老化のシミ
最近テレビの健康番組を見ていると、「脳の深部白質病変があると動脈硬化が進行していることを示していて、これは認知症になる一歩手前の恐ろしい状態なんです」とか、「眼底検査のときにドルーゼンがあると動脈硬化が進んでいたり黄斑変性症の前触れだったりしますから要注意です」とか、まるで鬼の首を取ったかのようなテンションのナレーションや司会者の声を聞く機会がありまして、その都度「えっ?そりゃ云い過ぎやろで!」と声を上げてしまいます。
『深部白質病変』というのは脳MRI検査で脳の中に白い斑点が散在する所見です。脳の細い血管の動脈壁が硬くなるとそこからタンパク質が脳内に滲み出てきてそういう画像を作るのだと、教わりました。高血圧などの影響が考えられるので血圧の管理をきちんとしましょう、とアドバイスする所見。それだけのことです。脳ドック学会の講習を受けた時も大した扱いはしていませんでしたし、ある程度の年齢になればだれでもそれなりにできるもの、いわば「老化のシミみたいなもの」と理解していました。眼底の『ドルーゼン』も日本語訳は”老人斑”です。毛細血管の動脈硬化のカスだと云われればその通りですけど、これも「老化現象」と捉えていますから、読影時にもあえて指摘しないことの方が多い所見です。
これらが40歳くらいの若いひとに見られるなら注意を促しますが、それなりの年齢になればあって当たり前、ないヒトの方がすばらしいのであって、これをもって生活習慣の不摂生が祟ったのだと異常に強調されるのはとても心外です。もともと、こういう検査を人間ドックで受けようとするヒトは健康意識の高い方です。そんなヒトたちに「今にも大病を患うぞ」と云わんばかりの扇動の仕方をするのは、いかがなものでしょうか。
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