過剰診療?(後)
過剰診断、過剰診療とは何なのか? 昨年うちの病院のMRI装置が新しい物になって、さらに見たくもないものが見えるようになってしまったことにこっそり落胆したことを思い出しながら読み進めました。
乳がん検診で無症状の早期がんを見つけて無事に手術が成功した35歳の女性と、検診を受けたことのない70歳女性が全身倦怠で病院受診して骨、肝転移の進行乳がんが見つかって一ヶ月後に亡くなってしまったのと、どちらが幸せなのか?という問いかけに、「何云ってんだ?」と呆れながら読み進める。人生の最後まで孫たちと楽しい日々を過ごして病気と闘うことなく逝くのと、術後にずっと再発の恐怖に苛まれながら何十年も通院させられるのと、どっちが幸せか?というオチ。そう来たか!と思いましたが、この結果論はやはり結果論だと思う。本人はともかく家族や恋人は無症状で見つかったことに感謝し気づかなかったことに後悔するでしょう。あえて問題があるとすれば、そんな検査を簡単に受ける環境が整備された時代になってしまったこと。選択肢がなければ、検査される側もする側も運命を自然のままに享受できたはず。
次に紹介されたのは60歳代の女性。家で横になってテレビを見ていたら左側胸部が痛いという。外来の診察で大した問題はなく、肋間神経痛だろうと診断される。それでも2ヶ月も痛みが取れないので胸部CT検査をしてみたら、肺がんが見つかって、結局この人の胸の痛みは肺がんの骨転移だったことが分かった。この場合、CT検査は最初からすべきだったのかというディスカッション。この議論自体はいいとして、こういう経験をした医者は、以降、似たような患者さんに出会ったら必ずCT検査をオーダーするだろう。これが『経験値』というものです。下手をすると、胸痛 なら全例にオーダーするかもしれません。こうなると、それは明らかにやりすぎだと思います。
賛否は別にして、とても面白い本でした。機会があれば是非読んでみてください。
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