回転加速度損傷と脳震盪
『医師会スポーツ医会総会・平成26年度健康スポーツ医学再研修会』のもう一題は徳島大学の永廣信治先生による「スポーツと頭部外傷」。
先生ご本人が柔道の世界では熊本の怪童だったそうで(全然存じ上げずにすみません)、柔道でアタマを打つことによる弊害、アタマを打たない受け身指導のしかたと受傷後の競技復帰のタイミングなどについて話していただきました。
柔道の様に頭を回転させて起こす頭部外傷は「回転加速度損傷」と云って、頭を振ることで骨や硬膜と脳の間にズレが生じて、架橋静脈が引っ張られて切れることで急性硬膜下血腫ができるのだそうです。乳児のゆすぶられ症候群や高齢者の転倒も同様の機序で、「頭を強く打ったから起きる」というのは誤解だそうです。だから、たとえヘルメットやヘッドギアをかぶって柔道をしてもこのタイプの損傷は予防できないということ。ここで問題になるのが「脳震盪」・・・脳震盪のような軽度外傷は一瞬意識消失しても回復したら「良かったね」で済ますけれど、その中には硬膜下出血も隠れているし、スポーツは日々の厳しい練習を繰り返すので、脳震盪の繰り返しを甘く見てはいけないことを強調されました。
硬膜下血腫を起こしたことのある選手は「コンタクトスポーツへの復帰を禁止すべき」ということ、よく分かるし、復帰許可を出して死亡したら許可した医者にも責任問題が生じるということも理解するけれど、相手はそのスポーツに人生をかけようとしている子どもたち・・・きっと将来を嘱望されている怪童たち・・・「死んでもいいから続けさせてほしい」と本人も両親も云うんですよね。きびしい選択・・・だからこそ、そんな外傷を受傷しないように受け身をきちんと身に付けさせることの重要性を指導者がしっかり理解して実行すべきだ、ということを肝に銘じて帰りました。まあ、わたしが指導者になることは一生ありませんけれど・・・。
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コメント
押認!
「回転加速度損傷」、初めてご拝聴致しました。
やはり・・・長生きはするものですね。
幸い、何とか無事のようです。
柔道4段、真剣剣道2段 asuka3h 拝
投稿: asuka3h | 2015年2月25日 (水) 09時04分
asuka3hさん
いかに頭を動かさない動きができるかが大事なので、きちんとした受身ができることと、頭に無駄な動きがないこと、熟練した有段者の方には縁のない病名でしょう。
投稿: ジャイ | 2015年2月25日 (水) 12時23分