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『病気』て何?(前)

「どうもないんだよ。問題はそこなんだよね」

収縮期血圧が180とか190とか、拡張期も100とか110とかが何年も続き、心電図の肥大所見が年々強くなっていくのに、外来受診指示を無視し続ける単身赴任のおじさん。先日、業を煮やした保健師さんがわたしに説得してほしいと彼を連れてきました。

彼は診察室に入るなり、恐縮した素振りで椅子にちょこんと座ってわたしの話を聞いていましたが、「この手の病気は突然死や脳卒中などを引き起こす危険性があるものの前触れ的な症状が全くないから、自覚症状を目安にしても間に合わないんですよ」と説明したときに、冒頭の返事が返ってきました。「おっ?」と思いました。

「話をしたら『そうですね〜』と云って、あと一押しすれば受診してくれそうなんです 」と云って保健師さんが連れてきたのですが、最初にちょっと話してわたしにはわかりました。この人は神妙な顔をして頷いていますが単なる聞き流し戦略です。逆らうことなく「はいはい、ごもっとも」という態度をとってその場を過ごせれば一年間安泰ですから、ときが過ぎるのを待つタイプ。露骨に不機嫌そうな顔をしたり途中から激昂したり、あるいは持論を主張し始める方の方がよっぽど変わる可能性を持っていますが、この従順そうな聞き流しタイプは絶対に病院には行かないな、と思っていたのです。

でも、一言発したということは本人もそれなりに気にしているんだなと感じました。「動悸とか息切れとかしびれとか出ないまま突然ドン!とくる確率が高くなっていますし、心電図に影響が出るようになったということは各臓器がへばり始めているといことだから、そろそろ重い腰を上げてくれませんか?」と締めくくって再度保健指導に送り出しました。今年もそのまま放ったらかすかもしれませんが、ココロの隅のどこかに引っかかってくれたらラッキーかな。  (つづく)

 

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