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眼科検診の必要性

成人眼科検診を行えば日本の失明者数が36%減少

第119回日本眼科学会総会のシンポジウム報告の形でMTProに書かれていた記事です。「視覚障害の主要原因疾患は,緑内障,糖尿病網膜症,変性近視,加齢黄斑変性および白内障。この5疾患で全原因の4分の3を占める。年齢は半数が70歳以上、72%が60歳以上とされる」という現状の中、特定健診が始まって以降に眼底検査が激減しているのが大きな問題ではないか、という内容でした。公的資金が乏しい中、特定健診が生活習慣病の動脈硬化性疾患に特化していてそれに明らかな異常が蓄積していない限り眼底検査は対象にはならないのだから、するはずがない。それでなくても特殊な機械が要るし、それを判読する医者が要るのだから、その出資がなくなるのは自治体としては願ったり叶ったり。

正直なところ、糖尿病性網膜症があるのに「まず運動」とかやったら失明する危険性もあるわけですが、でも糖尿病性網膜症は糖尿病のなれの果てなのだから、糖尿病でさっさと病院受診を促すべきで、健診現場で生活療法に抱え込まなければすむはずのことだと思います。その努力を健診検査に委ねないで!と思います。ただし、緑内障(特に正常圧緑内障)と加齢黄斑変性は早期発見のためには眼底しかないです。おそらく自覚症状が出てくるころにはもはや回復は望めないレベルになっているでしょう。成人眼科検診を行ったときの効果シミュレーションでは、失明者減少率が緑内障(45%)と加齢黄斑変性(41%)は糖尿病網膜症(17%)を大きく上回っていた、という事実からもそれは云えることです。『費用対効果』の評価は、国を動かせるかもしれません。

ただ・・・その結果、専門医受診をきちんとしてくれなければ何の意味もありません。この手の<要精検><要治療>判定の精検受診率は極端に低いのです。検査することよりも、病院受診させることに真剣に取り組まなければなりませんが、これ、眼科学会のお医者さんたちが思っているほど簡単なことではありません。健診結果を説明する保健師や医者の責任だと思っているかもしれませんが、大間違いです。専門医たちが如何に日頃から啓蒙啓発活動にまじめに取り組んでいるか、それにかかっていることをお忘れなく。

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