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2015年8月

食わないということ

わたしが朝ごはんを食べないことについて、職場のスタッフも友人もよく心配してくれます。「カラダに悪いですよ。少しでも朝は食べたほうがいいですよ。食べるべきですよ」・・・いろいろ説得されます。

いいじゃないですか、わたしは食べない方が調子がいい。それが今のわたし自身と会話した結論なのです。「なぜ?」と聞かれるから(理由がないなら容赦しないぞ、と云わんばかりの勢いだから)、活動前にメシを食うと胃に血流が取られるからだとか、空腹状態を作ることで初めて体内代謝が賦活するのだとか、聞いてきた御託を並べていますが、正直、理屈なんてどうでもいいんです。むかし、朝は食べなければ絶対カラダに悪いと思い込んでいて前述の理論に会って試してみたらとても調子がよくなった。しばらく続けた後で何となく朝を摂り始めたらまた体調がおかしくなって、再びやめたらスッキリした。ただそれだけのことです。

わたしは自分の体験を他人に押し付ける気は毛頭ありませんので、自分が食わないことは受診者さんにも平気で話しますが、勧めたことは一度もありません。少なくとも毎年の健診で妙な異常値が生じてきているわけではありませんし、いつもより腹が減っているなとか今日は炎天下でゴルフ予定だとかいうときには普通に朝食を食べていますし、そんな強いこだわりはありません。ただ、可能な限りは昼前に心地よい空腹感に浸っていられる自分の感性を楽しんでいたいから、普通に仕事をする日には極力食わないでいます。

理屈なんかクソ食らえ!大事なことは試行錯誤と経験値。普遍性や法則など各々の人生には何の価値もなく、各々のカラダが求めるものは各々に違うから、自分自身と素直に対話できるようになるのが大事なのだと思っています。これがわたしの現時点での最優先の人生哲学です。

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自己満足

どうしても、しっかりした根拠とEBMがないとダメな人がいます。自分のことならまだしも、他人のことにまで口を出したがる人。「そんなやり方、自己満足なだけだから意味なんかないよ」と、批判しながら小馬鹿にする。

わたしは『自己満足だっていいじゃないか!』と思っています。『自己満足』じゃなくて『試行錯誤』なんじゃないかな。どうせEBMなんて、ただの確率論です。どれだけ王道であっても自分に合うかどうかはやってみなきゃわからない。根拠や理屈なんてどれだけ並べられたって、効果がなけりゃ意味がない。自己流のやり方で効果があったときに、「それは偶々(たまたま)だろ?」という人がいますが、偶々の何が悪いのかしら? 普遍的な効果を確立させて表彰してもらいたいわけじゃない。他人のすべてに効果がなくても、自分にだけ効果があればそれでも十分。

何事も、試したもの勝ち! それがわたしのポリシー。

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よそ者

「いっしょにあそぼうよ、ときみが云ってくれたから、がっこうにいくのが楽しくなったよ」

先日、クルマのラジオで聴いたフレーズ。学校を転校して一人ぼっちだった自分に一人の子が声をかけてくれて嬉しかったことをフレーズに。だから自分も自分から声をかけてあげられる子になろうと思う、と。

これ、何となくわたしは分かる。むかし、ここにも書いたことのある思い出。わたしは地元の小学校から一人だけ国立大学の付属中学に進学しました。田舎からバスに乗っての通学でした。級友はみんな都会の子で、半分以上は小学校からの仲間たちで、なかなか深い友だちもできずに眠れない日が続きました。

あれは夏のキャンプだったかそれとも修学旅行だったか? 好きな者同士でグループを作っていいよと云われたとき、わたしはドキドキしました。自分だけ一人ぼっちになったらどうしよう・・・モゾモゾしてたら友人と目が合いました。「ボクいっしょに入れてくれんかな」と勇気を持って云ってみたら、「なん云いよんのかえ。当たり前やねえかえ。初めから数にはいっちょるわ」と、彼は笑いながら手招きしてくれました。

大人になってから、あの頃は自分のよそ者感が半端なかったことを云うと、級友はみな揃って笑います。「そんなこと思ってたヤツなんて一人もおらんかったやろ!」って。今は、高校よりも大学よりも深い仲間たち。「それでもあのころはそう思っていたんだよ」とか云いながらビールを注ぎ合う今があるわけです。

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うつ病と睡眠&米飯

CareNetから毎日のように健康情報の論文紹介が送られてきますが、今は病気の治療よりも予防の研究の方が盛んなのでしょうか?今回はうつ病についての2つの論文が目にとまりました。

性別で異なる、睡眠障害とうつ病発症の関連:東京医大

東京医科大学の守田 優子氏らが、睡眠関連障害を有する日本人若年成人のうつ病発症に及ぼす性差について検討した結果、女性の場合「睡眠覚醒スケジュール後退の影響」が大きかったそうです。『睡眠覚醒スケジュール後退』というのは、つまり朝が起きられないということだから、「若い世代では女性で夜型の生活スタイルである場合にうつ病になりやすいこと、そして、このことは女性特有の速く短い内因性のサーカディアンリズムに起因する可能性があることを示唆するものであった」と結論づけていました。要するに、女性は宵っ張りにならずにさっさと寝なさい!ということ・・・うちの妻に聞かせてやりたい。

お米を食べるほど良質な睡眠に?

昨日の今日です。うつ病、炭水化物、睡眠・・・もうアタマがごちゃごちゃでしょ?

金沢医科大学の米山 智子氏らの研究なのですが、20~60歳の1,848人の日本人男女で、米・パン・麺類の摂取量および食事のGI値と睡眠の質との関連を調査した結果、「高GI食と米の高摂取が良好な睡眠の質と有意に関連する一方、パン摂取量は睡眠の質と関連せず、麺類摂取量は低い睡眠の質と関連することが示された」というもの。この違いは各食品のGI値の違いによると推測しているようです。これはちょっとわたしの中で消化できていませんが、「寝る前に飯を食うと良い」という誤解はしないようにしましょう。あくまでも日頃の食習慣の問題・・・就寝前2時間以内に血糖が急上昇すると成長ホルモンが分泌されずに質の良い睡眠が得られない、というのは周知の事実なのですから。

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全粒穀物とうつ病

「丸ごと食べる」という概念は、太古から食事の大原則でしたし、自分が生き延びるために「食べさせていただく」という考え方がきちんと確立していた時代は当然のように残すことなく丸ごといただき、自然の恵みへの感謝の気持ちをもったものです。栄養学が学問として頭でっかちになり産業革命で必要なものだけを抽出するようになり、「効率的」ということばのもとに「加工」が始まったときから、人類は本来備わっていた自らの生命を構成する細胞の一つ一つを破壊し始めてきたのだと感じています。

精製された炭水化物がうつ病を引き起こす 野菜や全粒穀物で予防

この場合の全粒穀物が「丸ごと」に入るわけですが、白米や白パン、加糖飲料などの精製された炭水化物はGI値が高く、これを摂取するとインスリンが過剰に分泌されて、インスリンのもつ脂肪合成を高め分解を抑制する作用によって脂肪が蓄積されやすくなる、とうメカニズムはここでも何度か紹介してきました。今回紹介する論文は、女性で高GI食や精製炭水化物、あるいは加工された糖分を取るほどうつ病になりやすく、逆に全粒穀物、野菜、果物、食物繊維を多く摂取していた女性ではうつ病のリスクが減少していた、というものです。

低GI食を摂ってもインスリン感受性や血圧の改善は見られなかった、という報告を紹介したばかりで、GI値と肥満や糖尿病の話題でうんざりしているヒトも、「うつ病」と聞いたら重い腰を上げる気になってくれるかもしれません。ちなみに、わたしは子どものころから全粒穀物や野菜ばかり食って生きてきたし「残してはいけない」教育の元で皿の上がすべてなくなるまで(魚の骨のでっかいところは別ですが)舐め尽くしてきましたから、個人的にはあまりココロにひびく論文ではありませんでした。

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危機管理の在り方

昨日走り去った台風15号は、凄かったです。「すごかった」とか「もうれつな」とかいう日本語が用をなさないほどの凄さ。

嵐の中でギャーギャーいって騒いでいる若者が居るし、嵐の中でわざわざ川や海に出て行く年寄りも居る。ただ、それとほとんど同じことをしているのが各テレビ局の若手アナウンサー。昨夕のテレビニュースを観ながら「バカだ」と思った。何が飛んでくるかも分からないし自分が飛ばされるかもしれない街中でマイクを持って立っていることではなく、それを見ながら「危ないよ」と云っているカメラマンでもなく、こんなことを指示する上司である。テレビ局そのものである。いつも思うが、今回は特に命に係わることも察知できないのか。みんなバカ者である。それを見てきちんと声を上げないわたしらもバカ者である。

昨日は結局1時間半遅れで出勤しました。自宅が地鳴りしながら揺れている朝7時に家を出るなんて到底ムリ。さっさと出勤を諦めましたが、職場に電話したらすでに若いお嬢さんが出勤してました。うちの家の近くに住む若手スタッフも定刻に出勤したらしく「私が来れたのに?」と云っていたそうです。「偉いね」と云っておきましたけど、あんな暴風雨の真っただ中で出勤させること自体、『無謀』以外の何物でもないと思う。私のように中途半端にいい加減で年季の入ったオヤジは平気で遅刻しますけど、若手職員は万難を排して出勤する。「自分の判断で。まずは自己の安全確保」・・・JCIの決まりはそうなっているから、あくまでも自己判断。事故がなかったから良かったけど、何かあったって「自己責任」なんだぞ! 組織が「来るな!」と云ってやらないと、マジメな若手が犠牲者になるぞ!と思いました。

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「ダイエットにまつわるエビデンス5選」+α

いや、面白いといえば面白いのですが、この話題はちょっと飽きてきました。Care Netで配信された話題です。

1.各種ダイエット法の減量効果/JAMA
 アトキンス式(Atkins、低炭水化物[糖質制限]食)やオーニッシュ式(Ornish、低脂肪食)など固有の名称が付されたダイエット法は、実際に良好な減量効果をもたらしており、方法による効果に大差はない(JAMA誌2014年9月3日号)

2.糖質制限食と糖尿病リスク:日本初の前向き研究
 国立がん研究センターによる多目的コホート研究の結果、日本人女性で低炭水化物食と2型糖尿病リスク低下との関連が認められた(PLoS One誌2015年2月19日号)。

3.低炭水化物食 vs 低脂肪食
 どちらも血糖指標やCVDリスクマーカーへの好影響が認められたが、肥満例の2型糖尿病患者に半年程度の食事療法を行う場合、低炭水化物食は低脂肪食よりも効果的かもしれない。

4.地中海ダイエットを守るほどテロメア延長/BMJ
 地中海ダイエットをより順守している人は、テロメア長が長い傾向にあることが判明した(BMJ誌オンライン版2014年12月2日号)。

5.低GI食、インスリン感受性や収縮期血圧を改善せず/JAMA
 低GI・低糖質食は、高GI・高糖質食と比べて、インスリン感受性、収縮期血圧、LDL-C・HDL-C値についての影響は認められなかった(JAMA誌2014年12月17日号)。

これに対してCell Metabolism(2015年8月13日オンライン版)で報告された「NIHの研究者らが厳格な管理の下で肥満者対象のRCTを実施したら、糖質制限よりも脂質制限の方が有効との結果が示された」という結果<体脂肪の減少に有効なのは糖質制限よりも脂質制限>。糖質制限の方が有効だという研究はいずれも自己申告だった。きちんと入院させて厳格な栄養管理をしてみたら逆の結果だった、というものだそうです。「脂質制限食に比べ糖質制限食はインスリンの分泌を低下させ、脂肪の燃焼を促進させる効果が高かったにもかかわらず、脂質制限食の方が体脂肪を減少させる効果に優れていた。この点は興味深い。体脂肪の減少には必ずしもインスリン分泌の低下は必要ない可能性がある」という著者の意見がありました。「減量で最も重要な要素はアドヒアランス。もし肥満で脂質制限食か糖質制限食かを選ぶ必要があるならば、どちらの食事であれば続けられそうかを考えた上で判断すべきだろう」とも。

ただ、そんなことどうでも良いことなんじゃないのかなと思い始めているわたし。この2つの方法の優劣を付ける必要もなく、どちらも有効、減量したい気持ちがあるなら好きな方をしたらいいんじゃないの(どっちか選ぶのではなくてどっちもしたら一番良い、というのが偽らざるわたしの意見ですが)と思う。

もともと健康に害のある高度肥満者やコントロール不良の糖尿病患者に対するアプローチ法としての究極を研究しているのに、一般市民のダイエット目的の老若男女がこの論争に刮目して、最低限の努力で理想のプロポーションを獲得したいという夢を実現させる術を探すのに使われている現実・・・・どう考えても無意味だと思います。

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カプサイシン

唐辛子をほぼ毎日食べると死亡リスク低下/BMJ

中国から発表されたこの前向きコホート研究(BMJ誌オンライン版2015年8月4日掲載)、唐辛子を毎日食べれば健康でいられることを証明したもののようです。2004~2008年に登録された健常者30~79歳の48万7,375人(男性19万9,293人、女性28万8,082人)が解析の対象となっています。

「香辛料入り食品をほぼ毎日(週6~7日)摂取している集団は、それ以外の集団に比べ、農村地域居住者や喫煙者、アルコール摂取者が多く、赤身肉や野菜、果物の摂取頻度が高かった。また、全体で最も摂取頻度の高い香辛料のタイプは生唐辛子(約8割)であり、次いで乾燥唐辛子(約6割)であった」という前半のところが何かリアルで、中国の報告でありながら意外に信憑性が高そうな印象を受けました。

●香辛料入りの食品を週に6~7日食べる集団は、週に1日も食べない集団に比べ、全死因死亡の相対的リスクが14%減少した。
●香辛料入り食品を週に6~7日食べる集団は、週1回未満の集団に比べ、がん死、虚血性心疾患死、呼吸器疾患死のリスクが有意に低かったが、脳血管疾患死や糖尿病死、感染症死には差がなかった。
●摂取頻度と全死因死亡の逆相関の関係は、アルコール摂取者よりも非摂取者で、より強力であった。

というものです。「カプサイシンはカラダには良いけど食べ過ぎると胃が荒れる」というのがわたしの認識でした。今回の報告は一回の量については言及していませんが、少なくとも中国の方々は唐辛子を食った方が良い、ということでしょう。これを読みながら思うことは、その民族古来のフードはその民族が自然淘汰されながら生き延びてきた重要な礎であって、ここに欧米食(場合によっては日本の食材)がモダンぶって幅をきかせ始めた途端に一気にカラダをむしばみ始めるのだろうということです。中国人は当然みんな唐辛子を口にすると思っていたのに、都会の人間を中心に唐辛子を全く口にしない連中が多くなったことへの警鐘なのかもしれません。

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夏の落ち葉

落ち葉は、秋冬だけでなく夏も多いので、毎朝のように玄関先を掃いています。

まだ誰も通らない朝早くの路地。
額に汗を少しだけにじませて、きれいになった玄関先を眺めながら満足するわたし。

その何もなくなった道路を見ながら思うのです。「これだけ汗水たらして掃除したけれど、きっと初めて通るヒトは何も思わないのだろうな。落ち葉だらけの道を知っているヒトは『あ、きれになってる』と思ってくれるけれど、初めを知らないヒトにとってはただの道だもんな」・・・いや、自分の努力を認めてもらいたいという感覚ではなく、こういうことは世の中にたくさんあるのだろうな、と思うわけです。

何かを未然に防ごうとするとき、それに気づいたヒトがさっと行動する組織では、何事もなかったように粛々と日々が通り過ぎます。チリひとつない施設というのは、落ちているチリを気付いたヒトがすぐに拾うからできあがっている。それを特別なこととして褒める次元を通り越して、当たり前という共通認識にしてしまえるのがオトナの組織。

『予防医療』というのも、きっとそんな概念の中にあるのが理想なんだろうな。なんてなことを思っているうちに、またはらはらと新しい葉っぱが落ちてきました。

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モチベーション作りの難しさ

最近、健診結果の説明をしててよく思います。毎年毎年同じような値が結果表に並んでいて、診察室に入ってくるなりクビをすくめながら薄ら笑いを浮かべる受診者のおじさん方。微妙に異常で、年々少しずつ悪化しているけれど、クスリを飲まないといけないほどひどくない。かといってこのままほったらかすと、近い将来に何かが起きそう。こんなヒトにどんなアドバイスをしたらいいのでしょうか?

わたしに指摘されるまでもなく、それが微妙にやばいことは本人もわかっているのです。でも、微妙にやる気が起きないでしょう。だって、歳をとったことを除けば大して値に変化もなく、さらに痛くも痒くもないのですから。理屈だけでは人間のココロとカラダを動かせるだけの力は生じません。そこにヤル気を生まれさせるには?

「まあ、いつものようにできるだけ文句をつけてみましたけどね、今日、帰りに心筋梗塞になっても全然驚かないデータではあるんですけどね、でもこれじゃあなんかヤル気が湧いてこないと思うんですよね」・・・診察室のドアを開けながら素直にそう話すと皆さん苦笑いをしながらついてきます。「良いアドバイスをしてあげられませんが、何か人生の楽しみを見つけてモチベーション持ってがんばってみてください」と云うのが、わたしの送ってあげられる精一杯のエールです。

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時間を大切に

「休みの日なのに、どうしてそんなに早く起きるの?」
「休みだから早く起きるんだよ。したいことが山積みなんだからいつもより早く起きたいくらい」

「せっかくの休みの日くらい時間を大切にして、何もしないでゆっくりしましょうよ」
「せっかくの休みなんだから、朝から時間を無駄なく有効利用しようよ」

むかしから相容れないわたしたち夫婦の感性の違い。ま、だからこそお互いに干渉することなく、自分だけの時間を大事にできるのかもしれない。

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やっぱりこわいジェネリック神話

ジェネリック薬の厚生労働省の攻勢はとどまるところを知りませんしテレビCMを見ない日がありませんが、現場の医師たちも、そして処方を受ける患者さんたちも、「何か、ちがう?」ということを実感しているのが事実だと思います。何ら問題なく調子が良い場合はそれでいいですが、「クスリが替わってから効かない」と感じたら、きちんと主張してください。それは気のせいでもなんでもありません。たしかに値段は安いですが、「安かろう悪かろう」ではいけません。クスリなのですから、効かないのは飲まないより悪い!

先日、m3.comで医師へのアンケート特集が連載されていましたが、「薬効が先発品と違うことがある」と答えた医師が56%に及んでいました。「薬効が安定しない」「効果のデータがない」はまだわかるけれど、「安定供給されない」「卸やメーカーがまともに対応してくれない」の類はもっての外・・・相手はクスリなのです。世界でもトップクラスの国である日本のクスリなのです。これで良いはずがありません。先発品とジェネリック品の薬価以外の違いは、国や行政の役人はもちろんのこと、医者にも薬剤師にも実際は分かっていません。実際に使ってみたことのある医師には実感として分かりますけど、勤務医はそれを否定することすらできません。

患者さんたちの叫びだけが頼りなのです。

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買いかぶられるタイプ(後)

(つづき)

『何でも計画的にきちんとスケジュールをこなす人間』と、わたしのことを評価する人も多いようです。買いかぶられるのも能力のうちかなと思うようにしていますが、わたしの計画は常に行き当たりばったりです。

小学校のころのスケッチ大会。下書きのときには構図を緻密に計算して書き始めるのだけれど、決まって時間が足りなくなって、最後は雑な色付け・・・「君は時間がないから最後はいい加減にやっつけ仕事で描いたでしょ!」と図工の先生に見透かされてよく叱られました。夏休みの宿題も計画に従ってやっているつもりなのに夏休みの終わりに半分くらい残ってしまって最後はいい加減。計画して行動スケジュールを考えておかないと全部をこなす自信がないというか、不安なんですが、結局計画通りに行かずに頭の中が真っ白になって、最後はどうでも良くなってしまう・・・このクセはいまだに治りません。まあ、最近は「何とかなるでしょ」と、ムダに細かい計画を立てなくなった分だけ少し成長したのかもしれませんけれど。

だから、世間の皆さん、わたしを買いかぶるのは勝手ですけど、わたしは期待に応えられるかどうかわかりませんからね。あまり重荷になる依頼ごとしないでくださいね。最後の最後に平気で裏切りますよ(笑)

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買いかぶられるタイプ(前)

「先生はすごいね。なんでもきちんきちんとやっていくよね。僕なんか何をするにもいい加減だから、先生みてると感心するよ」・・・日ごろあまりわたしと世間話をしないわたしの上司が、ポツリとそんなことを口にしました。「書類の間違いとかきちんと見つけ出すし、読影とか細かいところまでできるでしょ。僕なんか右と左の間違いとかしょっちゅうだもんな」とも。

いやいやいやいや。まあ、上司にそう見られているのはありがたいことではありますが、わたしは学生のころからホントに買いかぶられるタイプのようです。日本語の間違い探しが上手いのは、小学校のころから文法の教師である母親に叩き込まれたからであって、サラッと文章を読めば「あれ?なんか変」とわかるのは、まあ特技ではあります。

でもそれ以外は誤解です。こんなところでカミングアウトするのも何ですが、読影なんてホントにいい加減です。「健診の心電図や眼底で小さな見落としがあっても死にやしないさ」というノリでこなしていますし、レントゲンや超音波検査はダブルチェック、トリプルチェックが入りますから、わたしが『異常なし』と読んでいるのに『要精査』の訂正が入ることは珍しくなく、指摘されたところを確認すると、わたしの節穴の目では見えなかった腫瘤影がたしかにくっきり浮き出見えてきたりします。わたしはホントにセンスがないなあと落ち込むことしきりです。 (つづく)

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休み返上主義

「今日は定例会議があることくらい最初からわかっているのだから、有給休暇をわざわざ今日とること自体がおかしいし、休んでいても会議だけは出てくるべきだ」

うちの職場には伝統的にそんな空気があります。夕方の必須講座や早朝の勉強会に私服のスタッフたちがたくさん集まってくる姿を見ながら、「みんな偉いなあ」と思うのですが、かく云うわたしもたしかにむかしはそれが当たり前だと思っていました。そうすることでスキルが上がる。その気運で職場の質が上がる。学ばざるもの働くべからず。そんな精神があるからこそ日本有数のランクに上がれるのだと、まるで幕末の志士のような気概。

でも、それ、どうなのかしら。数年前まで、有給休暇の日も夕方には読影やデータ管理や会議のために必ず出勤していたわたしは、意図的にそれをやめました。休みは休み、オンとオフがきちんとできるような成熟したかっこいいオトナになりたいと思ったからです。そんな歳になりました。悲しいかな、わたしが出勤してもしなくても職場は何も変わらないのです。会議? わたしが休みだとわかっているのに会議を開くなんて、無礼千万だから、知らん。わたしがいてもいなくても何も影響のない会議なんて、どうでもいいわ。

こんなグチを云ってるからオトナになれないのかな(笑)

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美味しい手料理

「M子ちゃん、今日も美味しかった〜。ありがとう。M子ちゃんの料理はいつも美味しいね!」・・・わたしたち夫婦の旧知の友人Y子さんが、時々我が家に来て一緒に妻の作った夕食を食べることがありますが、そのとき彼女は決まって妻の料理をベタ褒めします。

偉いなあ、と思います。妻は料理が得意で何を作っても本当に美味しいので、もともと「不味い」の感性が低いわたしでなくても、とても満足できます。そんな料理を結婚したときからいつもいただいているので、つい感謝の言葉を云いそびれます。「白々しそうに見えてもちゃんと云ってもらったら嬉しいのだから、云ってあげなさい」と皆が云いますけれど、なかなか云えません。たまに「ちょっと辛かった」とか「多過ぎた」とかだけ云ったりするのがいけないことだとはわかっているのですが、無反応よりは良いかなと思って云ってしまいます。

「ありがとう。いつも美味しいけど、今日は特にとても美味しかったよ。」・・・先日、勇気を持ってそう云ってみた。

「そう?それは嬉しいわ。でも、今日の料理は全部『ヨシケイ』さんの宅配メニューだけどね」と妻。

こげんある。こんな不器用なわたしだけど、いつも感謝しておりますけんね。

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甲状腺腫

今年度になって甲状腺ドックの一次読影を担当するようになり、今まで以上にたくさんの甲状腺検査をチェックする機会が増えましたが、甲状腺の異常は意外に多いことに驚かされます。人間ドックの甲状腺検査は、甲状腺が気になって受けるヒトは少なく、レディスドックやがんドックのセット項目だから意志とは関係なく受けているヒトがほとんどなのですが、実は『異常なし』のヒトは半分もいません。

大部分が『腺腫様甲状腺腫』という良性腫瘍で、過形成(結節性過形成)に分類されるものです。のう胞という袋も多くはこれの延長上で、袋の中が水の成分か充実性かの違いですが、がん化したりするものではありません。40〜50歳代に多く、男女比は1:3〜5だそうです。先日行われた勉強会のときの資料によると、「甲状腺の結節(腫瘤)は日本人の約50%にみられるが、そのうち悪性腫瘍は7%以下」だそうです。 悪性腫瘍の大部分は『乳頭がん』といわれるもので次が『濾胞がん』。甲状腺エコー検査で微細な石灰化像や低エコー腫瘤、境目が不明瞭だったり不整だったり、あるいは長径が縦長だったりすると悪性腫瘍の疑いがある、として精密検査を求める紹介状が発行されるはずです。

甲状腺の腫瘍は基本的に側からみたり触ったりしても見つけられず、特別な症状もないので超音波検査でしか確認できません。日ごろ気にもしていないけれども、あまり少なくない頻度でがんが見つかる臓器ですから、男性の方もたまには検診のときにオプション検査を付け加えてみてはいかがでしょうか。

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座るより、立つ

1日2時間、座るより「立つ」と健康に好影響

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たとえ定期的に運動をしている人でも、座って過ごす時間が長いと心血管系に悪影響をおよぼすことが、オーストラリアの研究者らにより報告された。座る時間が長いと血糖値や脂質値が上昇し、体重増加、心疾患の発症につながるが、1日2時間、座位から立位に替えることで、これらの指標が改善し、ウエスト周囲長も低減するという。
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Care Netに配信された「European Heart Journal」オンライン版に7月30日掲載のこの報告、別に取り上げるほどの内容でもない、当たり前のことなんじゃないの?とわたしなんか思ってしまいますけど、運動欲のない人間のサガとしては、「この程度で良くなるデータなら頑張ろうか」という不謹慎な(?)動機づけにはなるのでしょう。

「1日2時間を座位から立位に替えると、空腹時血糖値が2%、トリグリセライドが11%それぞれ有意に低下し、立っている時間が長いほどHDL-C増加とLDL-C低下に関連」「1日2時間を座位からウォーキングやランニングに替えることで、BMIが11%低下し、ウエスト周囲長が7.5cm減少する。ウォーキングに替えた場合には、さらに食後2時間血糖値の11%低下、トリグリセライド値の14%低下に関連」というデータは、たしかに魅力的でしょう。

でも、やってみれば分かりますけど、「1日2時間」はかなりの時間です。「太る一方だから歩かなければ」と云って妻はわたしのワンの散歩にスマホいじりながら付いてきますけど、へとへとになりながら歩く時間がせいぜい60~70分です。ウォーキングなら1日2時間で1万歩強。ゴルフのハーフラウンド分。「立っている」だけもそれなりに辛い。主婦が家事するのならともかく、デスクワークの人が立ってパソコンいじるわけにもいきません。わたしは、講演の時には椅子があっても座りませんし、ヒトと世間話するときにも立ち話するのが習慣ですが、それでもさて、ワンの散歩しなければ「1日2時間」はクリアできてない気がします。まあ、それでも、少しでも意識して立って生活しましょう、みなさん。

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脱水と炭水化物

昨日は、職場で月2回の定例のランチョンカンファの日・・・非常勤の先生と常勤の先生が一堂に会して昼休みに勉強会をする日でした。この日は昼食が出るのでお弁当を持って行かないのですが、昨日は昼食スタッフの業務が異常に忙しくて準備が遅れてしまいまして、結局プレゼン担当だったわたしだけ昼食をとる時間がありませんでした(食べながらでは話せないので)。

日頃朝飯を食わないわたしにはちょっと堪えましたが、「まあしょうがないかな」と思って午後の仕事に就きました。仕事をし始めたら、これが意外に簡単に空腹感は消えてしまうものなのですね。カラダを使うわけでもないので腹事情は持ち堪えられそうだったのですが、実は、どれだけお茶を飲んでも、口の乾きが取れません。お茶の量を増やしても単純にオシッコに頻回に行くだけで、結局口の乾きは進む一方・・・飲水だけでは用をなさないことを体感しました。

なので、やむを得ず一段落ついたところで売店で握り飯を買って食うてみたのですが、そうしたらウソの様に口の乾きがピタッと止まりました。やっぱり、『炭水化物』って単純な水分補給だけでは補えないものを吸収させてくれるのですね。驚きました。

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書く気力

意地で続けているだけとはいえ、わたしもそれなりに大事にしているブログなのですが、どうも最近遅筆です。書く気力が湧いてこないのです。事ある毎にここに書こうとメモ用紙やiPadにメモしたネタは多数あるのですけれど、そのままになっています。是が非でも書きたい内容だった(たぶん)のに、ときが流れて、メモを見ても何を伝えたかったのかわからないものだってありますし、いざ書き始めたら、なんだろう、こんなことを書きたかったわけじゃないんだけどな、というオチになってしまったままアップしたものも。

時々やってくるこの悩み。書くことを生業にしているわけではないから、尚のこと重い腰が上がりません。そんな日々が数ヶ月続いています。「最近、文章の質が落ちた」とか「内容が陳腐になってきた」とかいう感想をお持ちの方、それ、事実です。もうしばらくお待ちください。そのうちまた『もの書きモード』に戻ると思います(たぶん)から。

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戦後80年は来るのか?

~姜尚中の多士済々~悩みの海を漕ぎ渡れ~

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お迎えするのは、作家の青来有一さん。2001年に『聖水』で芥川賞、2007年に『爆心』で伊藤整文学賞、谷崎潤一郎賞を受賞するなど長崎に根ざした作品を書き続けている青来さん。戦後70年という節目の年の8月9日。戦争とは何か、人間とは何か? 共に考えましょう。
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長崎原爆の日である日曜日の早朝に山越えの長距離運転をする羽目になり、カーラジオで初めてこの番組を聴きました。山の中で時々雑音で聴き取れないところもありましたが、所々に深くココロに染み入る会話がありました。忘れたことも多いですが、聴きながら思ったことを書いてみます。

⚫︎『悪』が脳を発達させた・・・たしかに、『悪』は人間界にだけある概念です。動物たちは、獲物を取るために騙すことはあっても『悪いこと』はしない、というかその概念がない。もともと『善悪』という概念すらなかったはずです。『悪いことをしよう』と考えるようになることで知性が生み出され、脳を劇的に発達させたのだろうこと、想像できます。

⚫︎その土地に移り住んで、その土地を語るためには、その土地に住む精霊たちに認めてもらわなければならない・・・何か、微妙に違うかもしれませんが、わたしもこの『精霊信仰』が好きです。人間のコミュニティだって精霊が造らしめた小宇宙であって、町の人がよそ者扱いするかどうかを決めるのは、ヒトではなく精霊たちなのだと思います。

⚫︎今年は『戦後70年』、果たして『戦後80年』を迎えることができるのか?・・・最後に〆のように語ったこの言葉が重いです。『戦後』とは第二次世界大戦(最後の戦争)後のこと。『戦後80年』があるということは、新しい『戦後』が始まることなく、あと10年は戦争に加担せずに曲がりなりにも平和が維持されたということです。さらに人類自体が絶滅していないことにもなります。キナ臭い安保・憲法改定問題が杞憂に終わり、さらに地球温暖化の流れを食い止められなければ、『戦後80年』を迎えられるのは夢のまた夢。そしてそれは、すぐそこなのです。

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腸内細菌叢と歯周病

先日、送られてきたニュースレターのタイトルは、『腸内細菌叢と歯周病』。歯周病がメタボリックシンドロームの引き金になる、という話を聞いたことがありますか? 歯周病があると歯周病由来の細菌が直接冠動脈を侵して心筋梗塞を起こしやすいというはなしなら、10年以上前に某歯科医から教えてもらったことがありますが。

そして、今の旬は何でも腸内細菌叢です。免疫の影響は昔から研究されてきていますが、さらに生活習慣病、メタボリックシンドローム、そしてがんの原因にも腸内細菌叢。そこに歯周病が絡んできました。

新潟大学大学院医歯学総合研究科 山崎和久先生の報告によると、歯周病病原菌であるジンジバリス菌を飲み込むと胃を通過して生きたまま腸に達し、腸管の上皮 細胞同士を結び付けているタイトジャンクションと呼ばれる部分に障害を生じさせ、その結果腸内細菌が産生する毒素(エンドトキシン)が体内に入り込み、血中の毒素レベルが上昇することで血流を介して全身に軽微な炎症を引き起こし続けるそうです。さらに、ジンジバリス菌を口腔投与すると、大腸および小腸のリンパ球が増加し、腸管での免疫応答に影響を及ぼしていることも分かったそうです。歯周病、腸内細菌、メタボ・・・意外な三者の関係、覚えておいて損はないと思います。

『歯周病は、ブラッシングによりプラークコントロールを行うとともに、適切な歯科治療を行うことが重要ですが、ビフィズス菌などの有用菌を積極的に摂取 し、腸内環境を日々整えることでより治療効果が高まるのではないかと考えられます』というまとめ方は、さすがサプリ系のメルマガだ!と感心もしました。

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サルコペニア肥満の対処法

サルコペニア肥満は思いの外、重大な問題のようです。

「サルコペニア肥満」には食事と運動で対策 筋肉の低下を予防

筋肉が減少して負のスパイラルを作る「サルコペニア(筋肉減少症)」と「メタボ」の合体=「サルコペニア肥満」・・・筋肉になるタンパク質やビタミンミネラルを取らずに運動もしない現代人のなれの果て・・・各学会で今年になって頓にうるさく云われるようになったおかげで、耳にする機会が増えてきた単語、と思っているのは、もしかしたらわたしだけなのかもしれません。

いかにしたらやせられるか、”ダイエット”などという単語は日常会話に埋もれてしまい、道で出会ったときのあいさつも「毎日暑いですね」と同等に「なかなかやせられませんね」などと云う時代。そのおかげで、キツイ思いをせずにやせられるなら手段を選ばず、の空気が漂う昨今だから、筋肉が萎んでいく一方なのに「やせた」と勘違いしている老若男女が多いのです。見た目がやせた理由が筋肉量の減少であることに危機感を感じなさすぎることに警鐘を鳴らす各学会・・・「やせること」第一次主義のメタボ健診への誤解の弊害でもあるわけだから、これはある意味わたしたちの責任です。運動と食事の啓発は、わたしたちの義務だともいえるでしょう。肝に銘じてがんばります。

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重篤感

先日、心電図検査室に呼ばれました。「胃透視を終えて帰ろうとしていた受診者さんが受付で『胸が痛い』と云われたそうで、今心電図を取りましたがSTが下がっているみたいなんです」と。確かに朝取った心電図波形と明らかに違っているのでこれは間違いなく狭心症発作です。今までこんな痛みは経験したことがないそうで、本人もとても苦しそうにしています。

「二トロはあるの?」「あら、二トロ。どこにあるかしら。先生、すみませんわたしはちょっとわかりません」・・・血圧を測ったりテキパキと記録をしたりしていたチーフの保健師さんが済まなそうに答えました。「いやいや、あなたが知らないのなら、知ってそうな人に電話して聞いて下さい。もしないのなら、さっさと救急外来に運びましょう」・・・その保健師さんは若い頃に救急現場を経験したこともあるのですが、そんな彼女も含めて妙に重篤感というか緊迫感が感じられません。受診者さんはもうすでに20分以上苦悶状の顔をして生汗をかきながら経験したことのない痛みに苛まれ続いているのです。なまじST上昇ではないから落ち着いていたのかもしれませんが、突然急変するかもしれません。少々焦ってもらって場を少し緊張させるために、わたしはそう指示しました。

結局、二トロを舌下させて回復を待つことなくストレッチャーで救急外来に運びました。外来に着く頃には症状が少し改善したそうですが心電図の回復は不十分で、そのまま緊急入院になったようです。こういう場合、あたふたする必要はないけれど、場に緊迫感を持たせて、普通ではないことが起きているのだということを皆が認識し合うことはとても大切です。医療現場から離れて健常者だけを相手にしているとつい忘れがちになることを思い出す機会になりました。

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前立腺がんの予防

欧米型の食事スタイルが男性の前立腺がんリスクを上昇させる

前立腺がんは日本よりはるかに欧米に多いがんで、その原因に、加工肉や赤身肉、脂肪分の多い乳製品、糖分、精製された穀類などの加工食品など、いわゆる『欧米型の食事スタイル』が関与していることは周知の事実です。今回、メルマガに紹介された論文はハーバード公衆衛生大学院の研究チームが行った医療従事者を対象とした大規模調査「Physicians' Health Study」の分析結果です。

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追跡期間中に333人が死亡し、うち17%(56人)が前立腺がんが原因だった。高齢で発症した男性で死亡率が高かった。解析した結果、欧米型の食事スタイルが中心だった男性は、前立腺がんで死亡する確率が2.5倍、全体的な死亡リスクも67%上昇することが判明した。一方、「より健康的な食事スタイル」をもつ男性は死亡リスクが36%低下することが明らかになった。
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そして、がん生存率が高い人に共通する条件:①動物性脂肪の摂取量が少ない、②アルコールの摂取量が少ない、③たばこを吸わない、④カルシウムとビタミンDを十分にとっているを考慮すると、食事スタイルを改善させれば死亡リスクを軽減させられる可能性が高い、と締めくくられています。

まあ、油こってりの高カロリー食とファストフードで酒飲みながら喫煙する生活が、良いとは誰も思っていないわけですが、せっかく「より健康的な食事スタイル」(①野菜や果物、②魚、③赤身肉や加工肉を避ける、④全粒穀類、⑤不飽和脂肪酸、⑥豆類や大豆類)が伝統的な食文化だった日本人が、欧米に憧れて換えてしまったがために増えているがんの代表が前立腺がんなのだとしたら、毎年PSAを測って一喜一憂するより、食事の嗜好を変えてみる努力をした方が断然得だな、と思いました。

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PSAが反応しない前立腺がん

人間ドックの検査ではポピュラーなPSA(前立腺特異抗原)についてです。

先日、友人と話をしていて、友人の知人にPSAが正常範囲内なのに前立腺がんになって手術を受けることになった人がいるということを聞きました。PSAは一部の小細胞癌や神経内分泌性腫瘍などで上昇しないことがあることは知っていましたが、それはごく稀(全体の2〜3%)で、ほとんどの場合はPSAが正常範囲なら心配しなくても大丈夫だと認識していましたので、こういう話を聞くとちょっとショックです。しかも、この人が病院受診をした理由は、毎年の健診結果を並べてみたら値は正常範囲内だけど経年的に少しずつ増加していたから、とのこと。そんなこと気にもしてませんでしたし、受診者さんに質問されて、「正常範囲内の変化は心配しなくて大丈夫です」と堂々と断言していたわたし。たしかに、調べてみると、「数値が基準値内であっても、1年で0.75ng/ml 以上上昇したら、または2年で2倍以上になったらがんを疑え、とも言われています。基準値内でも毎年上昇が見られたら、これもまたしっかり経過を見ていく必要があります」と書かれていました。

もっとも、前立腺がんは進行がとても遅いがんです。「80歳代の約4割が前立腺がんを持っているが、その半数は前立腺がんで亡くなることはないと云われている。すなわち、前立腺がんの一部は、発見、治療が不要なおとなしいがんなのだ」と云われており、それが健診でのPSA検査が無用の長物だと揶揄される所以です。

わたしにウソ情報を握らされた皆さんが、今でも何事もなく無事であることを切に願います。

この機会にこんなページをご紹介しておきましょう。
前立腺ケア.com

 

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最澄と空海

先日、テレビで『空海と高野山』の特集をやっていて、つい見入ってしまいました。

同じ遣唐使として中国に渡り、各々に中国密教を学んで日本に帰った後に密教を広めた空海と最澄 。詳しいことは何も知らなくても、空海/弘法大師/真言宗、最澄/伝教大師/天台宗の組み合わせくらいはちゃんと覚えております。

そんな並び称さられる二人について、「空海はいわば天才肌で社交的で、最澄は秀才肌の努力家というかこつこつ真面目にやるタイプだったんだってね」と、一緒に観ていた妻がつぶやきました。「そうか、ちょうど王と長嶋みたいなもんかな」・・・この二人をONにダブらせている人も多いことでしょう。そんな二人が最終的に決別するわけですが、そのいきさつについて調べてみるとちょっと面白い。『 年長で家柄も良くて努力家の最澄が細かすぎて、ウザいと感じた空海が横柄で無礼な態度をとったことがきっかけだ』と一般的に書かれているものが多いけれど、『二人の密教観の違い、密教に要求するものの違い』だとも云われ、これは純粋に密教を学びたかった空海と密教を学問のひとつとして会得しておきたかった最澄との違いを論じる高橋憲吾氏の解説が面白かったです。

『人物の有するこころ(志・機根)を見ようとした空海と、人物の有する学識(知識・技術・経典・論書)を見ようとした最澄との違いは実に決定的である』
『最澄が空海その人ではなく空海の所有する典籍類を必要としていたのは、その後の空海に対する行動を見ても明らかである。(中略) つまり最澄は「空海を見ていなかった」のである。空海は最後にこのことに気づいたのではないかと思われる』

王か長嶋かと云えばこつこつ努力家の王さんの方が断然好きだったわたしでしたが、これを読むと、空海か最澄かと云えば空海の方が自分っぽいかなと感じてしまった次第です。

これもご参考までに<たけしの教科書に載らない日本人の謎<最澄と空海>

 

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女性に学ぶべきこと?

なぜ女性の方が男性より長生き? 男性も見習いたい7つの生活スタイル

これは、どうですか。女性の方が男性より長生きする傾向は1800年代半ばに始まったそうで、その理由が羅列されていました。

・ 女性ホルモンが動脈硬化を抑える
・ 動脈硬化を抑えるアディポネクチンが多い
・ 女性は心臓病の発症が少ない
・ 女性の方が思慮深い
・ 基礎代謝量が少ない方が長生きする
・ 女性は社会的なネットワークをつくるのが上手い
・ ふだんから自分の健康状態に注意している

そもそもホルモンの問題で語られる分にはいかんともしがたいですし、「基礎代謝が少ない女性の方が、余分なエネルギーを浪費しないで環境の変化に適応でき、生理学的に優れた能力を備えている」となると、そりゃやむを得ません。わざわざ太刀打ちすべく生き方を変えてまで長生きせんでもえええわ、と思いますよねえ。

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ロコモのお話

暑い横浜で、第40回人間ドック健診認定医・専門医研修会がありました。ロコモティブシンドロームの提唱者である中村耕三先生直々の講話『ロコモティブシンドローム  概念と評価・対処法』の中で、思わずメモを取った内容があります。

運動器には、動かす/制御する部分である『筋肉』と、曲がる/衝撃を吸収する部分である『関節(軟骨)』がある。そして筋肉や骨は血管が豊富で新陳代謝と組織修復がなされるけれど、体重の半分以上を占めるほど重くて、使わないとどんどん減ってしまう。一方 、軟骨や椎間板には血管がなくて大量の水分が含まれているだけで新陳代謝や組織修復がほとんど行われないので、一旦壊れると治らない。関節や軟骨は水の出入りで栄養補給をしている。つまり、「さあ、ロコモにならないように運動しましょう!」とばかりに頑張りすぎて関節や軟骨を傷めると取り返しのつかないことになる危険性があるから、ロコトレはできるところから少しずつ始めましょう!とのこと。

勉強になりました。ちなみに、現場で試した『立ち上がりテスト』、微妙でした。わたしも日頃からロコトレやらなけりゃ。

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日本酒も褒め殺し?

日本酒で「しっとり美肌」に 日本酒のうま味成分に新たな保湿機能

いいんですかね、生活習慣病に対する『保健指導リソースガイド』にこんなに褒め殺しを続けても・・・。ナッツの褒め殺しに続いては日本酒の褒め殺し。口元が緩くなって戻りません・・・。

金沢工業大学バイオ・化学部応用バイオ学科の尾関健二教授の研究グループによると、日本酒の主成分で麹菌によって生成されるうま味成分の「α-エチル-D-グルコシド」(α-EG)に、低濃度でも水分保持効果が得られることと、低濃度の「α-EG」が表皮の真皮層の線維芽細胞数を増やし、真皮内で保湿効果が高いコラーゲンの生産量を増やすことの2つの効果があることを発見したのだそうです。

「外用では洗顔石鹸やシャンプー、入浴剤やスキンケア製品などに配合する日用品への商品展開が、さらに飲用では保湿効果の高いコラーゲンを真皮内で増やす美容機能食品などの新しい用途開発が期待できる」って・・・あれ?これは、日本酒飲んでおけば若い張りのある肌が保てるって話ではないのですか・・・な~んだ、がっかり。

そういえば、我が家でも1~2年前に妻が買ってきました。『日本酒の化粧水~菊正宗』・・・「これ、すごくいいよ」て、彼女が前から云ってましたわ。

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ナッツは人類を救う、てか

ナッツを毎日食べると健康増進の効果を得られる がんリスクも低下

えへへ。こんなに手放しでナッツを持ち上げてもいいのでしょうか?「ナッツは現代人に必要な栄養素が多く含まれており、メタボリックシンドロームやがんを予防する効果がある」と云うております。
●ナッツ類には強い抗酸化作用がある。
●体格指数(BMI)と収縮期血圧が低下し、インスリン抵抗性が改善し、善玉のHDLコレステロールが上昇し、悪玉のLDLコレステロールが低下する。
●ナッツを摂取するとがんの発症リスクが低下する(直腸がんで24%、子宮がんで42%、すい臓がんで32%低下)。

ナッツがカラダに良いことはむかしから云われていましたが、「カロリーが多いから食べ過ぎには注意してください」と注意され、わたしなんか「あなたはナッツ類さえ食べなければ簡単にやせるよ」と妻に云われ続けてきました。「間食なんてもっての外だ」と。ところが、「栄養価の高いナッツ類は間食にうってつけです。夏になり屋外で活発に過ごす人が増えますが、ナッツ類は携帯できるので、キャンプやハイキング、ビーチなどに持って行けます」とまで書かれています。「ナッツ類を食べると肥満のリスクが減るのは、食物繊維が含まれ、食べるときの咀嚼回数を増え、満腹感を得やすくなり、ナッツ類を食べた後で食事の量が減るから」だとも。

はいはい。ナッツ好きにはこの上ない研究成果でございます。

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