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霊感のこと

霊感のあるわたしの妻のはなしは、ここでも何度か書いてきました。

霊の良し悪し
天空の視線

そんな彼女のエピソードで、ひとつ思い出したことがあります。わたしの母のこと。

昭和の終わりにわたしたちは父親の反対を押し切って結婚しました。その6年後には、大分の実家に父をひとり残して熊本の地に家を建ててしまいました。新築の家が建って、しばらくの間、彼女は一階の和室の辺りにずっと気配を感じていました。「あそこに、何かが居る。たぶん、あれはお義母さんだと思うよ」・・・わたしの母はわたしが大学生のときに亡くなっていましたから、彼女と面識がありません。「父親を捨てて結婚してしまった息子のことが心配だったんだと思う」と。その気配が消えたのは、初めて二人で墓参りをしたあとでした。「やっと、わたしのことを認めてくれたのだと思うことにしたよ」と静かに笑ったときの彼女の安堵した顔が忘れられません。

こういうことは、本当のことがわかりません。彼女の思い込みでしかないかもしれない。自分の計り知れない負い目が何もないところに気配を産み出し、墓参りを済ませるということで自分のココロの区切りがついた可能性。ただ、わたしはそうではないと思っています。なぜなら、新築の家で初めて飼った子犬が、ときどきその和室の入り口の暗闇を眺めて唸っていたのに、墓参りの後からピタッとやらなくなったからです。

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