の前の食材をしっかり噛み倒す感覚が増え、それだけでお腹いっぱいになるようになりました。奇しくも今回初めて気付いたのですが、ご飯があると、ついおかずをご飯で流し込む感じになりますが、ご飯がないと間違いなくおかずにだけ素直に対峙できます。おかずの量さえ増やさなければ、何も考えなくてもそう簡単には飲み込みません。

学会で論じられて、わたしがいつも疑問に思うこと=炭水化物を減らすならタンパク質を増やさなければならず、タンパク質を減らすなら炭水化物を増やすべしというのは必要なのか?両方とも減らしても何ら困らないのではないか?=が、一層強く感じられるようになった今日このごろです。噛みさえすれば、量が少なくてもガマンすることなくすぐに満腹になれるぞ!という理屈にも自信が生まれてきました。

ただ、筋肉が減っていきます。同時にカラダを動かすようにはしていますが、やはり年寄りはどうしても筋肉がやせてしまいますね。アンチエイジング・・・負けんぞ!

| | コメント (0)

低炭水化物ダイエット(前)

おかげさまで、年末から取り組んでいるダイエットプログラムは想像以上に効果が出ていて3月の職員健診が楽しみです。周りの人たちは成果が出た原因をいろいろ考えてくれていますが、もうはっきりしています。明らかに「夕食でごはんを食べない」の効果です。お昼の手弁当にはご飯が入っていますから、極端な炭水化物抜きではありませんが、たしかに『低炭水化物ダイエット』が実践できています。単に脱水になるだけだとか、農耕民族である日本人には合わないのではないかなどといろいろ思ってきましたが、自分のカラダを使って実験した結果がこうだとなると、その成果を認めざるを得ません。

それでは、世の中、同様にがんばっているのにどうして思うほど成功しない人が多いのか?いろいろ考察してみました。もちろん、男性より女性の方がうまくいかない人が多い感じなので、女性ホルモンの影響は否定できません(女性らしさを作り出す女性ホルモンは、とても大事なホルモンです)。でも、それだけではない気がします。やはり「食い過ぎ」だと思いますよ。低炭水化物ダイエットの概念が支持される理由は、「炭水化物だけ摂らなければあとは何をどれだけ食べてもやせられる」が売りです。基本、太っている人は食べるのが大好きですから、食事制限なしでダイエットできる方法がベストです。だから”渡りに船”のすばらしいダイエット方だ!とばかりにこの方法に食いついてくるわけでしょう。

でも、それを実践してうまくいかない人には、やはりこの方法は合ってませんよ。少なくとも、炭水化物を減らすだけでは通用しない、そんな体質なのだと悟るべきだと思います。     (つづく)

| | コメント (0)

きっかけづくり

同僚のドクターから相談をうけました。「先生、ちょっと教えてください。先日、自分で糖負荷検査を受けてみたらこんな結果だったんだけど、これってやっぱり異常なの?」・・・示された検査結果報告書には、空腹時血糖100、1時間後170、2時間後102、とありました。

「やっぱり、ボクは境界型なのかな?」と不安気。
「まあ、正常ではないですから境界型と云えば境界型でしょうね。でもまったく大したことないですよ」
「でしょ。心配しなくていいんよね?」
「正常ではないんだから、心配はしてほしいです(笑) けど、この程度の変化なんて、睡眠不足とかストレスが溜まったとかだけでも出てくる値だから、むしろこれを機に生活を見直してみたらいいんじゃないですか?」と答えました。

健診では、こんな異常でも何でもないものに、「今にも糖尿病になるぞ!」みたいな脅し方をして不安に陥れるから、けしからん! と怒る臨床医が居ますけれど、わたしはそうは思いません。その発想はやはり「病気ありき」の医療病です。「そんなもの病気ではないんだから」というやつ。現代社会の中で生活する上で、よほど乱れた生活を送らない限り、こんな検査結果から糖尿病になることなんて絶対にないことぐらい分かっています。ただ、そのヒトに与えられた数値の持つ意味は、「これをきっかけに、少し生活を見直してみてはどうか?」ということだと思うのです。ダラダラとメリハリのない人生を歩んではいないか?ついつい噛まずに飲み込んでいないか?家族や仕事のことで悩みが溜まってきていないか?十分に睡眠は取れているか?「この歳になるとそんなことはしょうがない」と諦めずに、「何か変えてみようかな」と思い始めるきっかけづくりになればいい・・・わたしはいつもそう思いながら、例の血糖上昇のイラストを描いて糖尿病のはなしをしています。

| | コメント (0)

恐るべし腸内細菌

Medical ASAHI2014.12号の特集から、第46回日本動脈硬化学会総会のシンポジウム『腸内細菌と代謝異常』の記事を切り取ってずっと持って歩いておりましたが、やっと読むことができました。10年以上前、腸内細菌がアレルギーや代謝のコントロールをしているようだ、という記事を読んで甚く感動していたら「そんな眉唾物のはなしをまことしやかに語っていると、先生自身の品格を問われるからやめておいた方がいいぞ」と先輩医師から忠告されたことを思い出しました。そんな扱いだった腸内細菌叢のメカニズムは、今や動脈硬化学会のシンポジウムで特集される時代になったのですね。それ自体が、感動ものです。

ヒトの腸内の常在細菌の数100兆個以上(人体の細胞数60兆個より多い)、1.5キロの重量を持つ腸内細菌がヒトと共存しているわけですが、これらが腸管から栄養吸収して、腸の免疫や病原体の感染予防に働いている一方、ライフスタイルの変化や医療行為によって腸内細菌のバランスが壊れるだけでクローン病や潰瘍性大腸炎などを引き起こすことが分かっています。さらに、腸内細菌のバランスの乱れが肥満、糖尿病、アトピー、喘息などをも引き起こすのです。

筑波大の渋谷彰先生は、抗生物質によって腸内のカビ(カンジダ)が増加することが引き金となって血液中や気道のプロスタグランジンE2が増加し、それが血液を介して肺に達することでマクロファージ増加をもたらして喘息が重症化するメカニズムを説明しています。

神戸大学の山下智也先生は、動脈硬化危険因子のコントロールだけでは心血管イベントの抑制はできないことに触れ、慢性炎症疾患である動脈硬化予防が腸内細菌による腸管免疫機能の調節制御でできるようになるのではないかという可能性について述べていました。

慶応大学の入江潤一郎先生は、腸管がひとつの独立した内分泌代謝臓器であるという考え方を示されました(ちょうど脂肪細胞がホルモン産生臓器であるという概念と似ているように思います)。腸内細菌が産生したり分解したりするホルモン系が代謝異常の原因になるわけで、肥満も糖尿病もそれで説明することができるから、腸内細菌叢を変化させることで代謝異常の治療ができるのではないかという取り組みが模索されていることを示しています。

なんか、ワクワクしますよね。

| | コメント (0)

女性の加齢変化(後)

(つづき)

そこに書かれていることは、あまりに陳腐で当たり前のことでした。特に、運動と食事と下着に注意を注いでいたわけですが・・・。
● 運動:美しい姿勢をとることを常に意識したりたくさん歩くことを心がけたりしている。日常生活の中での活動強度を自然に上げる工夫をしている。
●食事:暴飲暴食をせず、規則正しい食生活を心がけている。
●下着(さすがに下着メーカーらしい解析):正しいサイズのブラジャーやガードルを着用し、素材や設計特性も自分に合った者を選んで着用している。

加齢変化は、単に太るのではなく、形が変わる変化です。四肢の変化は少なく体幹部の変化が大きい。皮膚がたるみ、筋肉と脂肪(内部組織)の構成比が変化する。体幹部の変化のうち、バストが下がることとヒップが下がることは不可逆的な変化で如何ともしがたいところがあります。でも、くどいようですが、その中に人生を通して体型が変化しない人が4人に1人は居るのです。単に、日常生活を健康的に生き生きと暮らし、自然に(ムリせず)運動や食事や下着選びを工夫しているだけでそれを実現させている女性たち・・・方や、それをしなければ例外なく体型は崩れるという事実。それを考えると、女子中学生や女子高生に、偽りの体型管理のウソ情報がインプットされるより前に今回のような事実をきちんと教えられれば、若い彼女たちは必ず素直な心で云うことを聞いて習慣化させるはずです。結局、体型維持は生活習慣、それもストイックなモデルのような生き方ではなく、健康的な生き方でしかないのだと云うことを、人生のより早い時期にきちんと啓蒙啓発すること、これこそが下着メーカーの使命である!と痛感しました。

| | コメント (0)

女性の加齢変化(前)

日本抗加齢医学会の学会誌の特集『見た目のアンチエイジングupdate』から紹介したいもうひとつの話題は、大手下着メーカーワコールの人間科学研究開発一課課長の坂本晶子さんの「日本人女性の加齢による体型変化」というものです。1964年以降成人女性の人体計測を継続的に繰り返した結果を元に日本女性の加齢による体型変化の実態を調べており、その莫大なデータの存在にも驚きましたが、そこから出てくる事実は超リアルです。やはり第一線の下着メーカーの研究は、単なる”研究のための研究”とは一線を画した現実的なものでした。実際、わたしの妻とその同年代の友人にこの本を見せたら、感嘆とも絶望とも取れる奇声を上げて騒いでいました。バスト、ウエスト、腹部、ヒップ、太ももの付け根周径ともに20代後半に最も細く締まっていること、30代前半から50代前半にかけて全体的に胴体が太くなって50代前半にはバスト周径=腹部周径となること、そして、腹部形状/ヒップ形状/バスト形状がいずれも30年の間に例外なく3段階のステップを踏みながら変化していくことなどがこと細かに書かれていまして、メモしながら「なるほど」と、ちょっと感動しました。

で、この30年の経年的な変化を追いかける中で、加齢変化が小さくて若いときの体型を維持できていた人が約25%存在した(30年間体型が変化しない人が4人に1人はいた)ことに注目し、そんなヒトたちの特徴を検討しています。この研究の最大の意義はそこにあります。どうやったら、若さを維持できるのか?
                              (つづく)

| | コメント (0)

なぜ若く見られたいのか?(後)

(つづき)

ところが、進化のメカニズムには、この”自然淘汰”のほかにもうひとつ、”性淘汰”というものがあります。種の保存のため配偶相手を手に入れるために有利な形に適応進化していくわけです。シカの角やイノシシの牙のようにオス同士が戦って勝つための進化もありますが、メスへの求愛行動に合った形への変化も起きます。これは「メスによる選り好み」・・・悲しいかな、オスはメスに気に入られるように形状を変えていきます。どんなに強くてもメスに気に入られなければ勝ち残れないのです。だから、たとえ重くて疲れる飾り羽であってもメスの好みであるならばそれに合わせて形を変えることがある・・・涙ぐましい努力・・・つまり、「自然淘汰上は不利であるにもかかわらず、性淘汰上、それを上回る利益があるならば」進化するのであります。

さて「若さ」 のことですが、ここで重要なことは、ヒトは成長速度が著しく遅い上に、寿命が長いのに女性の繁殖可能期間がきわめて短い、という事実です。それは他の霊長類と決定的に異なります。ヒト以外の霊長類は寿命が尽きる直前まで繁殖可能なのに、ヒトは閉経以降繁殖不可能となります。とすると、その女性が繁殖可能かどうかを見分ける手段は、外見上の「若さ」しかありません。女性の若さを性的魅力と感じることのメリットはそこにあります。女性の若さに対して敏感に反応し、それを魅力と感じることこそがヒトの繁殖戦略において決定的に重要な要素である、と長谷川先生は解説しています。なるほど、とここで合点がいきます。たしかに、チンパンジーのオスは、育児経験が乏しく子育てが下手で初めて発情したような若いメスには積極的に交尾を求めにはいかないものなのに、ヒトのオスは、若い女性ほど発情してしまう。男性は若い配偶者を獲得することを求め、女性は自分を若くみせるように努力する。それは、そんなヒト特有の特殊な事情があるからなわけです。

| | コメント (0)

なぜ若く見られたいのか?(前)

日本抗加齢医学会の学会誌は内容が豊富ですが、なかなかしっかり読み込む時間が作れずにいました。今回たまたまた時間が取れたので最新刊の特集『見た目のアンチエイジングupdate』を読むことができました。見た目が生命予後に関係し、若さを保つことが呆けずに長生きする基本である、というデータがたくさん並ぶようになりました。ここでも何度もその手のデータの紹介をしてきましたが、今回はこの特集記事を読みながら興味をもったものを2つご紹介します。

まず、総合研究大学院大学の長谷川眞理子先生の書かれた記事:「なぜ若くみられたいか?進化生物学からみたヒトの生活史パラメータ」です。ヒトの性的魅力に関する研究では、どんな社会においても、特に女性の場合は、その美しさの魅力の根源は「若さ」ですが、女性はどうしてそんなに若くみせたいのか?ということを進化の側面から考察した記事です。とても面白く、なるほどなあと感心しながら読みました。

『進化』とは、生物の形が世代とともに変化していくことで、①中立進化のメカニズム(偶然による変化)と②適応進化のメカニズム(方向性をもった変化の2種類があります。①は対立する遺伝子が何であっても適応度に差がないとき(たとえばABO血液型の変化などのように、どっちをとってもさほど有利や不利の差が生じないとき)に起きるもの。それに対して②は対立遺伝子によって生存率や繁殖率に大きく差があるときに働くもので、これがいわゆる”自然淘汰”のメカニズムです。生物は、この自然淘汰の繰り返しで環境の変化に適応しながら生き延びてきたわけです。
                                  (つづく)

| | コメント (0)

平行線

「今週末は一泊で大分に帰るでしょ。来週は講演会からの観劇、その次の週は送別会と出張、その次の週はゴルフ・・・」
「先生、新年早々から忙しいですねえ」
「まあね。ボクはいつも週末から予定が埋まっていくからね」
「それじゃあ、週末がちっともゆっくりできないじゃないですか。いつも仕事が忙しいのだから、週末くらいゆっくりしたらいいのに」
「イヤだよ。せっかくの休みなんだよ!せっかくの休みにウダウダしてたら、人生の半分を捨てるようなもんじゃない?」
「えーそうかな。せっかくの休みだからこそ何もしないでゆっくり休むのが一番幸せじゃないですか?」

わたしの友人は妻と同じことを云う。でも、これだけは相容れない考え方だ。せっかくの自由時間だからゆっくりする、だって?何を云うか!せっかくの自由時間だからこそ朝早くから有意義に使わなければ勿体ないではないか! というわけで、日曜や休日の午前中、妻は起きてこないが起こす気はない。邪魔者が居ないこの時間こそ、わたしの大事な時間だから、一番やりたいことをやる。とても楽しい時間。なのに、今日と明日は妻と一緒に旅に出る。今日は夕食の店を予約した。明日は法事だ。時間の使い方のひとつひとつに気を遣わなければならない。ちっとばかり、面倒くさい週末だが、やむをえないか。

| | コメント (0)

本当に無意味なのか?(後)

(つづき)

「この大根を食うと、不思議なことに宝くじが当たりやすくなる」・・・極端な話、統計学だけで語ればこういう結果もあり得るわけですが、これが世に出ないのは、大根と宝くじ当選に理論的な因果関係が全くないからです。それに比べて、たとえば今回の低GI食の効果については理論的には理にかなっています。ただ統計学的に有意差が出なかった。つまり、この理論で有効な成果が出たヒトは少なからず居るはず。それはたまたまの結果なのではなく、おそらく食べ方や時間帯や食べ合わせなどいろいろな要素が関連しているのでしょうけれど、それでも「低GI食を食う」という行為はインスリンや血圧に悪影響は与えていないはずです。それなのに、おそらくこの研究成果が社会的に大きく取り上げられるならば、「低GI食を選ぶのは無駄な行為」と皆が判断するようになるのではないかと懸念します。納豆がカラダに悪いはずはなく、適量の食い方でやせたヒトが少なからず居るから「納豆はダイエットに有効」という仮説が生まれたわけで、STAP細胞のありなしを語っているのとはちょっと違います。なのにこれを”全否定”するのはいかがなものでしょうか?

統計学的有意差というのは、効果があった者もいるがなかった者もいる。合計すると効果がなかった者の方が多かったか、効果があった者があまり大人数居なかったために「有意差なし」となり、この現象は普遍的な事実ではないという結論に達したというだけのことです。これを売り物にする薬やサプリを否定するのは意味があることですが、この結果をもって、「この方法は効果がないからやるべきではない」となってしまうのは、ちょと違うのではないかと感じて、そこに大きな違和感を覚えます。

| | コメント (0)

本当に無意味なのか?(前)

低GI食、インスリン感受性や収縮期血圧を改善せず/JAMA

新年早々、CareNetを通してJAMAの記事が紹介されていました(JAMA2014.12.17号)。炭水化物による食後高血糖の程度を表すグリセミック指数(GI)が低いものを食べても、高GI食を摂った場合と比べてインスリンの働きの改善や血圧改善に有意な差が見いだせなかった、というアメリカからの報告です(Sacks FM, et al. JAMA. 2014; 312: 2531-2541)。内容に興味のおありの方はどうぞ原著をお読みください。

「これらの結果を踏まえて著者は、『Dietary Approaches to Stop Hypertension(DASH)タイプのダイエットで、GI指数を用いて特定の食品を選んでも、心血管リスク因子やインスリン感受性には結び付かないようだ』とまとめている」という文章を読むにつけ、わたしは首をかしげてしまいます。「健康番組に医者が提示するデータの半数以上が本当かどうかあやしい」という報告を年末にどこかで読みました(たしかに、そりゃ言い過ぎでしょう!と思うものは見ていてたくさんある)が、基本的に科学データは統計学であり、有意差検定の結果出てきている集団の真理ですから、方や「有効」という結果があり、方や「それは無意味」という結果があるのはよく分かります。以前、某人気テレビ番組の検証データがねつ造だったというので大騒ぎになったことがあります。納豆が突然店頭から消えたかと思ったら急にだぶついて、一般市民だけでなく納豆産業が右往左往させられた事件。  
                                (つづく)

| | コメント (0)

早寝

「わたしはね、夜の11時過ぎから毎晩欠かさずストレッチ体操をしているのよ。若さを保たんといかんからね」

独り暮らしの義母は今年83歳になります。「お義母さんはいつも何時ごろ寝るんですか?」と聞いたら、「12時!」ときっぱり答えてくれました。若いときから洋裁で身を立てて来た彼女は今でも現役で働いています。そんな義母は若いときから宵っ張りで、その娘である妻もまた宵っ張り。

「お義母さん、若さを保つんだったらストレッチも大事だけど、もうちょっと早く寝た方が良いですよ。体内時計に合わせて10時か11時ころまでに床に就くと、出るべきホルモンがきちんと出るんです。眠っている間、特に寝入ってすぐにだけ出てくるホルモンが細胞のキズを修復させてくれるんですよ」とアドバイスしたら、「そう?わかった。やってみます。わたしはお医者さんの云うことはきちんと守るのが自慢だけんね」と云って笑いました。

でも、そんな話をした帰りに思ったのですが、独り暮らしをしていると夜に床に就くタイミングってむずかしいのではないかしら。たまに妻の旅行などで独りで留守番をすることがありますが、そんなときはつい日頃よりも宵っ張りになります。誰もいない家の電灯を全部消して床に潜り込むタイミングがむずかしく、何か時間が勿体ない気がして、ふと気づくと夜中になっていたりします。早寝早起きするとカラダに良い事はわかっているのですが・・・。でも、お義母さん、睡眠中の成長ホルモンを引っ張り出すためにも、是非2時間早く床に就いてみてくださいませ。

| | コメント (0)

見るからに

わたしの出身大学は、附属病院の建物と医学部の建物とが県道を隔てて向かい合って建っています。先日、久しぶりにその前を通りました。信号待ちしているおにいさんが見えました。小柄で痩せぎすでボサボサ頭に上枠だけ黒の枠に分厚いレンズのメガネ、白のYシャツの上に何年も着ているような地味なセーターを着て、足元はサンダル履き・・・それは、誰が見ても『薄汚い研究室で動物実験ばかりしているおにいちゃん』と想像できる典型的な姿だったから、つい笑ってしまいました。”見るからに”というやつ。

どうしてなのでしょうかね。姿かたちや立ち振る舞いをみると意外に職業がわかる、ということ多いです。人間ドック受診者の方を見ていても、「あ、この女性、学校の先生だろう、それも小学校の」とか、「これは県職畑んー十年のベテランさんだな」とか第一印象で感じるときにはまず間違いありません。いつの間にか、それらしい空気になってしまうのは、ある意味、職業病なのでしょうか(別に”病気”ではありませんが)。”見るからに”それらしく振る舞う、ということは、実はきちんとその仕事を全うするには重要なことなのかもしれませんし、そうやっていると自ずとそういう身のこなしや服装になってしまうのかもしれません。人間、見た目で判断できないとは云いますが、やっぱりその職に精通した方々が破天荒だったりチャラ男だったりするのは概ねテレビドラマの中だけのはなしではないかと思います。

むかし、大学演劇をしていたころ、「小学校の校長先生をやって!」とか「次は警察官」とか、ただ歩くだけでそういう職業が想像できるようにする練習をやったことがあります。そういう”みるからに”の表現がうまい連中が集団でなりきりウォーキングしてみると、まさしくそこは職員室になったり警察署になったりしました。

| | コメント (0)

学生時代に戻るとしたら?

元旦に、うたた寝しながらフッと思ったことがあります。

もし今から学生になるとしたら、果たしてできるだろうか?学生生活の楽しい部活や友人関係のことではありません。毎日学校に通って勉強をする日々を過ごす、ということができるだろうか?ということ。毎日いろいろなことを学んで、いろいろなことを覚えて、そして定期的に試験があるのです。何年かに一回は入学試験や卒業試験、そして節目で資格試験も乗り越えなければならない。今の自分の脳にそんなキャパがあるだろうか?そんなエネルギーが湧き出るだろうか?

全然自信がありません。新しいことを学び、若いころには理解できなかったいろいろを分かるようになる喜びはたしかにあります。それは今でも経験する世界です。ご高齢になってからもう一度大学などに入り直して勉強したくなる気持ち、わかります。でも、そこに自由度がないと、きちんと覚えていかなければならない”ノルマ”が課せられると、途端に重くなる。このブログをお読みの皆様にはお分かりでしょうが、ここでも新しい発表や新しく知ったマメ知識をこまめに披露していますが、書いたことの半分以上は、書いた時点で忘れていっています。「覚えていかなければ意味ないやろ!だから試験があるんだ!」と云うかもしれないけれど、覚えなければならないという前提で勉強すると勉強がちっとも楽しくないんですよね。

もし、今一度学問を学び直そうと思うなら、そんな足枷のない環境で気軽にやりたい。のほほーんと興味のあることだけ学ぶのが最高だよ! 「そんな心構えじゃ、結局何もしないだろうね」という忠告、蓋し正論。ということで、怠け者のわたしは、「勉強をやらなきゃいけない環境下にいたら死んでしまう」が、結論のようでございます(笑)

| | コメント (0)

年始の固定観念

夫婦そろってダイエットをしています。我が家の夫婦の質量保存の法則が壊れて、夫婦ともに体重が減っています。当然、あまりたくさんものを食べなくなりました。

なのに、なぜか、妻は年末年始の料理の準備をそそくさとやります。大量のおせち、大量のおでん・・・「そんなに作っても食わないんじゃないの?」と云うてみるけれど、「これだけはきちんとしないと」と譲りません。「いつもそういいながら全部食べるじゃない?」と。日頃はレトルトなのに年末だけ大量のカレーも作ります。

火を使わず主婦がゆっくり休み、世の中のすべてが停止する元旦の風景は過去のこと。母ちゃんは結局朝から働くし、近くのスーパーですら初売りは1月1日の朝でした。金融機関もむしろゴールデンウイークの方が長期間閉まっていたりします。普通の連休と違って元旦は生活の区切りだから特別ではあります。だからこそ長寿・健康を祈る縁起物として、元旦はおせちであり雑煮であり餅を食わねばならない、という固定観念から逃れられない日本人が少なくありません。それでいて、おせちだけしか食わないのかというと、元旦からファミレスや回転寿司屋やハンバーガー店は大盛況。

正直云って、もったいない。ただ、このおせちとおでんの鍋を抱えて妻の実家にお年始に行くのも元旦の日課。年老いた義母もそれを楽しみにしている様子。こういう定番を、皆が無駄とは思わず矛盾とも思わず、年始の常識としての風習ととらえる日本人の想いを大事にしたいという思いもあるのですが・・・正月三が日が終わって、まだ鍋には料理が半分以上残っています。やはり来年からは少し考え直してもらいたい。

| | コメント (0)

朝の深呼吸

新年早々からせっかくniftyニュースで配信してくれていたのでご紹介します。

元旦から実践!代謝を高める朝の深呼吸

「ポイントは“セロトニン”です。セロトニンとは脳内神経伝達物質のひとつで、交感神経と副交感神経のバランスを調え、精神を安定させてバランスを保つ働きがあります。また、筋肉に刺激を与えて引き締める効果も。セロトニンが正常に働けば、心は安定し、体内のリズムが調い、顔も体もキュッと引き締まるんです。まさに体内の循環をよくするスイッチが入るわけです」・・・「セロトニンは“一定のリズム運動”と “太陽の光”で増えることがわかっているのだそう。そこで実践したいのが、朝の深呼吸!」だそうです。

わたしゃそんなことくらい、遠いむかしから存じております(だから朝日を浴びながらの散歩を推奨する先生もおられます)が、具体的なやり方を椎名由紀さんという呼吸アドバイザーの方が書いていますから、一読してがんばってください。代謝を高めてダイエット・・・一年の計は元旦にあり!ですよ(すでに、寒いことを言い訳にして元旦から寝正月をかましていませんかしら?)。

| | コメント (0)

あけましておめでとうございます

<今年のわたしの年賀状>

あけましておめでとうございます 2015年元旦
  『アンチエイジング』を意識しないとすぐに歳を感じてしまいますが、
   まだまだ負けずに頑張りたいと思います。今年もよろしくおねがいします!
                         (夫婦連名版)

A HAPPY NEW YEAR  2015
  去年の下半期は突発性難聴からの頸椎症悪化を経験して、
  五体満足のありがたみを身に染みて感じました。
  人生正負の法則だから、今年は素晴らしい見返りがありますように! 
  今年もよろしくお願いします。
                         (わたし個人名版)

やっつけ作業の割には、いい事書いているでしょ。あらためて、本年もよろしくお願いします。さあ、ガタが来続けるカラダを抱えながら、今年も隣県のサッカーチームを追っかけますよー(報われない愛のストーカーオヤジと云われても負けずにがんばりますよー)!

| | コメント (0)

野菜食え!ってですよ

新年1回目がこんな話題で申し訳ありませんが、年末に国立がん研究センターから報告された内容です。

男性は野菜摂取が胃がん防止に役立つ=国立がん研究センター

日本人19万1,232人を11年間に渡ってアンケートなどで追跡した結果、2,995人が胃がんになり、下部胃がんについて、女性には差がなかったが、男性の場合は野菜の摂取量が多いほどそのリスクが低い傾向にあったというものです。

野菜や果物の持つ抗酸化作用がピロリ菌の活性を抑えることによって発症予防につながるという、その理屈は良いとして、女性は日頃からみんな野菜を食うから差が出なかったけど男性は食わないやつは一切食わないからこんな結果になったのだろうという考察もよくわかるとして・・・この報告が、若い男の子に野菜を食わせるきっかけには到底ならないような気がします。今や、ピロリは積極的に除菌する時代ですし、若い子はそもそもピロリ菌感染者がそう多くはないからです。

「野菜を食う」ということ自体が何も特別なことではないわたしには良くわかりませんが、「野菜なんか一切口にしない」という輩は男にも女にも意外にたくさんおります。「おれはニワトリじゃねえ!」って怒ったオジサンが昔外来患者さんにおりましたが、せっかく食事をするのに、食べたくもない草なんか口にする時間がもったいない、それで不愉快になってまで健康を考えるなんてバカらしい、そう云うのです。そんな連中にとって、胃がんの予防のために野菜を食うくらいなら、「LG21飲むわ」っていうのだろうかな。

ま、そんな理屈よりも、野菜のおいしさを知らないまま人生を終わる人たちのことを、ちょっとかわいそうに思うわたしでございます。

| | コメント (0)

« 2014年12月 | トップページ | 2015年2月 »