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『病気』て何?(後)

(つづき)  
ただ、この機会にふと考えさせられたことがあります。

「どうもないんだから病気じゃないよ」ということば。

怒涛の循環器救急の世界から予防医療の世界に移って今まで、このセリフが患者さんから出るたびに、「何云ってるんだか?」とため息をついてきたのですが、最近ちょっとわかる気がするのです。「高血圧が続くと病気になるよ」ではなくて「高血圧症自体が病気」なのだから『高血圧』ではなくて『高血圧症』なのだ、『症』がつくのは病気なのだ・・・そう云い切って一刀両断してきたけれど、やっぱり『高血圧症』は『高血圧が長く続く状態』であって、『病気』ではないのではないか。それを放置して脳卒中や動脈瘤破裂や心筋梗塞やあるいは心不全を引き起こしてしまったら、そのときはその病気を引き起こした原因の病気が高血圧症だと云ってもいいかもしれないけれど、それを引き起こしてもいないものは『病気』ではない。けだし正論だよね、と思う今日この頃。「何云ってるんですか!起きてしまてからでは遅いでしょ!」というのはもちろんわかる。でも、起きないかもしれない。確率論の空論である間は悪者かどうかわからない。あくまでも、死ぬときに提出する人生のスコアカードで病気だったか病気ではなかったかのジャッジを受けるもの。高血圧症とか脂質異常症とかいう無理やり『症』の字をくっつけた病態は、そういう世界のものなのかもしれない。

『病気の定義』は何だろう? 天下のWikipediaによると、「人間や動物の心や体に不調または不都合が生じた状態のこと」とあります。当たり前のようで、だから何よ?とも思う。「不調」はわかるけど「不都合」って何だろう。どうもないなら「不都合」ではないのではないか。

ただ、確率論ではあるけれど、この男性のようなパターンは何かが起きる危険性は普通よりはるかに高いわけで、少しでも気になるならばそれなりの対処をしてほしい。それを『治療』というのだろうけれど、自分のためだけでなく家庭や社会の安泰のために。それが、『万事を尽くして天命を待つ』というやつなのだと思います。後悔しても人生、されど取り越し苦労であっても後悔しないで終われる人生の方がいいんじゃないかな。どっちの選択が後悔につながるかは最後までわからないけれど。

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