基準の違い(後)
(つづき)
先日も他の受診者さんからクレームを云われました。「境界型のレベルの健診結果に昨年『治療中』の判定が出ていたが、かかりつけ医がそれを見て、『病気でもないのにどうして”治療中”なんだろう』と云った」というのです。自分は食事や運動には気を付けているがまだ糖尿病ではないと思うのにどうして『治療中』になるのか?と。実は、昨年この判定に変更させたのはわたしです。もともとは『要再検』~異常値なので日常生活に留意して数か月後にあらためて採血検査をうけてください、というものでした。でも、この方は常日ごろから生活の注意をきちんとしているし、高血圧症でかかりつけ医もいる。きちんと治療(生活療法)することで糖尿病型の領域に上がらないでいる・・・これは、「まだぎりぎりで糖尿病にはなっていない異常」という判定よりも「きちんとした良い治療ができている糖尿病」と判定した方が健全だし前向きだと思ったのです。
でもご本人からすると、『病気』でもないのに『病気』扱いされるのは心外だ!職場に知られると「あいつは糖尿病だ!」と誤解されるからそれは困るのだと云う。ここに予防医療と治療現場の意識のズレだけでなく一般社会の皆さんとの感覚のズレも見て取れます。「糖尿病は”なまけもの”の病気」という誤解を取り除かない限り、こういう方々の不安は取り除けないのだろうと感じています。彼らにしてみたら「『病気でないものは正常』の評価法を健診でも採用してほしい」と思っているのでしょうけれど、「病気になるのを待つ」やり方では予防医学は成立しません。予防は”重荷”ではなく”楽しみ”の概念だということをしっかりと啓蒙していかなければなりません。
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