スタチンと糖尿病
『スタチンによる糖尿病リスク,従来報告を上回る46%の上昇』
かつて”夢のクスリ”と称されて、動脈硬化予防のためにとりあえず使っておくのに越したことはなく、コレステロールは下げられるだけ下げたいから積極的に服用することが推奨されてきた高コレステロール血症治療薬のスタチン系薬剤が、最近かなり逆風にさらされています。スタチンを飲むと糖尿病になりやすいというのです。糖尿病、というか食後高血糖を起こすときに動脈の内膜を通して変性コレステロールが血管壁内に入ることでプラークが生じるきっかけになるわけだから、血糖コントロールと脂質コントロールは切っても切れない関係にあるのですから、こういう結果は治療する立場の人間にはとても困りますよね。それに対する反論ももちろんたくさん出されてきていて、健診受診者さん方も「どうするのがいいのでしょう?」とか「本当はどうなんですか?」とか気軽に聞いてきますけど、「知ったこっちゃありませんよ。主治医に聞いてくださいよ」というのが本心です(笑)
今回の報告は、フィンランド・University of Eastern FinlandのHenna Cederberg氏らが地域住民コホート研究METSIMの結果を解析して、スタチン療法を受けていた人では受けていなかった人に比べて2型糖尿病を発症するリスクが46%上昇することが分かったとDiabetologia(2015年3月4日オンライン版)で報告したものです。どうも、スタチンはインスリンの感受性を落としたりインシュリン分泌を低下させたりする作用があるようだ、と指摘されています。そう云いながらも、最終的に「だからスタチンを使うべきではない」と結論づけずにうやむやにするところにちょっと政治的な臭いはしますが、たしかに臨床現場を混乱させてもあまりメリットはなく、そういうことを踏まえた上でそれでも使った方がベネフィットがあると判断する場合に今まで通りの処方をしましょうということになるのでしょうか。
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